マタイによる福音書26章8節

マタイによる福音書
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† 福音書縦観 「ベタニアでの香油注ぎ」 

マタイ26:6~13  マルコ14:3~9 ヨハネ12:1~8

Matt.26:8すると、弟子たちはこれを見て憤って言った(すると、ある人々が憤って互に言った マルコ14:4 弟子のひとりで、イエスを裏切ろうとしていたイスカリオテのユダが言った ヨハネ12:4)、「なんのためにこんなむだ使をするのか。 口語訳聖書

† 日本語訳聖書 Matt.26:8 

【漢訳聖書】
Matt.26:8 門徒見而曰、惡用此糜費爲哉、

【明治元訳】
Matt.26:8 弟子等これを見て怒を含いひけるは此糜費のことを爲は何故ぞや

【大正文語訳】
Matt.26:8 弟子たち之を見て憤ほり言ふ『何故かく濫なる費をなすか。

【ラゲ訳】
Matt.26:8 弟子等之を見て憤り、其費は何の為ぞ、

【口語訳】
Matt.26:8 すると、弟子たちはこれを見て憤って言った、「なんのためにこんなむだ使をするのか。

【新改訳改訂3】
Matt.26:8 弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。「何のために、こんなむだなことをするのか。

【新共同訳】
Matt.26:8 弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。「なぜ、こんな無駄遣いをするのか。

【聖書協会共同訳】
Matt.26:8 弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。「何のためにこんな無駄遣いをするのか。

【バルバロ訳】
Matt.26:8 これを見た弟子たちは、「なぜそんな浪費をするのか。

【フランシスコ会訳】
Matt.26:8 これを見た弟子たちは、憤って言った、「どおして、こんな無駄遣いをするのだ。

【日本正教会訳】
Matt.26:8 門徒之を見て憤りて曰へり、此の糜費を爲すは何の爲ぞ、

【塚本虎二訳】
Matt.26:8 弟子たちはこれを見て、憤慨して言った、「なぜこんなもったいないことをするのだろう。

【前田護郎訳】
Matt.26:8 弟子たちはそれを見ていきどおっていう、「このぜいたくは何のためか。

【永井直治訳】
Matt.26:8 然るに弟子等見て腹立てり、云ひけるは、此の無益なる費は何のためぞや。

【詳訳聖書】
Matt.26:8 すると弟子たちは、これを見て、非常に怒って言った、「なんのためにこんなむだづかいをするのだ。

† 聖書引照 Matt.26:8

Matt.26:8 弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。「何のためにこんな無駄遣いをするのか。

[弟子たちはこれを見て、憤慨して言った]  Ⅰサム17:28,29; 伝道4:4; マル14:4; ヨハ12:4~6
[何のためにこんな無駄遣いをするのか]  出エ5:17; アモ8:5; ハガ1:2~4; マラ1:7~10,13

† ギリシャ語聖書 Matt.26:8 

Stephens 1550 Textus Receptus
ιδοντες δε οι μαθηται αυτου ηγανακτησαν λεγοντες εις τι η απωλεια αυτη

Scrivener 1894 Textus Receptus
ιδοντες δε οι μαθηται αυτου ηγανακτησαν λεγοντες εις τι η απωλεια αυτη

Byzantine Majority
ιδοντες δε οι μαθηται αυτου ηγανακτησαν λεγοντες εις τι η απωλεια αυτη

Alexandrian
ιδοντες δε οι μαθηται ηγανακτησαν λεγοντες εις τι η απωλεια αυτη

Hort and Westcott
ιδοντες δε οι μαθηται ηγανακτησαν λεγοντες εις τι η απωλεια αυτη

† ギリシャ語聖書 Interlinear

Matt.26:8

ἰδόντες δὲ οἱ μαθηταὶ ἠγανάκτησαν λέγοντες, εἰς τί ἡ ἀπώλεια αὕτη;

聖書協会共同訳聖書

弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。「何のためにこんな無駄遣いをするのか。

ἰδόντες δὲ  οἱ   μαθηταὶ  ἠγανάκτησαν  λέγοντες,  εἰς   τί   ἡ ἀπώλεια  αὕτη;
And seeing   the  disciples   were angry     saying:      To  what    waste     this?

