† 福音書縦観 「ヘロデとバプテスマのヨハネ」 マタイ14:1~12
マタイ14:1~12 マルコ6:14~29 ルカ9:7~9
マタイ14:1~12
Matt.14:4すなわち、ヨハネはヘロデに、「その女をめとるのは(兄弟の妻をめとるのは マルコ6:20)、よろしくない」と言ったからである。 口語訳聖書
† 日本語訳聖書 Matt.14:4
【漢訳聖書】
Matt.14:4 蓋約翰嘗謂之曰、爾納此婦、非宜也。
【明治元訳】
Matt.14:4 此(こ)はヨハネ、ヘロデに女(をんな)を娶(めと)るは宜(よろ)しからずと云(いひ)しに因(よる)
【大正文語訳】
Matt.14:4 ヨハネ、ヘロデに『かの女を納るるは宜しからず』と言ひしに因る。
【ラゲ訳】
Matt.14:4 其はヨハネ彼に向ひて、汝が彼婦を有つは可からず、と云ひたればなり。
【口語訳】
Matt.14:4 すなわち、ヨハネはヘロデに、「その女をめとるのは、よろしくない」と言ったからである。
【新改訳改訂3】
Matt.14:4 それは、ヨハネが彼に、「あなたが彼女をめとるのは不法です」と言い張ったからである。
【新共同訳】
Matt.14:4 ヨハネが、「あの女と結婚することは律法で許されていない」とヘロデに言ったからである。
【バルバロ訳】
Matt.14:4 ヨハネが、ヘロデに向かって、「あの女を妻にするのは許せないことだ」と言ったからだった。
【フランシスコ会訳】
Matt.14:4 それは、ヨハネがヘロデに、「あの女を妻としているのは許されないことだ」と言ったからである。
【日本正教会訳】
Matt.14:4 蓋イオアン彼に謂へり、爾此の婦を納るるは宜しからずと。
【塚本虎二訳】
Matt.14:4 ヨハネがヘロデに、「あなたはあの婦人を妻にするのはよろしくない」と言ったからである。
【前田護郎訳】
Matt.14:4 それは、ヨハネが彼に、「あの女をめとるのはよくない」といったからである。
【永井直治訳】
Matt.14:4 そはヨハネ彼に、かの婦をもつは汝のためにしからず、といひたればなり。
【詳訳聖書】
Matt.14:4 「あなたがあの女を妻とすることは合法的でない<正当でない>」と言ったからであった。
† 聖書引照 Matt.14:4
Matt.14:4 ヨハネ、ヘロデに『かの女を納るるは宜しからず』と言ひしに因る。
[ヨハネ、ヘロデに『かの女を納るるは宜しからず』と言ひしに因る] レビ18:16; 20:21; 申命25:5,6; Ⅱサム12:7; Ⅰ列王21:19; Ⅱ歴代26:18,19; 箴言28:1; イザ8:20; マル6:18; 使徒24:24,25
† ギリシャ語聖書 Matt.14:4
Stephens 1550 Textus Receptus
ελεγεν γαρ αυτω ο ιωαννης ουκ εξεστιν σοι εχειν αυτην
Scrivener 1894 Textus Receptus
ελεγεν γαρ αυτω ο ιωαννης ουκ εξεστιν σοι εχειν αυτην
Byzantine Majority
ελεγεν γαρ αυτω ο ιωαννης ουκ εξεστιν σοι εχειν αυτην
Alexandrian
ελεγεν γαρ αυτω ο ιωαννης ουκ εξεστιν σοι εχειν αυτην
Hort and Westcott
ελεγεν γαρ αυτω ο ιωαννης ουκ εξεστιν σοι εχειν αυτην
† ギリシャ語聖書 品詞色分け
Matt.14:4
ἔλεγεν γὰρ ὁ ἰωάννης αὐτῶ, οὐκ ἔξεστίν σοι ἔχειν αὐτήν.
† ヘブライ語聖書 Matt.14:4
Matt.14:4
לְאַחַר שֶׁיּוֹחָנָן אָמַר לוֹ, אָסוּר לְךָ לָקַחַת אוֹתָהּ
† ラテン語聖書 Matt.14:4
Latin Vulgate
Matt.14:4
Dicebat enim illi Ioannes: Non licet tibi habere eam.
