† 福音書縦観 「会堂司の娘と長血の女」 マタイ9:18~26
マタイ9:18~26 マルコ5:21~43 ルカ8:40~56
マタイ9:18~26
Matt.9:24「(なぜ泣き騒いでいるのか。 マルコ5:3)あちらへ行っていなさい。少女は死んだのではない。眠っているだけである」。すると人々はイエスをあざ笑った。 口語訳聖書
† 日本語訳聖書 Matt.9:24
【漢訳聖書】
Matt.9:24 遂謂之曰、退、女非死、乃寢耳、眾晒之、
【明治元訳】
Matt.9:24 之(これ)にけるは退(しりぞ)け女(むすめ)は死(しぬ)るに非(あら)ずただ寢(いね)たるのみ人々(ひとびひと)イエスを哂笑(あざわら)ふ
【大正文語訳】
Matt.9:24 『退け、少女は死にたるにあらず、寐ねたるなり』人々イエスを嘲笑ふ。
【ラゲ訳】
Matt.9:24 汝等退け、女は死したるに非ず、寝たるなり、と曰ひければ、人々彼を哂へり。
【口語訳】
Matt.9:24 「あちらへ行っていなさい。少女は死んだのではない。眠っているだけである」。すると人々はイエスをあざ笑った。
【新改訳改訂3】
Matt.9:24 言われた。「あちらに行きなさい。その子は死んだのではない。眠っているのです。」すると、彼らはイエスをあざ笑った。
【新共同訳】
Matt.9:24 言われた。「あちらへ行きなさい。少女は死んだのではない。眠っているのだ。」人々はイエスをあざ笑った。
【バルバロ訳】
Matt.9:24 「みな下がれ。娘は死んではいない、眠っているのだ」と言われた。人々はあざ笑った。
【フランシスコ会訳】
Matt.9:24 「あちらに行きなさい。この子は死んだのではない。眠っているのだ」と仰せになった。人々はイエズスをあざわらった。
【日本正教会訳】
Matt.9:24 彼等に謂へり、退け、蓋女は死せしに非ず、乃寢ぬるなり、人人彼を哂へり。
【塚本虎二訳】
Matt.9:24 言われた、「あちらに行っておれ。少女は死んだのではない、眠っているのだから。」人々はあざ笑っていた。
【前田護郎訳】
Matt.9:24 「立ち去りなさい。少女は死んだのではなく眠っているのだ」と。彼らはイエスをあざ笑った。
【永井直治訳】
Matt.9:24 彼等に云ひ給ふ、退け。そは少女は死にたるにあらざればなり。されど寢ぬるなり。乃ち彼等は嘲笑へり。
【詳訳聖書】
Matt.9:24 言われた、「向こうに行きなさい。少女は死んだのではなく、眠っているのだから」。すると彼らは彼を笑った<あざ笑った>。
† 聖書引照 Matt.9:24
Matt.9:24 『退け、少女は死にたるにあらず、寐ねたるなり』人々イエスを嘲笑ふ。
[退け] Ⅰ列王17:18~24; 使徒9:40; 20:10
[少女は死にたるにあらず、寐ねたるなり] ヨハ11:4,11~13
[人々イエスを嘲笑ふ] マタ27:39~43; 詩篇22:6,7; イザ49:7; 53:3
† ギリシャ語聖書 Matt.9:24
Stephens 1550 Textus Receptus
λεγει αυτοισ αναχωρειτε ου γαρ απεθανεν το κορασιον αλλα καθευδει και κατεγελων αυτου
Scrivener 1894 Textus Receptus
λεγει αυτοισ αναχωρειτε ου γαρ απεθανεν το κορασιον αλλα καθευδει και κατεγελων αυτου
Byzantine Majority
λεγει αυτοισ αναχωρειτε ου γαρ απεθανεν το κορασιον αλλα καθευδει και κατεγελων αυτου
Alexandrian
ελεγεν αναχωρειτε ου γαρ απεθανεν το κορασιον αλλα καθευδει και κατεγελων αυτου
Hort and Westcott
ελεγεν αναχωρειτε ου γαρ απεθανεν το κορασιον αλλα καθευδει και κατεγελων αυτου
† ギリシャ語聖書 品詞色分け
Matt.9:24
ἔλεγεν, ᾽Αναχωρεῖτε, οὐ γὰρ ἀπέθανεν τὸ κοράσιον ἀλλὰ καθεύδει. καὶ κατεγέλων αὐτοῦ.
† ヘブライ語聖書 Matt.9:24
Matt.9:24
צְאוּ, כִּי הַיַּלְדָּה לֹא מֵתָה. הִיא רַק יְשֵׁנָה. אַךְ הֵם צָחֲקוּ לוֹ
† ラテン語聖書 Matt.9:24
Latin Vulgate
Matt.9:24
Recedite: non est enim mortua puella, sed dormit. Et deridebant eum.
he said, “Depart. For the girl is not dead, but asleep.” And they derided him.
