† 福音書縦観 「赦し」 マタイ18:21~35
マタイ18:21~35 ルカ17:3~4
マタイ18:21~35
Matt.18:27僕の主人はあわれに思って、彼をゆるし、その負債を免じてやった。 口語訳聖書
† 日本語訳聖書 Matt.18:27
【漢訳聖書】
Matt.18:27 其臣之主、憐而釋之、且免其償。
【明治元訳】
Matt.18:27 是(ここ)にてその臣(けらい)の主(しゆ)憐(あはれ)みて之(これ)を釋(とき)その負債(ひきおひ)を免(ゆる)したり
【大正文語訳】
Matt.18:27 その家來の主人あはれみて之を解き、その負債を免したり。
【ラゲ訳】
Matt.18:27 主君其臣下を憐みて之を許し、其負債をも免せり。
【口語訳】
Matt.18:27 僕の主人はあわれに思って、彼をゆるし、その負債を免じてやった。
【新改訳改訂3】
Matt.18:27 しもべの主人は、かわいそうに思って、彼を赦し、借金を免除してやった。
【新共同訳】
Matt.18:27 その家来の主君は憐れに思って、彼を赦し、その借金を帳消しにしてやった。
【バルバロ訳】
Matt.18:27 主人は彼をあわれに思い、負債をゆるして退かせた。
【フランシスコ会訳】
Matt.18:27 そこで、その僕の主人は憐れに思って、彼を赦し、借金を免じてやった。
【日本正教会訳】
Matt.18:27 其僕の主は憐みて、彼を釋ち、彼に債を免せり。
【塚本虎二訳】
Matt.18:27 そこで主人は気の毒に思って、身柄をゆるした上、借金にまで棒を引いてやった。
【前田護郎訳】
Matt.18:27 僕の主人はあわれんで彼をゆるし、借りを帳消しにしてやった。
【永井直治訳】
Matt.18:27 乃ちかの奴僕の主、に思ひてこれを釋き、且つその負債を彼に赦せり。
【詳訳聖書】
Matt.18:27 そこでその主人は心に深いあわれみを感じて彼を釈放し、彼の負債を許してやった<帳消しにした>。
† 聖書引照 Matt.18:27
Matt.18:27 その家來の主人あはれみて之を解き、その負債を免したり。
[その家來の主人あはれみて之を解き、その負債を免したり] 士師10:16; ネヘ9:17; 詩篇78:38; 86:5,15; 145:8; ホセ11:8
† ギリシャ語聖書 Matt.18:27
Stephens 1550 Textus Receptus
σπλαγχνισθεις δε ο κυριος του δουλου εκεινου απελυσεν αυτον και το δανειον αφηκεν αυτω
Scrivener 1894 Textus Receptus
σπλαγχνισθεις δε ο κυριος του δουλου εκεινου απελυσεν αυτον και το δανειον αφηκεν αυτω
Byzantine Majority
σπλαγχνισθεις δε ο κυριος του δουλου εκεινου απελυσεν αυτον και το δανειον αφηκεν αυτω
Alexandrian
σπλαγχνισθεις δε ο κυριος του δουλου εκεινου απελυσεν αυτον και το δανειον αφηκεν αυτω
Hort and Westcott
σπλαγχνισθεις δε ο κυριος του δουλου εκεινου απελυσεν αυτον και το δανειον αφηκεν αυτω
† ギリシャ語聖書 品詞色分け
Matt.18:27
σπλαγχνισθεὶς δὲ ὁ κύριος τοῦ δούλου ἐκείνου ἀπέλυσεν αὐτόν, καὶ τὸ δάνειον ἀφῆκεν αὐτῶ.
† ヘブライ語聖書 Matt.18:27
Matt.18:27
נִכְמְרוּ רַחֲמֵי הָאָדוֹן עַל הָעֶבֶד הַהוּא, פָּטַר אוֹתוֹ וּוִתֵּר לוֹ עַל הַחוֹב
† ラテン語聖書 Matt.18:27
Latin Vulgate
Matt.18:27
Misertus autem dominus servi illius, dimisit eum, et debitum dimisit ei.
Then the lord of that servant, being moved with pity, released him, and he forgave his debt.