For John was telling him, “It is not lawful for you to have her.”
† 私訳(詳訳)Matt.14:4
【私訳】 「というのは、ヨハネが『彼女を持つ<所有する、妻とする、とらえる、とどめる>ことはあなたに許されていない<合法でない、可能ではない>』と言ったからであった」
† 新約聖書ギリシャ語語句研究
Matt.14:4
ἔλεγεν γὰρ ὁ ἰωάννης αὐτῶ, οὐκ ἔξεστίν σοι ἔχειν αὐτήν.
【というのは】 γὰρ γάρ ガル gar {gar} (cs 接続詞・従位)
1)なぜなら、というのは、その理由は、だから 2)すなわち、では、いったい、結局 4)確かに、もちろん、だって
(G1063 γάρ A primary particle; properly assigning a reason (used in argument, explanation or intensification; often with other particles): – and, as, because (that), but, even, for indeed, no doubt, seeing, then, therefore, verily, what, why, yet. Internet Sacred Text Archive)
【ヨハネが】 ἰωάννης ᾽Ιωάννης イオーアンネース Iōannēs {ee-o-an‘-nace} (n-nm-s 名詞・主男単)
ヨハネ ヘブライ名「ヤーゥエの賜物」
(G2491 ᾽Ιωάννης Of Hebrew origin [3110 ; Joannes (that is, Jochanan), the name of four Israelites: – John. Internet Sacred Text Archive)
(バプテスマのヨハネ マタ3:1,2,6,11; 14;1~12; マル1:4; 2:18; ルカ3:2,3; ヨハ3:23; 使徒10:37; 13:24,25; 19:3,4)
(ゼベダイの子ヨハネ マタ4:21; 10:2; 17:1; マル1:19,29; 3:17; 5:37; 9:2,38; 10:35, 41; 13:3; 14:33; ルカ5:10; 6:14; 8:51; 9:28, 49, 54; 22:8 etc.)
【あの女と結婚することは】 e;cein auvth,n 原文「あの女を持つことは」
【あの女を】 αὐτήν αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npaf3s 代名詞・対女3)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
(G846 αὐτός From the particle αὖ au (perhaps akin to the base of 109 through the idea of a baffling wind; backward); the reflexive pronoun self, used (alone or in the compound of 1438 of the third person, and (with the proper personal pronoun) of the other persons: – her, it (-self), one, the other, (mine) own, said, ([self-], the) same, ([him-, my-, thy-]) self, [your-] selves, she, that, their (-s), them ([-selves]), there [-at, -by, -in, -into, -of, -on, -with], they, (these) things, this (man), those, together, very, which. Compare 848. Internet Sacred Text Archive)
【持つことは】 ἔχειν ἔχω エこー echō {ekh‘-o} (vnpa 不定詞・現能)
1)持っている、保持している、保存する、保管する、所有する、保つ 2)身につける、帯びる、具備している、着る 3)含んでいる、抱く、とどめる、しっかり捕らえている 4)~とみなす、思う
(G2192 ἔχω A primary verb (including an alternate form σχέω scheō skheh‘-o used in certain tenses only); to hold (used in very various applications, literally or figuratively, direct or remote; such as possession, ability, contiguity, relation or condition): – be (able, X hold, possessed with), accompany, + begin to amend, can (+ -not), X conceive, count, diseased, do, + eat, + enjoy, + fear, following, have, hold, keep, + lack, + go to law, lie, + must needs, + of necessity, + need, next, + recover, + reign, + rest, return, X sick, take for, + tremble, + uncircumcised, use. Internet Sacred Text Archive)
【律法でゆるされていない】 οὐκ ἔξεστίν σοι 原文「あなたに許されていない、合法的でない」
【あなたに】 σοι σός ソス sos {sos} (npd-2s 代名詞・与2単)
1)あなたの、お前の 2)あなたに
(G4674 σός From 4771 thine: – thine (own), thy (friend). Internet Sacred Text Archive)
【ゆるされて】 ἔξεστίν ἔξεστι エクセスティ exesti {ex‘-es-tee} (vipa–3s 動詞・直・現・能・3単)
1)合法である 2)許されている 3)差支えない 4)当然である、あたりまえである 5)よろしいことである 6)可能である
(G1832 ἔξεστι Third person singular present indicative of a compound of 1537 and 1510 so also ἐξόν exon ; neuter present participle of the same (with or without some form of 1510 expressed); impersonally it is right (through the figurative idea of being out in public): – be lawful, let, X may (-est). Internet Sacred Text Archive)