† 私訳(詳訳)Matt.9:24
【私訳】 「言われた。『引き下がり<後ずさりし、立ち去り、戻り>なさい。娘は死んだ<死にかけている>のではない。むしろ、眠っているのだ』 それで、彼ら〔そこにいた人々〕は彼〔イエス〕を嘲笑った<馬鹿にした、げらげら笑った>」
† 新約聖書ギリシャ語語句研究
Matt.9:24
ἔλεγεν, ᾽Αναχωρεῖτε, οὐ γὰρ ἀπέθανεν τὸ κοράσιον ἀλλὰ καθεύδει. καὶ κατεγέλων αὐτοῦ.
【言われた】 ἔλεγεν λέγω れゴー legō {leg‘-o} (viia–3s 動詞・直・未完・能3)
1)言う、告げる、語る、話す、言い表す、述べる 2)呼ぶ、命ずる、指図する、言いつける 3)名づける、称する、呼びかける 4)意味する、指す
(G3004 λέγω A primary verb; properly to “lay” forth, that is, (figuratively) relate (in words [usually of systematic or set discourse; whereas2036 and 5346 generally refer to an individual expression or speech respectively; while 4483 is properly to break silence merely, and 2980 means an extended or random harangue]); by implication to mean: – ask, bid, boast, call, describe, give out, name, put forth, say (-ing, on), shew, speak, tell, utter. Internet Sacred Text Archive)
マタ1:20; 2:23; 5:44; 9:14,34; マル2:11; 5:9; 12:18; ルカ5:39; 6:46; 20:41; ヨハ1:29; 2:6; 16:12; etc.
【あちらへ行きなさい】 ᾽Αναχωρεῖτε ἀναχωρέω アナこーレオー anachōreō {an-akh-o-reh‘-o} (vmpa–2p 動詞・命・現・能・2複)
< ἀνά 戻る + χωρέω 進む
1)戻る、帰る、去る、後ずさりする、退く 2)退却する、引き下がる 3)危険を避けて逃れ去る、人目を避けて去る
(G402 ἀναχωρέω From 303 and 5562 to retire: – depart, give place, go (turn) aside, withdraw self. Internet Sacred Text Archive)
マタ2:12,14; 4:12; 9:24; 14:13; 15:21 マル2:12,13,14; 12:15; 27:5; ヨハ6:15
【というのは】 γὰρ γάρ ガル gar {gar} (cs 接続詞・従位)
1)なぜなら、というのは、その理由は、だから 2)すなわち、では、いったい、結局 4)確かに、もちろん、だって
(G1063 γάρ A primary particle; properly assigning a reason (used in argument, explanation or intensification; often with other particles): – and, as, because (that), but, even, for indeed, no doubt, seeing, then, therefore, verily, what, why, yet. Internet Sacred Text Archive)
【少女は】 κοράσιον κοράσιον コラシオン korasion {kor-as‘-ee-on} (n-nn-s 名詞・主中単)
1)娘、少女、乙女、処女 2)小さい娘、幼い娘 3)人形
(G2877 κοράσιον Neuter of a presumed derivative of κόρη korē (a maiden); a (little) girl: – damsel, maid. Internet Sacred Text Archive)
マタ9:24,25; 14:11; マル5:41,42; 6:22,28
【死んだ】 ἀπέθανεν ἀποθνῄσκω アポとネースコー apothnēskō {ap-oth-nace‘-ko} (viaa–3s 動詞・直・2アオ・能・3単)
< ἀπό + θνῄσκω 死ぬ
1)(自然に)死ぬ 2)(不自然に)死ぬ 3)横死する 4)死なんとしている、死にかけている
(G599 ἀποθνῄσκω From 575 and 2348 to die off (literally or figuratively): – be dead, death, die, lie a-dying, be slain (X with). Internet Sacred Text Archive)
マタ8:32; 9:24,27; 26:35; マル5:35,39; 6:26; 12:19,20,21,22; 15:44; etc.
