† 福音書縦観 「病人のいやし」 マタイ4:23~25
マタイ4:23~25 マルコ1:39 ルカ4:44
マタイ4:23~25
Matt.4:24そこで、その評判はシリヤ全地にひろまり、人々があらゆる病にかかっている者、すなわち、いろいろの病気と苦しみとに悩んでいる者、悪霊につかれている者、てんかん、中風の者などをイエスのところに連れてきたので、これらの人々をおいやしになった。
† 日本語訳聖書 Matt.4:24
【漢訳聖書】
Matt.4:24 其聲名徧揚於敘利亞、人以凡有病者、卽患萬殊之疾、與痛楚、及患鬼者、癲癇者、癱瘋者、攜就耶穌、而耶穌醫焉。
【明治元訳】
Matt.4:24 其(その)(※3)聲名(きこえ)あまねくスリヤに播(ひろが)りしかば人々(ひとびと)すべての患(わづら)へる者(もの)萬殊(さまざま)の病(やまひ)また痛(いたみ)惱(なや)めるもの鬼(おに)に憑(つかれ)たるもの癲癇(てんかん)癱瘋(ちうぶう)の病(やまひ)に罹(かか)れる者(もの)を彼(かれ)に携(つれ)來(きたり)ければ之(これ)を醫(いや)せり (※3 明治14(1881)年版ではどちらもひらがな表記)
【大正文語訳】
Matt. 4: 24 その噂あまねくシリヤに弘り、人々すべての惱めるもの、即ちさまざまの病と苦痛とに罹れるもの、惡鬼に憑かれたるもの、癲癇および中風の者などを連れ來りたれば、イエス之を醫したまふ。
【ラゲ訳】
Matt. 4: 24 其名聲洽くシリアに播がり、患へる者、様々の病と苦とに罹れる者、惡魔に憑かれたるおの、癲癇癱瘋に悩める者を皆彼に差出しけるに、イエズス之を醫し給ひ、
【口語訳】
Matt.4:24 そこで、その評判はシリヤ全地にひろまり、人々があらゆる病にかかっている者、すなわち、いろいろの病気と苦しみとに悩んでいる者、悪霊につかれている者、てんかん、中風の者などをイエスのところに連れてきたので、これらの人々をおいやしになった。
【新改訳改訂3】
Matt.4:24 イエスのうわさはシリヤ全体に広まった。それで人々は、さまざまな病気や痛みに苦しむ病人、悪霊につかれた人、てんかんの人、中風の人などをみな、みもとに連れて来た。イエスは彼らをいやされた。
【新共同訳】
Matt.4:24 そこで、イエスの評判がシリア中に広まった。人々がイエスのところへ、いろいろな病気や苦しみに悩む者、悪霊に取りつかれた者、てんかんの者、中風の者など、あらゆる病人を連れて来たので、これらの人々をいやされた。
【バルバロ訳】
Matt. 4:24 そのうわさは全シリアに広まり、いろいろな病気と悩みに苦しめられている人、悪魔につかれた人、てんかんと中風の人をすべて、イエズスのもとに連れてきたので、これを治された。
【フランシスコ会訳】
Matt. 4:24 そこで、イエズスの評判は全シリアに広まり、人々は、さまざまな病気や苦しみに悩んでいる者、悪魔につかれている者、てんかん、中風の人など、あらゆる病人をイエズスのもとに連れて来た。イエズスは彼らをお治しになった。
【日本正教会訳】
Matt. 4:24 彼の聲名(きこえ)徧(あまね)くシリヤに揚(あが)れり、人(ひと)凡(およそ)の患(わづら)へる者、種種(しゆじゆ)の病及び痛楚(いたみ)を負へる者、魔鬼(まき)に憑(よ)らるゝ者、癲癇の者、癱瘋(ちゆうぶう)の者を攜(たづさ)へて、彼に就(つ)きたるに、彼之を醫(いや)せり。
【塚本虎二訳】
Matt. 4:24 そこでイエスの評判が全シリヤに広まり、人々がさまざまな病気や痛みに苦しむ病人、(中でも)悪鬼につかれた者、癲癇、中風の者を皆イエスのところにつれて来たので、それをなおされた。
【前田護郎訳】
Matt. 4:24 そして彼のうわさは全シリアに行きわたった。そして人々は彼のところに病人を皆連れて来た。彼らはいろいろな病や痛みになやまされていた。悪鬼につかれたもの、てんかんのもの、中風のものであって、彼は彼らをいやされた。
【永井直治訳】
Matt. 4:24 さればその風聞あまねくスリヤに出で往きたり。乃ち人々、種々の疾また苦(くるしみ)に罹れる者、また惡鬼に憑かれたる者、また癲癇また中風の者など、すべて惱(なやみ)ある者を連れ來れり。乃ち彼はこれを癒し給へり。
【詳訳聖書】
Matt. 4:24 こうしてイエスの評判はシリア全土に広がった。人々はさまざまの病気や痛みで苦しんでいる者、悪魔の力の下にある者、てんかんの患者、中風の者などの病人をみんなイエスのもとに連れて来たので、彼はその人たちをいやされた。
† 聖書引照 Matt.4:24
Matt. 4: 24 その噂あまねくシリヤに弘り、人々すべての惱めるもの、即ちさまざまの病と苦痛とに罹れるもの、惡鬼に憑かれたるもの、癲癇および中風の者などを連れ來りたれば、イエス之を醫したまふ。
[その噂] マタ9:26,31; 14:1; ヨシュ6:27; Ⅰ列王4:31; 1Ki 10:1; Ⅰ歴代14:17; マル1:28; ルカ4:14; 5:15
[あまねくシリヤに弘り] Ⅱサム8:6; ルカ2:2; 使徒15:23,41
[人々すべての惱めるもの、即ちさまざまの病と苦痛とに罹れるもの] マタ4:23; 8:14,15; 9:35; 出エ15:26
[惡鬼に憑かれたるもの] マタ9:32; 12:22; 15:22; 17:18; マル5:2~18; ルカ4:33~35; 8:27~37; 使徒10:38
[癲癇および中風の者などを連れ來りたれば] マタ17:15
[イエス之を醫したまふ] マタ8:6,13; 9:2~8
† ギリシャ語聖書 Matt.4:24
Stephens 1550 Textus Receptus
και απηλθεν η ακοη αυτου εις ολην την συριαν και προσηνεγκαν αυτω παντας τους κακως εχοντας ποικιλαις νοσοις και βασανοις συνεχομενους και δαιμονιζομενους και σεληνιαζομενους και παραλυτικους και εθεραπευσεν αυτους