マタ12:2,4; 14:4; マル2:24,26; ルカ6:2,4; 使徒16:21; Ⅱコリ12:4
【いない】 οὐκ οὐ ウー ou {oo} (qn 不変化詞・否定)
1)否 2)~ない 3)~でない
(G3756 οὐ Also οὐκ ouk ook used before a vowel and οὐχ ouch ookh before an aspirate. A primary word; the absolutely negative (compare 3361 adverb; no or not: – + long, nay, neither, never, no (X man), none, [can-] not, + nothing, + special, un ([-worthy]), when, + without, + yet but. See also 3364 3372. Internet Sacred Text Archive)
【彼に】αὐτῶ αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npdm3s 代名詞・与男3)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
(G846 αὐτός From the particle αὖ au (perhaps akin to the base of 109 through the idea of a baffling wind; backward); the reflexive pronoun self, used (alone or in the compound of 1438 of the third person, and (with the proper personal pronoun) of the other persons: – her, it (-self), one, the other, (mine) own, said, ([self-], the) same, ([him-, my-, thy-]) self, [your-] selves, she, that, their (-s), them ([-selves]), there [-at, -by, -in, -into, -of, -on, -with], they, (these) things, this (man), those, together, very, which. Compare 848. Internet Sacred Text Archive)
【言った】 ἔλεγεν λέγω れゴー legō {leg‘-o} (viia–3s 動詞・直・未完・能・3)
1)言う、告げる、語る、話す、言い表す、述べる 2)呼ぶ、命ずる、指図する、言いつける 3)名づける、称する、呼びかける 4)意味する、指す
(G3004 λέγω A primary verb; properly to “lay” forth, that is, (figuratively) relate (in words [usually of systematic or set discourse; whereas2036 and 5346 generally refer to an individual expression or speech respectively; while 4483 is properly to break silence merely, and 2980 means an extended or random harangue]); by implication to mean: – ask, bid, boast, call, describe, give out, name, put forth, say (-ing, on), shew, speak, tell, utter. Internet Sacred Text Archive)
マタ1:20; 2:23; 5:44; 9:14,34; マル2:11; 5:9; 12:18; ルカ5:39; 6:46; 20:41; ヨハ1:29; 2:6; 16:12; etc.
† 英語訳聖書 Matt.14:4
King James Version
14:4 For John said unto him, It is not lawful for thee to have her.
New King James Version
14:4 Because John had said to him, “It is not lawful for you to have her.”
American Standard Version
14:4 For John said unto him, It is not lawful for thee to have her.
New International Version
14:4 for John had been saying to him: “It is not lawful for you to have her.”
Bible in Basic English
14:4 Because John had said to him, It is not right for you to have her.
Today’s English Version
14:4 For some time John the Baptist had told Herod, “It isn’t right for you to be married to Herodias!”
Darby’s English Translation
14:4 For John said to him, It is not lawful for thee to have her.
Douay Rheims
14:4 For John said to him: It is not lawful for thee to have her.
Noah Webster Bible
14:4 For John had said to him, It is not lawful for thee to have her.
Weymouth New Testament
14:4 because John had persistently said to him, ‘It is not lawful for you to have her.’
World English Bible
14:4 For John said to him, ‘It is not lawful for you to have her.’
Young’s Literal Translation
14:4 for John was saying to him, ‘It is not lawful to thee to have her,’
Amplified Bible
14:4 for John had said to him, “It is not lawful (morally right) for you to have her [living with you as your wife].”