† ギリシャ語聖書 品詞色分け

Matt.26:8

ἰδόντες δὲ οἱ μαθηταὶ ἠγανάκτησαν λέγοντες, εἰς τί ἡ ἀπώλεια αὕτη;

† ヘブライ語聖書 Matt.26:8 

Matt.26:8

כִּרְאוֹתָם זֹאת כָּעֲסוּ הַתַּלְמִידִים וְאָמְרוּ: “לָמָּה הַבִּזְבּוּז הַזֶּה

† ラテン語聖書 

Latin Vulgate
Matt.26:8

Videntes autem discipuli, indignati sunt dicentes: Ut quid perditio hæc?
But the disciples, seeing this, were indignant, saying: “What is the purpose of this waste?

† 私訳(詳訳)Matt.26:8 

【私訳】 「そして、これを見た弟子たちは憤って<憤慨して、腹を立てて>言った。『この無駄<損失>は何のためか?』

† 新約聖書ギリシャ語語句研究

Matt.26:8

ἰδόντες δὲ οἱ μαθηταὶ ἠγανάκτησαν λέγοντες, εἰς τί ἡ ἀπώλεια αὕτη;

聖書協会共同訳聖書

弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。「何のためにこんな無駄遣いをするのか。

【そして】δὲ  δέ  デ de {deh} (ch 接続詞・完)

1)ところで、しかし、さて、そして 2)しかも、そしてまた、なお、すると、また 3)次に、さらに 4)否、むしろ

G1161 δέ A primary particle (adversative or continuative); butand, etc.: – also, and, but, moreover, now [often unexpressed in English].  Internet Sacred Text Archive)

【これを見た】ἰδόντες  εἶδον εἶδοω ὁράω エイドン ホラオー  eidon {i’-don} (vpaanm-p 分詞・2アオ能主男複)

1)見る、~の方を見る、目で見る 2)感知する、知る、味わう、経験する、見て知る、洞察する、理解する、悟る、認める 3)探す、考える、心に調べる、分かる、見つける、発見する 4)注意する、心に調べる、探す 5)面会する、訪問する、行く

G1492 εἶδοω A primary verb; used only in certain past tenses, the others being borrowed from the equivalent, 3700 and 3708 properly to see (literally or figuratively); by implication (in the perfect only) to know: – be aware, behold, X can (+ not tell), consider, (have) known (-ledge), look (on), perceive, see, be sure, tell, understand, wist, wot. Compare 3700.  Internet Sacred Text Archive)

マタ2:2; 4:26;27:49;   14:14; 28:6;  マル1:10,16; 2:1; 8:33;  ルカ5:26; 7:22;14:18;  ヨハ1:47,48; 6:26; 7:52;19:6;  使徒9:35; 12:16;  ガラ1:19;  Ⅰテモ6:16  etc.

【弟子たちは】μαθητα  μαθητής  マてーテース mathētēs {math-ay-tes‘} (n-nm-p 名詞・主男複)

< μανθάνω 学ぶ、覚える、聞き知る、尋ねる

1)学生、弟子、門弟 2)弟子、門人、帰依者 3)学ぶ者、師を見出した者

G3101 μαθητής From 3129 a learner, that is, pupil: – disciple.  Internet Sacred Text Archive)

【憤って】γανάκτησαν  ἀγανακτέω  アガナクテオー aganakteō {ag-an-ak-teh‘-o} (viaa–3p 動詞・直・1アオ・能・3複)

1)発酵して泡立つ 2)悲嘆する、不満である 3)立腹する、不快に思う、憤慨する、腹を立てる4)怒る、憤る

(G23  ἀγανακτέω From ἄγαν agan (much) and ἄχθος achhos̄ (grief; akin to the base of 43 ; to be greatly afflicted, that is, (figuratively) indignant: – be much (sore) displeased, have (be moved with, with) indignation.  Internet Sacred Text Archive)

マタ20:24; 21:15; 46;8;  マル10:14,41: 14:4; ルカ13/14;

【言った】λέγοντες  λέγω れゴー legō {leg‘-o} (vppanm-p 分詞・現能主男)

1)言う、告げる、語る、話す、言い表す、述べる 2)呼ぶ、命ずる、指図する、言いつける 3)名づける、称する、呼びかける 4)意味する、指す

G3004 λέγω  A primary verb; properly to “lay” forth, that is, (figuratively) relate (in words [usually of systematic or set discourse; whereas2036 and 5346 generally refer to an individual expression or speech respectively; while 4483 is properly to break silence merely, and 2980 means an extended or random harangue]); by implication to mean: – ask, bid, boast, call, describe, give out, name, put forth, say (-ing, on), shew, speak, tell, utter.  Internet Sacred Text Archive)

マタ1:20; 2:23; 5:44; 9:14,34;  マル2:11; 5:9; 12:18;  ルカ5:39; 6:46; 20:41;  ヨハ1:29; 2:6; 16:12; etc.

