† 福音書縦観 「最も重要な戒め」
マタイ22:34~40 マルコ2:28~34 ルカ10:25~28
マタイ22:34~40
Matt.22:36「先生、律法の中で(すべてのいましめの中で マルコ12:28)、どのいましめがいちばん大切なのですか(どれが第一のものですか マルコ12:28)」。 口語訳聖書
† 日本語訳聖書 Matt.22:36
【漢訳聖書】
Matt.22:36 師乎、律法中、何誡爲至大。
【明治元訳】
Matt.22:36 師よ律法のうち何の誡か大なる
【大正文語訳】
Matt.22:36 『師よ、律法のうち孰の誡命が大なる』
【ラゲ訳】
Matt.22:36 師よ律法に於て大なる掟は何れぞや。
【口語訳】
Matt.22:36 「先生、律法の中で、どのいましめがいちばん大切なのですか」。
【新改訳改訂3】
Matt.22:36 「先生。律法の中で、たいせつな戒めはどれですか。」
【新共同訳】
Matt.22:36 「先生、律法の中で、どの掟が最も重要でしょうか。」
【聖書協会共同訳】
Matt.22:36 「先生、律法の中で、どの戒めが最も重要でしょうか。」
【バルバロ訳】
Matt.22:36 「先生、律法のうちどのおきてがいちばんたいせつですか」と尋ねた。
【フランシスコ会訳】
Matt.22:36 「先生、律法の中でどの掟がいちばん重要ですか」。
【日本正教会訳】
Matt.22:36 師よ、律法の中に何の誡か大なる。
【塚本虎二訳】
Matt.22:36 「先生、どの掟が律法の中で最大ですか。」
【前田護郎訳】
Matt.22:36 「先生、掟のうちでどれが最大ですか」と。
【永井直治訳】
Matt.22:36 師よ、掟(おきて)のうちにて大なるは孰れの誡なるや。
【詳訳聖書】
Matt.22:36 「先生、律法の中でどの種類の戒めが重大なもの<主要なもの>ですか〔軽いものもあります。重いのはどれですか〕」。
† 聖書引照 Matt.22:36
Matt.22:36 Matt.22:36 「先生、律法の中で、どの戒めが最も重要でしょうか。」 聖書協会共同訳
[先生、律法の中で、どの戒めが最も重要でしょうか] マタ5:19,20; 15:6; 23:23,24; ホセ8:12; マル12:28-33; ルカ11:42
† ギリシャ語聖書 Matt.22:36
Stephens 1550 Textus Receptus
διδασκαλε ποια εντολη μεγαλη εν τω νομω
Byzantine Majority
διδασκαλε ποια εντολη μεγαλη εν τω νομω
Alexandrian
διδασκαλε ποια εντολη μεγαλη εν τω νομω
Hort and Westcott
διδασκαλε ποια εντολη μεγαλη εν τω νομω
† ヘブライ語聖書 Matt.22:36
Matt.22:36
“?רַבִּי, אֵיזוֹהִי הַמִּצְוָה הַגְּדוֹלָה שֶׁבַּתּוֹרָה”
† ラテン語聖書 Matt.22:36
Latin Vulgate
Matt.22:36
Magister, quod est mandatum magnum in lege?
“Teacher, which is the great commandment in the law?”
† 私訳(詳訳)Matt.22:36
【私訳】 「先生、律法の中でどの掟(戒め)が最も重要(最も大きい)(ですか)?」
† 新約聖書ギリシャ語語句研究
Matt.22:36
διδάσκαλε, ποία ἐντολὴ μεγάλη ἐν τῶ νόμῳ;
「先生、律法の中で、どの戒めが最も重要でしょうか。」 聖書協会共同訳
【先生】διδάσκαλε διδάσκαλος ディダスカろス didaskalos {did-as‘-kal-os} (n-vm-s 名詞・呼男単)
1)先生 2)教師 3)師 4)師匠 5)教訓、教説
(G1320 διδάσκαλος From 1321 an instructor (generally or specifically): – doctor, master, teacher. Internet Sacred Text Archive)
マタ8:19; 9:11; 10:24,25; 12:38; 17:24; 19:16; 22:16,24,36; 23:8; 26:18; マル4:38; 5:35; 9:17,38; 10:17,20,35;12:14,19,32; 13:1; 14:14; etc.