† 私訳(詳訳)Matt.18:27
【私訳】 「それで、その家来の主君は深く憐れんで<同情に溢れ、思いやりの心で一杯になって>彼を赦し、そしてその借金から彼を免除<放免、赦す、自由に>してやった」
† 新約聖書ギリシャ語語句研究
Matt.18:27
σπλαγχνισθεὶς δὲ ὁ κύριος τοῦ δούλου ἐκείνου ἀπέλυσεν αὐτόν, καὶ τὸ δάνειον ἀφῆκεν αὐτῶ.
【それで】 δὲ δέ デ de {deh} (ch 接続詞・完)
1)ところで、しかし、さて、そして 2)しかも、そしてまた、なお、すると、また 3)次に、さらに 4)否、むしろ
(G1161 δέ A primary particle (adversative or continuative); but, and, etc.: – also, and, but, moreover, now [often unexpressed in English]. Internet Sacred Text Archive)
【その】 ἐκείνου ἐκεῖνος エケイノス ekeinos {ek-i‘-nos} (a-dgf-s 形容詞・指示属男単)
1)それ 2)かの 3)あれ 4)あの 5)その
(G1565 ἐκεῖνος From 1563 that one (or [neuter] thing); often intensified by the article prefixed: – he, it, the other (same), selfsame, that (same, very), X their, X them, they, this, those. See also 3778)
【家来の】 δούλου δοῦλος ドウーろス doulos {doo‘-los} (n-gm-s 名詞・属男単)
1)仕えている、従属する 2)奴隷、下僕 3)召使、従者
(G1401 δοῦλος From 1210 a slave (literally or figuratively, involuntarily or voluntarily; frequently therefore in a qualified sense of subjection or subserviency): – bond (-man), servant. Internet Sacred Text Archive)
【主君は】 κύριος κύριος キゆリオス kurios {koo‘-ree-os} (n-nm-s 名詞・主男単)
1)自由にする力のある、支配する、権威のある、力のある 2)主人、君主、所有者、旦那、師 3)正当な、順当な 4)主、神
(G2962 κύριος From κῦρος kuros (supremacy); supreme in authority, that is, (as noun) controller; by implication Mr. (as a respectful title): – God, Lord, master, Sir. Internet Sacred Text Archive)
マタ1:20; 8:25; 9:38; 10:24; 12:4,8; 16:22; マル1:3; 2:28: 12:9; 13:35; ルカ6:5; 9:54; 10:17; 12:6,46; 14:21 Ⅱコリ1:3,14; エペ6:5,9; Ⅰテモ1:2,14; 6:15 etc.
【深く憐れみ】 σπλαγχνισθεὶς σπλαγχνίζομαι スプらンくニゾマイ splagchnizomai {splangkh-nid‘-zom-ahee} (vpaonm-s 分詞・1アオ能欠主男単)
< σπλάγχνον 腸、内臓 深い感情は内臓にあり、人間存在の中心と考えられた。
1)憐れむ、深く憐れむ 2) 同情する、同情溢れる 3)思いやりの心で一杯になる
「σπλάγχνον スプラグケナ(内臓、はらわた)まで動かされる」 ヘブル語「רַחָםִימ rachami-m ラハミム(憐れみ)」は「胎内」の意味がある
(G4697 σπλαγχνίζομαι Middle voice from 4698 to have the bowels yearn, that is, (figuratively) feel sympathy, to pity: – have (be moved with) compassion. Internet Sacred Text Archive)
マタ9:36; 14:14; 15:32; 18:27; 20:34; マル1:41; 6:34; 8:2; 9:22; ルカ7:13; 10:33; 15:20
【彼を】 αὐτόν αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npam3s 代名詞・対男3)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
(G846 αὐτός From the particle αὖ au (perhaps akin to the base of 109 through the idea of a baffling wind; backward); the reflexive pronoun self, used (alone or in the compound of 1438 of the third person, and (with the proper personal pronoun) of the other persons: – her, it (-self), one, the other, (mine) own, said, ([self-], the) same, ([him-, my-, thy-]) self, [your-] selves, she, that, their (-s), them ([-selves]), there [-at, -by, -in, -into, -of, -on, -with], they, (these) things, this (man), those, together, very, which. Compare 848. Internet Sacred Text Archive)
【赦し】 ἀπέλυσεν ἀπολύω アポりゆオー apoluō {ap-ol-oo‘-o} (viaa–3s 動詞・直・1アオ・能・3単)
< ἀπό ~から + λύω 解く、ほどく
1)追い出す、解く、解き放つ、解放する、自由にする、弛める、ほどく 2)離婚する、去らせる、バラバラにする、解散する 3)清算する 4)罪をゆるす、釈放する
(G630 ἀπολύω From 575 and 3089 to free fully, that is, (literally) relieve, release, dismiss (reflexively depart), or (figuratively) let die, pardon, or (specifically) divorce: – (let) depart, dismiss, divorce, forgive, let go, loose, put (send) away, release, set at liberty. Internet Sacred Text Archive)
マタ1:19; 14:15,22,23; 15:32,39; 27:15,17,21,26; マル6:36,45; 15:6,9,11,15; ルカ2:29; 8:38; 9:1,22; ヨハ18:39; 19:10,12; 使徒23:22; etc.