【のではなく】 οὐ οὐ ウー ou {oo} (qn 不変化詞・否定)
1)否 2)~ない 3)~でない
(G3756 οὐ Also οὐκ ouk ook used before a vowel and οὐχ ouch ookh before an aspirate. A primary word; the absolutely negative (compare 3361 adverb; no or not: – + long, nay, neither, never, no (X man), none, [can-] not, + nothing, + special, un ([-worthy]), when, + without, + yet but. See also 3364 3372. Internet Sacred Text Archive)
【むしろ】 ἀλλὰ ἀλλά アるら alla {al-lah‘} (ch 接続詞・完)
1)けれども、たしかに 2)しかし、それでも 3)かえって 4)むしろ、むしろ反対に、それのみか 5)以外に、そうではなくて、それどころか
(G235 ἀλλά Neuter plural of 243 properly other things, that is, (adverbially) contrariwise (in many relations): – and, but (even), howbeit, indeed, nay, nevertheless, no, notwithstanding, save, therefore, yea, yet. Internet Sacred Text Archive)
【眠っている】 καθεύδει καθεύδω カてウドー katheudō {kath-yoo‘-do} (vipa–3s 動詞・直・現・能・3単)
1)知らず知らず眠る、居眠りする 2)眠る、眠っている、寝ている、睡眠中である 3)何もしないでいる 4)死んでいる、永眠している
(G2518 καθεύδω From 2596 and εὕδω heudō (to sleep); to lie down to rest, that is, (by implication) to fall asleep (literally or figuratively): – (be a-) sleep. Internet Sacred Text Archive)
マタ8:24; 13:25; 26:40,43,45; マル13:36; 14:47,40,41; ルカ22:46; ピリ5:14; Ⅰテサ5:6,7,10
【それで】 καὶ καί カイ kai {kahee} (ch 接続詞・完)
1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた
(G2532 καί Apparently a primary particle, having a copulative and sometimes also a cumulative force; and, also, even, so, then, too, etc.; often used in connection (or composition) with other particles or small words: – and, also, both, but, even, for, if, indeed, likewise, moreover, or, so, that, then, therefore, when, yea, yet. Internet Sacred Text Archive)
【彼を】 αὐτοῦ αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npgm3s 代名詞・属男3)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
(G846 αὐτός From the particle αὖ au (perhaps akin to the base of 109 through the idea of a baffling wind; backward); the reflexive pronoun self, used (alone or in the compound of 1438 of the third person, and (with the proper personal pronoun) of the other persons: – her, it (-self), one, the other, (mine) own, said, ([self-], the) same, ([him-, my-, thy-]) self, [your-] selves, she, that, their (-s), them ([-selves]), there [-at, -by, -in, -into, -of, -on, -with], they, (these) things, this (man), those, together, very, which. Compare 848. Internet Sacred Text Archive)
【あざ笑った】 κατεγέλων καταγελάω カタゲらオー katagelaō {kat-ag-el-ah‘-o} (viia–3p 動詞・直・未完・能・3複)
< κατά 対立 + γελάω 笑う
1)あざわらう 2)嘲笑する 3)頭から笑って馬鹿にする 4)げらげら笑う
(G2606 καταγελάω To laugh down, that is, deride: – laugh to scorn. Internet Sacred Text Archive)
マタ9:24; マル5:40; ルカ8:55
† 英語訳聖書 Matt.9:24
King James Version
9:24 He said unto them, Give place: for the maid is not dead, but sleepeth. And they laughed him to scorn.
New King James Version
9:24 He said to them, “Make room, for the girl is not dead, but sleeping.” And they ridiculed Him.
American Standard Version
9:24 he said, Give place: for the damsel is not dead, but sleepeth. And they laughed him to scorn.
New International Version
9:24 he said, “Go away. The girl is not dead but asleep.” But they laughed at him.
Bible in Basic English
9:24 He said, Make room; for the girl is not dead, but sleeping. And they were laughing at him.
Today’s English Version
9:24 he said, “Get out, everybody! The little girl is not dead-she is only sleeping!” Then they all started making fun of him.
Darby’s English Translation
9:24 he said, Withdraw, for the damsel is not dead, but sleeps. And they derided him.
Douay Rheims
9:24 He said: Give place, for the girl is not dead, but sleepeth. And they laughed him to scorn.
Noah Webster Bible
9:24 He said to them, Give place: for the maid is not dead, but sleepeth. And they derided him.
Weymouth New Testament
9:24 and He said, ‘Go out of the room; the little girl is not dead, but asleep.’ And they laughed at Him.
World English Bible
9:24 he said to them, ‘Make room, because the young lady isn’t dead, but sleeping.’ They laughed him to scorn.
Young’s Literal Translation
9:24 he saith to them, ‘Withdraw, for the damsel did not die, but doth sleep,’ and they were deriding him;
Amplified Bible
9:24 He said, “Go away; for the girl is not dead, but is sleeping.” And they laughed and jeered at Him.