【律法の】νόμῳ| νόμος ノモス nomos {nom‘-os} (n-dm-s 名詞・与男単)
1)習慣、掟、法、法令、法律、法則 2)旋律、調べ 3)律法、モーセの律法、旧約聖書
(G3551 νόμος From a primary word νέμω nemō (to parcel out, especially food or grazing to animals); law (through the idea of prescriptive usage), generally (regulation), specifically (of Moses [including the volume]; also of the Gospel), or figuratively (a principle): – law. Internet Sacred Text Archive)
マタ5:17,18; 7:12; 11:13; 12:5; 22:36, 40; 23:23; ルカ2:22,23,24,27,39; 10:26; 16:16,17; 24:44; etc.
【中で】ἐν ἐν エン en {en} (pd 前置詞・属)
1)~の中に、~の間に 2)~の上に 3)ところに、のそばに 4)で 3)よって 5)に
(G1722 ἐν A primary preposition denoting (fixed) position (in place, time or state), and (byimplication) instrumentality (medially or constructively), that is, a relation of rest (intermediate between 1519 and 1537 ; “in”, at, (up-) on, by, etc.: – about, after, against, + almost, X altogether, among, X as, at, before, between, (here-) by (+ all means), for (. . . sake of), + give self wholly to, (here-) in (-to, -wardly), X mightily, (because) of, (up-) on, [open-] ly, X outwardly, one, X quickly, X shortly, [speedi-] ly, X that, X there (-in, -on), through (-out), (un-) to(-ward), under, when, where (-with), while, with (-in). Often used in compounds, with substantially the same import; rarely with verbs of motion, and then not to indicate direction, except (elliptically) by a separate (and different) prep. Internet Sacred Text Archive)
【どの】ποία ποῖος ポイオス poios {poy‘-os} (a-tnf-s 形容詞・疑主女単)
1)どんな種類・性質の 2)いかなる、どのような、どの 3)ある種の、ある性質の
(G4169 ποῖος From the base of 4226 and 3634 individualizing interrogitive (of character) what sort of, or (of number) which one: – what (manner of), which. Internet Sacred Text Archive)
【掟が】ἐντολὴ ἐντολή エントれー entolē {en-tol-ay‘} (n-nf-s 名詞・主女単)
1)命令、いいつけ、指図する、命じる、課する 2)誡め、律法、定め、おきて 3)用命、指令
(G1785 ἐντολή From 1781 injunction, that is, an authoritative prescription: – commandment, precept. Internet Sacred Text Archive)
マタ5:19; 15:3; 19:17; 22:36,38,40; マル7:8,9; 10:5,19; 12:28,31; ルカ1:6; 18:20; 23:56; ヨハ13:34; 14:15,21:15:10,12 etc.
【いちばん重要ですか?】μεγάλη μέγας メガス megas {meg‘-as} (a–nf-s 形容詞・主女単)
1)(大きさ、長さ、高さ、強さ、程度が)大きい、非常に、大いに 2)驚くべき 3)壮大な、広大な、偉大な、優れた 4)名高い、重要な 5)重要な 6)激しい
(G3173 μέγας Including the prolonged forms, femine μεγάλη megalē , plural μέγάλοι megaloi , etc.; compare also 3176 3187 , big (literally or figuratively, in a very wide application): – (+ fear) exceedingly, great (-est), high, large, loud, mighty, + (be) sore (afraid), strong, X to years. Internet Sacred Text Archive)
マタ2:10; 4:16; 7:27; 8:24,26; 20:31; 24:21,24,31; 27:46,50; 28:2,8; マル4:37,39,41; 5:42; ルカ2:9,10; 4:25,38; 8:37; 21:11,23; 23:23; 24:52; ヨハ5:20; 6:18; 11:43; 14:12; 15:13 etc.
† 英語訳聖書 Matt.22:36
King James Version
22:36 Master, which [is] the great commandment in the law?
New King James Version
22:36 “Teacher, which is the great commandment in the law?”
American Standard Version
22:36 Teacher, which is the great commandment in the law?
New International Version
22:36 “Teacher, which is the greatest commandment in the Law?”
Bible in Basic English
22:36 Master, which is the chief rule in the law?
Today’s English Version
22:36 “Teacher,” he asked, “which is the greatest commandment in the Law?”
Darby’s English Translation
22:36 Teacher, which is the great commandment in the law?
Douay Rheims
22:36 Master, which is the greatest commandment in the law?
Noah Webster Bible
22:36 Master, which is the great commandment in the law?
Weymouth New Testament
22:36 ‘Teacher, which is the greatest Commandment in the Law?’
World English Bible
22:36 ‘Teacher, which is the greatest commandment in the law?’
Young’s Literal Translation
22:36 ‘Teacher, which is the great command in the Law?’