【何のため】ες  εἰς エイス  eis {ice}  (pa 前置詞・対)

1)~の中へ 2)~へ 3)~まで 4)~のために 5)~に対して 6)~に向かって 7)~を目標にして 8)の間に

G1519 εἰς  A primary preposition; to or into (indicating the point reached or entered), of place, time, or (figuratively) purpose (result, etc.); also in adverbial phrases.: – [abundant-] ly, against, among, as, at, [back-] ward, before, by, concerning, + continual, + far more exceeding, for [intent, purpose],  fore, + forth, in (among, at unto, -so much that, -to), to the intent that, + of one mind, + never, of, (up-) on, + perish, + set at one again, (so) that, therefore (-unto), throughout, till, to (be, the end, -ward), (here-) until (-to), . . . ward, [where-] fore, with. Often used in composition with the same general import, but only with verbs (etc.) expressing motion (literallyor figuratively.  Internet Sacred Text Archive)

τί  τίς ティス tis {tis} (aptan-s 形容詞・疑対中単)

1)誰 2)何 3)どんな 4)なぜ 5)どちら 6)何故、どうして

(G5101 τίς Probably emphatic of 5100 an interrogitive pronoun, who, which or what (in direct or indirectquestions): – every man, how (much), + no (-ne, thing), what (manner, thing), where ([-by, -fore, -of, -unto,-with, -withal]), whether, which, who (-m, -se), why.  Internet Sacred Text Archive)

【この】αὕτη  οὗτος フートス houtos {hoo‘-tos} (a-dnf-s 指示代名詞・主女単)

1)その、この、これ 2)この者、この男・女 2)そんな、こんな 3)すなわち、だから 4)そこで、それ故

G3779 οὗτος Or, before a vowel, οὕτως houtōs hoo‘-toce . From 3778 in this way (referring to what precedes or follows): – after that, after (in) this manner, as, even (so), for all that, like (-wise), no more, on this fashion (-wise), so (in like manner), thus, what.  Internet Sacred Text Archive)

【無駄に?】πώλεια  ἀπώλεια   アポーれイア apōleia {ap-o‘-li-a} (n-nf-s 名詞・主女単)

< ἀπόλλυμι 滅ぼす (マタイ5:29)

1)滅ぼすこと 2)絶滅、破滅、滅亡 3)損失 4)荒廃 5)無駄

(G684 ἀπώλεια  From a presumed derivative of 622 ruin or loss (physical, spiritual or eternal): – damnable (-nation), destruction, die, perdition, X perish, pernicious ways, waste.  Internet Sacred Text Archive)

マタ7:13:  ヨハ17:12;  使徒8:20;  ロマ9:22;  ピリ1:28; 3:19;  Ⅱテサ2:3;  ヘル10:39;  Ⅱテモ2:1,3; 3:7,16; 17:8,11

† 英語訳聖書 Matt.26:8 

King James Version
26:8 But when his disciples saw [it], they had indignation, saying, To what purpose [is] this waste?

New King James Version
26:8 But when His disciples saw it, they were indignant, saying, “Why this waste?

American Standard Version
26:8 But when the disciples saw it, they had indignation, saying, To what purpose is this waste?

New International Version
26:8 When the disciples saw this, they were indignant. “Why this waste?” they asked.

Bible in Basic English
26:8 But when the disciples saw it they were angry, saying, To what purpose is this waste?

Today’s English Version
26:8 The disciples saw this and became angry. “Why all this waste?” they asked.

Darby’s English Translation
26:8 But the disciples seeing it became indignant, saying, To what end was this waste?

Douay Rheims
26:8 And the disciples seeing it, had indignation, saying: To what purpose is this waste?

Noah Webster Bible
26:8 But when his disciples saw it, they had indignation, saying, To what purpose is this waste?