† 細き聲 聖書研究ノート
<『退け、少女は死にたるにあらず、寐ねたるなり』人々イエスを嘲笑ふ>
会堂管理者ヤイロの家の前は死んだ娘の葬儀の準備をはじめる人々で騒然としていた。すると、主イエスはそれらの人々を退け、「その子は死んだのではない。眠っているのです」と言われた。これを聞いて人々はイエスを嘲笑った。
<退け、少女は死にたるにあらず、寐ねたるなり>
イエスは会堂司ヤイロの家で、すでに幾人もの泣き女が呼ばれて甲高い声で悲しみを表し、その周りで騒々しく声を上げる人々をご覧になり、「(なぜ泣き騒いでいるのか。マルコ5:3)あちらへ行っていなさい。少女は死んだのではない。眠っているだけである」と言われた。すると人々はイエスをあざ笑った。 口語訳聖書
<嘲笑う>
「嘲笑う καταγελάω カタゲらオー」は「κατά 対立 + γελάω 笑う」から来ている。「頭から笑って馬鹿にし、げらげら笑う」の意味である。
「嘲笑ふ」の「嘲」は声を潜めてからかうこと。声を上げてからかうのは「諷 ふう」である。
英語 deride は皮肉や冗談の笑いで「あざわらう、ばかにする、冷笑する、愚弄する」の意味である。
† 心のデボーション
「『退け、少女は死にたるにあらず、寐ねたるなり』人々イエスを嘲笑ふ」 マタイ9:24 大正文語訳聖書
「『あちらに行きなさい。この子は死んだのではない。眠っているのだ』と仰せになった。人々はイエズスをあざわらった」 フランシスコ会訳聖書
「目覚めるとき」
イエスは「死んだ少女」を「死んだのではない、眠っているのだ」と言われた。
死は眠りであり、死者は目覚めるときを待つ。
英語で「永眠」は「eternal sleep 永遠の眠り」である。Ⅰテサロニケ4:13~18
† 心のデボーション
「『退け、少女は死にたるにあらず、寐ねたるなり』人々イエスを嘲笑ふ」 マタイ9:24 大正文語訳聖書
「『あちらに行きなさい。この子は死んだのではない。眠っているのだ』と仰せになった。人々はイエズスをあざわらった」 フランシスコ会訳聖書
「嘲笑い」
イエスの言葉に人々は「あざ笑う καταγελάω カタゲらオー」。「καταγελάω カタゲらオー」は「κατά 対立 + γελάω 笑う」こと。「馬鹿にしてげらげら笑う」ことである。偽りの悲しみに馬鹿騒ぎする群衆は、喪の場でも「馬鹿笑い」する。しかし、娘の死を見つめる父親とその家族は「あざ笑う καταγελάω カタゲらオー」ことは決してなかったであろう。イエスはそのような群衆に「立ち去る」よう命じられる。
† 心のデボーション
「『退け、少女は死にたるにあらず、寐ねたるなり』人々イエスを嘲笑ふ」 マタイ9:24 大正文語訳聖書
「『あちらに行きなさい。この子は死んだのではない。眠っているのだ』と仰せになった。人々はイエズスをあざわらった」 フランシスコ会訳聖書
「高慢な笑い」
ギリシャ語で「γελάω ゲラオー」は幸せな笑いである、「微笑み」であって、輝く笑いである。「今泣いている人々」にも訪れる幸いな笑いである。(ルカ6:21) しかし、それに κατα,(反対して)笑うのが「あざ笑い καταγελάω カタゲラオー」であり、人の不幸を喜び、蔑みからの高慢な笑いである。残念なことに「笑い」の多くは「καταγελάω カタゲラオー」である。
† 細き聲 説教
「娘は死んだのではない」
「『退け、少女は死にたるにあらず、寐ねたるなり』人々イエスを嘲笑ふ」 マタイ9:24 大正文語訳聖書
「『あちらに行きなさい。この子は死んだのではない。眠っているのだ』と仰せになった。人々はイエズスをあざわらった」 フランシスコ会訳聖書
イエスが会堂管理者ヤイロの家に到着されると、辺りは泣き女たちや葬儀の準備をはじめる人々で騒然としていた。イエスが「少女は死にたるにあらず、寐ねたるなり」と言われ人々を退けられたので、人々はイエスを嘲笑った。
娘はすでに息をしていなかった。それを確認すればあとは葬儀の準備をはじめるだけである。それにもかかわらず、騒ぎを退けるイエスは常識に外れている。
しかし、常識というものが常に真実ではない。常識を超えた真実がある。
イエスの目にはそれが見えておられる。
信仰は常識を超えた真実にも目を開く。
信仰者はかく嘲笑われる。しかし、信仰者は常識に含まれる真実にも目を開くのである。
イエスが「死」を「眠り」と言われるところにも「常識を超えた真実」がある。
神の目に「死」は消滅ではなく、一刻の眠りであり、やがて目覚めるときを待つのである。
(皆川誠)
コメント