† 細き聲 聖書研究ノート
Matt.22:36
διδάσκαλε, ποία ἐντολὴ μεγάλη ἐν τῶ νόμῳ;
「先生、律法の中で、どの戒めが最も重要でしょうか。」 聖書協会共同訳
<師よ、律法のうち孰の誡命が大なる διδάσκαλε, ποία ἐντολὴ μεγάλη ἐν τῶ νόμῳ;>
律法学者はイエスに「先生、律法の中で(すべてのいましめの中で マルコ12:28)、どのいましめがいちばん大切なのですか(どれが第一のものですか マルコ12:28)」と尋ねた。
<師よ、律法のうち孰の誡命が大なる διδάσκαλε, ποία ἐντολὴ μεγάλη ἐν τῶ νόμῳ;>
ラビたちの計算によると、律法には613の掟があり、そのうち248(人体の骨の数)は「しなければならない」という命令で、365(一年の日数)は「してはならない」という禁止とされた。そこで613の掟のうちどれがもっとも重要な掟かという議論があったという。
ルカは律法学者がイエスに「先生、何をしたら永遠の生命が受けられましょうか」と尋ねたのに対して、イエスは「律法にはなんと書いてあるか。あなたはどう読むか」と逆に質問されている。(ルカ10:25~28) 律法学者は「永遠の生命を受けるために、どのいましめがいちばん大切なのですか」と尋ねたのである。
† 心のデボーション
「『師よ、律法のうち孰の誡命が大なる』」 マタイ22:36 大正文語訳聖書
「先生、律法の中で、どの掟が最も重要でしょうか」 新共同訳聖書
「律法と永遠のいのち」
ラビたちの計算では律法には613の掟があり、そのうちどれが最も重要かという議論があった。そこでこの律法学者は「人が永遠の生命を受けるために、どのいましめがいちばん大切なのですか」と尋ねたのである。(ルカ10:25~28)613の掟のなかで、これを守れば「永遠の生命を受ける」という戒めはない。一つの律法を守る者は律法全体を守るのであり、律法全体を守るものは一つの律法を守るのである。律法は「一点一画でも決してすたれることはなく、その「最も小さいものの一つでも守る者は」天の御国に入り、「義なる者」とされ、永遠の生命を受け、「偉大な者」と呼ばれる(マタイ5:18~20)のである。
† 心のデボーション
「『師よ、律法のうち孰の誡命が大なる』」 マタイ22:36 大正文語訳聖書
「先生、律法の中で、どの掟が最も重要でしょうか」 新共同訳聖書
「一つの根源」
一方を選び他を捨てるために「いずれが大か」という問いに答えはない。すべては一つの根源に結びつくからである。意味は反対のものによっても定義されるのである。
† 細き聲 説教
「危険な問い」
「『師よ、律法のうち孰の誡命が大なる』」 マタイ22:36 大正文語訳聖書
「先生、律法の中で、どの掟が最も重要でしょうか」 新共同訳聖書
律法学者はイエスに「先生、律法の中で(すべてのいましめの中で マルコ12:28)、どのいましめがいちばん大切なのですか(どれが第一のものですか マルコ12:28)」と尋ねた。ルカは律法学者がイエスに「先生、何をしたら永遠の生命が受けられましょうか」と尋ねたのに対して、イエスは「律法にはなんと書いてあるか。あなたはどう読むか」と逆に質問されている。(ルカ10:25~28)律法学者は「永遠の生命を受けるために、どのいましめがいちばん大切なのですか」と尋ねたのである。
すべての信仰の問いにおいて大切なことは、使われることばの定義である。律法学者は「永遠の生命を受けるために」とイエスに問うが、律法学者の理解する「永遠の生命」がどのようなものであったかを明らかにしなけばならないのは当然である。律法学者が信じる「神の国」は、あくまでもローマ帝国の支配からイスラエルを解放する「神の国」であり、その解放者こそが「来るべきメシア」である。律法学者が信じる「永遠の生命」は彼らの神学の文脈のなかでの「永遠の生命」であることはいうまでもない。
律法学者は「先生、律法の中で、どの掟が最も重要でしょうか」という問いへの答えは、すでに持っていたのある。そして、彼らには、イエスがどう答えられるも予想できていたのである。あえて、イエスにこの問いが向けられたのは、信仰からの問いではなく、イエスの答えから、イエスが彼らの期待する「メシア」ではないこと立証し、イエスを退けるためであった。求める気持ちもなく、いたずらに、信仰の問いを扱うのは、魂を損なう危険な行為である。
(皆川誠)
コメント