† 細き聲 聖書研究ノート
<ヨハネ、ヘロデに『かの女を納るるは宜しからず』と言ひしに因る>
国主ヘロデがバプテスマのヨハネを捕えて投獄したのは、国主ヘロデが不正に兄弟の妻ヘロデヤを娶ったことをバプテスマのヨハネが「律法違反」だと糾弾したからである。
<領主ヘロデの罪>
律法には「兄弟の妻を犯してはならない。兄弟を辱めることになるからである」(レビ18:16) と定められている。領主ヘロデの行為は律法にそむくことであった。
† 心のデボーション
「ヨハネ、ヘロデに『かの女を納るるは宜しからず』と言ひしに因る」 マタイ14:4 大正文語訳聖書
「あの女と結婚することは律法で許されていない」 新共同訳聖書
「かの婦をもつは汝のために律(ただ)しからず」 永井直治訳聖書
「罪の連鎖」
領主ヘロデは異母兄弟の妻ヘロデヤに通じ、妻を離縁してヘロデヤと結婚した。
一つの罪を遂げるには、他の罪をも犯さなければならない。バプテスマのヨハネは「罪の連鎖」に楔を打ち込むが、ヘロデとヘロデヤに進行するものを止めることはできない。
「罪の連鎖」を止めるのはイエスの十字架である。
「もし神の光のうちに在すごとく光のうちを歩まば、我ら互に交際を得、また其の子イエスの血、すべての罪より我らを潔む」 Ⅰヨハネ1:7 大正文語訳聖書
† 心のデボーション
「ヨハネ、ヘロデに『かの女を納るるは宜しからず』と言ひしに因る」 マタイ14:4 大正文語訳聖書
「あの女と結婚することは律法で許されていない」 新共同訳聖書
「かの婦をもつは汝のために律(ただ)しからず」 永井直治訳聖書
「領主ヘロデの憂鬱」
ヨセフスの『ユダヤ古代誌』には「ヘロデは、ヨハネの民衆への大きな影響力が、彼の権力に及び、叛乱へと繋がることを恐れた」とある。ヘロデが恐れたのは自分の悪評判が民衆に広まることだった。
権力を得た者は、それを失うことを何よりも恐れる。「失われることのない権力」というものはない。昇りつめたら退くことに備えなければならない。
† 心のデボーション
「ヨハネ、ヘロデに『かの女を納るるは宜しからず』と言ひしに因る」 マタイ14:4 大正文語訳聖書
「あの女と結婚することは律法で許されていない」 新共同訳聖書
「かの婦をもつは汝のために律(ただ)しからず」 永井直治訳聖書
「汝のために律(ただ)しからず」
男と女はその結婚が神からのものかどうかを問う必要がある。
神の許されない結婚は二人のためにならず、二人のためにならない結婚を神は許されない。
† 細き聲 説教
「預言者ヨハネ」
「ヨハネ、ヘロデに『かの女を納るるは宜しからず』と言ひしに因る」 マタイ14:4 大正文語訳聖書
「あの女と結婚することは律法で許されていない」 新共同訳聖書
「かの婦をもつは汝のために律(ただ)しからず」 永井直治訳聖書
国主ヘロデがバプテスマのヨハネを捕えて投獄したのは、国主ヘロデが不正に兄弟の妻ヘロデヤを娶ったことをバプテスマのヨハネが「律法違反」だと糾弾したからである。
律法には「兄弟の妻を犯してはならない。兄弟を辱めることになるからである」(レビ18:16) と定められている。領主ヘロデの行為は律法にそむくことであった。
神に立てられた権力者は、それにふさわしい品性をもって身を清めなければならない。
しかし、しばしば権力者は力を背景におもうがままの行為に身を任せるのである。
ダビデがウリヤの妻バテ・シェバと密通の罪を犯したとき、神は預言者ナタンを遣わされ、ダビデに罪が告げられた。(Ⅱサムエル11~12章)
神は国主ヘロデの罪にバプテスマのヨハネを「預言者」として遣わされ、バプテスマのヨハネはユダの荒野で、ヘロデとヘロデヤの「罪」を厳しく糾弾したのである。
権力者に神のことばを伝えるのも「神に遣わされる預言者」の務めであった。
(皆川誠)
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