【そして】 καὶ καί カイ kai {kahee} (cc 接続詞・等位)
1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた
(G2532 καί Apparently a primary particle, having a copulative and sometimes also a cumulative force; and, also, even, so, then, too, etc.; often used in connection (or composition) with other particles or small words: – and, also, both, but, even, for, if, indeed, likewise, moreover, or, so, that, then, therefore, when, yea, yet. Internet Sacred Text Archive)
【その借金を】 δάνειον δάνειον ダネイオン daneion {dan‘-i-on} (n-an-s 名詞・対中単)
1)貸金 2)借金 3)負債
(G1156 δάνειον From δάνος danos (a gift); probably akin to the base of 1325 a loan: – debt. Internet Sacred Text Archive)
マタ18:27;
【彼に】 αὐτῶ αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npdm3s 代名詞・与男3)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
(G846 αὐτός From the particle αὖ au (perhaps akin to the base of 109 through the idea of a baffling wind; backward); the reflexive pronoun self, used (alone or in the compound of 1438 of the third person, and (with the proper personal pronoun) of the other persons: – her, it (-self), one, the other, (mine) own, said, ([self-], the) same, ([him-, my-, thy-]) self, [your-] selves, she, that, their (-s), them ([-selves]), there [-at, -by, -in, -into, -of, -on, -with], they, (these) things, this (man), those, together, very, which. Compare 848. Internet Sacred Text Archive)
【帳消しにしてやった】 ἀφῆκεν ἀφίημι アふィエーミ aphiēmi {af-ee‘-ay-mee} (viaa–3s 動詞・直・1アオ・能・3単)
< ἀπό ~から + ἵημι 送る
1)あるものを放っておく、投げやる、投げ捨てる、放免する、見逃す、見放す、引き渡す 2)放す、手放す 3)捨てておく、~から去らせる、うっちゃっておく、許す、~させておく、解放する、構わずにおく、そのままにまかせる、許す、受ける、放棄する、置き去る、残す 4)見捨てる、免除する、放免する 5)放り出す、絶縁する
(G863 ἀφίημι From 575 and ἵημι hiēmi (to send; an intensive form of εἶμι eimi (to go)); to send forth, in various applications: – cry, forgive, forsake, lay aside, leave, let (alone, be, go, have), omit, put (send) away, remit, suffer, yield up. Internet Sacred Text Archive)
マタ3:15; 6:12,14,15; 9:2,5,6; 12:31,32; 12:32; 18:21,27,32,33; 19:14; 23:13: マル1:34; 2:5,7,9,10; 3:28; 4:12; 5:19,37; 10:14; 11:6,16,25 etc.
† 英語訳聖書 Matt.18:27
King James Version
18:27 Then the lord of that servant was moved with compassion, and loosed him, and forgave him the debt.
New King James Version
18:27 “Then the master of that servant was moved with compassion, released him, and forgave him the debt.
American Standard Version
18:27 And the lord of that servant, being moved with compassion, released him, and forgave him the debt.
New International Version
18:27 The servant’s master took pity on him, canceled the debt and let him go.
Bible in Basic English
18:27 And the lord of that servant, being moved with pity, let him go, and made him free of the debt.
Today’s English Version
18:27 The king felt sorry for him, so he forgave him the debt and let him go.
Darby’s English Translation
18:27 And the lord of that bondman, being moved with compassion, loosed him and forgave him the loan.
Douay Rheims
18:27 And the lord of that servant being moved with pity, let him go and forgave him the debt.
Noah Webster Bible
18:27 Then the lord of that servant was moved with compassion, and loosed him, and forgave him the debt.
Weymouth New Testament
18:27 ‘Whereupon his master, touched with compassion, set him free and forgave him the debt.