Weymouth New Testament
26:8 ‘Why such waste?’ indignantly exclaimed the disciples;

World English Bible
26:8 But when his disciples saw it, they were indignant, saying, ‘Why this waste?

Young’s Literal Translation
26:8 And having seen it, his disciples were much displeased, saying, ‘To what purpose is this waste?

† 細き聲 聖書研究ノート

Matt.26:8

ἰδόντες δὲ οἱ μαθηταὶ ἠγανάκτησαν λέγοντες, εἰς τί ἡ ἀπώλεια αὕτη;

聖書協会共同訳聖書

弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。「何のためにこんな無駄遣いをするのか。

 <すると、弟子たちはこれを見て憤って言った、「なんのためにこんなむだ使をするのか>

マルタの姉妹マリヤがイエスにナルドの香油を注ぐのをみて、弟子たちは「なんのためにこんなむだ使をするのか」と憤った。

 <弟子たち之を見て憤ほり言ふ『何故かく濫なる費をなすか>

マリヤが高価なナルドの壺からイエスの足に塗ったのを見て、弟子たちは互いに「なんのためにこんなむだ使をするのか」と言い合った。その口火を切ったのは「イエスを裏切ろうとしていたイスカリオテのユダ」だった。(ヨハネ12:4)

† 心のデボーション

「弟子たち之を見て憤ほり言ふ『何故かく濫なる費をなすか」 マタイ26:8 大正文語訳聖書

「弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。『なぜ、こんな無駄遣いをするのか』」 新共同訳聖書

 「粥が煮えるように」

「無駄遣い」を漢訳聖書は「糜費」と訳す。「糜 ビ」はコメを煮ること。「つぶれた米粒、かゆ」の意味で「ただれる」さまをいう。粥が煮えるように「乱れ起こる」こと。「憤慨して ἀγανακτέω  アガナクテオー」にも「発酵して泡立つ」の意味がある。弟子たちはマリヤの行為を「ただれた費(ついえ)」と決めつける。しかし、この批判は弟子たちの「ただれた心」に発し、その心を「発酵して泡立たせる」のである。

† 心のデボーション

「弟子たち之を見て憤ほり言ふ『何故かく濫なる費をなすか」 マタイ26:8 大正文語訳聖書

「弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。『なぜ、こんな無駄遣いをするのか』」 新共同訳聖書

 「卑しさ」

「美しい行為」に最も早く反応するのは対極の「卑しさ」である。この「卑しさ」は美しいものを貶めずにはいられない。

† 細き聲 説教 

 「ただれた心」

「弟子たち之を見て憤ほり言ふ『何故かく濫なる費をなすか」 マタイ26:8 大正文語訳聖書

「弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。『なぜ、こんな無駄遣いをするのか』」 新共同訳聖書

マルタの姉妹マリヤが高価なナルドの壺からイエスの足に塗ったのを見て、弟子たちは互いに「なんのためにこんなむだ使をするのか」と言い合った。その口火を切ったのは「イエスを裏切ろうとしていたイスカリオテのユダ」だった。(ヨハネ12:4)

「無駄遣い」を漢訳聖書は「糜費」と訳す。「糜 ビ」はコメを煮ること。「つぶれた米粒、かゆ」の意味で「ただれる」さまをいう。粥が煮えるように「乱れ起こる」こと。「憤慨して ἀγανακτέω  アガナクテオー」にも「発酵して泡立つ」の意味がある。弟子たちはマリヤの行為を「ただれた費(ついえ)」と決めつける。しかし、この批判は弟子たちの「ただれた心」に発し、その心を「発酵して泡立たせる」のである。

弟子たちは、物事を金銭の価値に置き換えて判断している。その心はマリヤの思いが理解できず、それを受けるイエスの思いからさらにも遠いものであった。マリヤの行為に敏感に反応したのはイスカリオテのユダであった。彼の内では、以前からイエスへの疑惑があり、次第に大きくなって、ついにはイエスを敵に売ろうとするところまで煮詰まっていた。ユダはマリヤの純真な行為に対して、己を恥じる思いもあり、複雑に揺れる思いを隠すために、他の弟子たちの先陣をきってマリヤを批判して見せたのであろう。声高に叫ぶことで自身をかばおうとするのである。

(皆川誠)

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