World English Bible
18:27 The lord of that servant, being moved with compassion, released him, and forgave him the debt.
Young’s Literal Translation
18:27 and the lord of that servant having been moved with compassion did release him, and the debt he forgave him.
Amplified Bible
18:27 And his master’s heart was moved with compassion and he released him and forgave him [canceling] the debt.
† 細き聲 聖書研究ノート
<その家來の主人あはれみて之を解き、その負債を免したり>
ひれ伏して返済猶予を求める僕に、王はあわれんで、すべての負債を免除すると申し渡した。
<その家來の主人あはれみて之を解き、その負債を免したり>
王は家来に同情し、寛大にも彼を赦したばかりか、一万タラントンの借財を放棄してやった。
バークレーによれば一万タラントンは「王の身代金以上の金額」であるという。
「深い憐れみ σπλαγχνίζομαι スプらンくニゾマイ」から信じがたい寛容が生まれる。σπλαγχνίζομαι スプらンくニゾマイ は「σπλάγχνον 腸、内臓」から来た言葉で、それは人の内臓にあって、人を動かすものであった。人間存在の中心にある神的な感情である。
† 心のデボーション
「その家來の主人あはれみて之を解き、その負債を免したり」 マタイ18:27 大正文語訳聖書
「そこで、その僕の主人は憐れに思って、彼を赦し、借金を免じてやった」 フランシスコ会訳聖書
「肩代わり」
主人は家来の借財を免じてやった。注意しなければならないのは、主人は借財を「放棄」したのではなく、主人が家来の借財を「肩代わり」したことである。
神は私の果たし得ないことを「完済」されるのである。
人間を完成するのは、これを創造し給う神である。人間は神の 「深い憐れみ splagcni,zomai スプらンくニゾマイ 内臓、はらわたまで動かされる愛」がなければ完成しない。
† 心のデボーション
「その家來の主人あはれみて之を解き、その負債を免したり」 マタイ18:27 大正文語訳聖書
「そこで、その僕の主人は憐れに思って、彼を赦し、借金を免じてやった」 フランシスコ会訳聖書
「あわれみの器」
「深い憐れみ σπλαγχνίζομαι スプらンくニゾマイ」は「σπλάγχνον 腸、内臓」から来た言葉で、「(内臓、はらわた)まで動かされる」深い感動をあらわす。
「この憐憫の器は我等にして、ユダヤ人の中よりのみならず、異邦人の中よりも召し給ひしものなり」 ロマ9:24 大正文語訳聖書
人は神の「深い憐れみ σπλαγχνίζομαι スプらンくニゾマイ」を容れる「あわれみの器」である。神の「深い憐れみ σπλαγχνίζομαι スプらンくニゾマイ」を容れて持ち運べ。
† 細き聲 説教
「貧しき実」
「その家來の主人あはれみて之を解き、その負債を免したり」 マタイ18:27 大正文語訳聖書
「そこで、その僕の主人は憐れに思って、彼を赦し、借金を免じてやった」 フランシスコ会訳聖書
ひれ伏して返済猶予を求める僕に、王はあわれんで、すべての負債を免除すると申し渡した。
王は僕に同情し、寛大にも彼を赦したばかりか、一万タラントンの借財を放棄してやった。
バークレーによれば一万タラントンは「王の身代金以上の金額」であるという。
「一万タラント」のお話は、「許し」についてのたとえである。
神は悔い改める人の罪を許される。そして、人に「許しの実」を求められる。「一万タラントの許し」を与えられた人は、それと同量の「実」をむすのである。
しかし、神が清算を始められると、人は許されたと同量の実どころか、わずかの実もつけていないことに気づく。
神は清算を迫り、ついに人は猶予を求める。しかし、たとえ猶予されたところで支払える量ではない。神の「許し」は日々新たに与えられる恵みである。人はそれにどのようにお答えできようか?
神はそのような人をご覧になり、深く憐れまれる。
「深い憐れみ σπλαγχνίζομαι スプらンくニゾマイ」は「σπλάγχνον スプラグケナ(内臓、はらわた)まで動かされる」からきた言葉である。
神は、はらわたを動かされるほどの深い感動をもって人を憐れまれた。
そして、人の返済不能の「許しの実」をも放棄され、免除されるのである。
神の「許し」の深さを知った人は、もはや自分が「許しの実」として結ぶものがいかに貧しくあっても、それを無意味とは思わないだろう。
(皆川誠)
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