Scrivener 1894 Textus Receptus
και απηλθεν η ακοη αυτου εις ολην την συριαν και προσηνεγκαν αυτω παντας τους κακως εχοντας ποικιλαις νοσοις και βασανοις συνεχομενους και δαιμονιζομενους και σεληνιαζομενους και παραλυτικους και εθεραπευσεν αυτους
Byzantine Majority
και απηλθεν η ακοη αυτου εις ολην την συριαν και προσηνεγκαν αυτω παντας τους κακως εχοντας ποικιλαις νοσοις και βασανοις συνεχομενους και δαιμονιζομενους και σεληνιαζομενους και παραλυτικους και εθεραπευσεν αυτους
Alexandrian
και απηλθεν η ακοη αυτου εις ολην την συριαν και προσηνεγκαν αυτω παντας τους κακως εχοντας ποικιλαις νοσοις και βασανοις συνεχομενους [και] δαιμονιζομενους και σεληνιαζομενους και παραλυτικους και εθεραπευσεν αυτους
Hort and Westcott
και απηλθεν η ακοη αυτου εις ολην την συριαν και προσηνεγκαν αυτω παντας τους κακως εχοντας ποικιλαις νοσοις και βασανοις συνεχομενους δαιμονιζομενους και σεληνιαζομενους και παραλυτικους και εθεραπευσεν αυτους
† ギリシャ語聖書 Interlinear
Matt. 4:24
καὶ ἀπῆλθεν ἡ ἀκοὴ αὐτοῦ εἰς ὅλην τὴν Συρίαν καὶ προσήνεγκαν αὐτῷ πάντας τοὺς κακῶς ἔχοντας ποικίλαις νόσοις καὶ βασάνοις συνεχομένους καὶ δαιμονιζομένους καὶ σεληνιαζομένους καὶ παραλυτικούς, καὶ ἐθεράπευσεν αὐτούς.
καὶ ἀπῆλθεν ἡ ἀκοὴ αὐτοῦ εἰς ὅλην τὴν Συρίαν
And went the report of him into all Syria:
καὶ προσήνεγκαν αὐτῷ πάντας τοὺς κακῶς ἔχοντας ποικίλαις νόσοις
and they brought to him all the[ones] ill having various diseases
καὶ βασάνοις συνεχομένους καὶ δαιμονιζομένους
and torments, suffering from, and demon-possessed,
καὶ σεληνιαζομένους καὶ παραλυτικούς, καὶ ἐθεράπευσεν αὐτούς.
and lunatics, and paralysed; and he healed them.
† ギリシャ語聖書 品詞色分け
Matt.4:24
καὶ ἀπῆλθεν ἡ ἀκοὴ αὐτοῦ εἰς ὅλην τὴν Συρίαν καὶ προσήνεγκαν αὐτῷ πάντας τοὺς κακῶς ἔχοντας ποικίλαις νόσοις καὶ βασάνοις συνεχομένους [καὶ] δαιμονιζομένους καὶ σεληνιαζομένους καὶ παραλυτικούς, καὶ ἐθεράπευσεν αὐτούς.
† ラテン語聖書 Matt.4:24
Latin Vulgate
Matt.4:24
Et abiit opinio eius in totam Syriam, et obtulerunt ei omnes male habentes, variis languoribus, et tormentis comprehensos, et qui dæmonia habebant, et lunaticos, et paralyticos, et curavit eos:
And reports of him went out to all of Syria, and they brought to him all those who had maladies, those who were in the grasp of various sicknesses and torments, and those who were in the hold of demons, and the mentally ill, and paralytics. And he cured them
~ The word ‘lunaticos’ refers to the mentally ill, who were thought to be affected by the phases of the moon. In some contexts, it may also refer to epileptics. Although we today distinguish between mental illness and epilepsy, they are both illnesses affecting the brain or mind.
† ヘブライ語聖書 Matt.4:24
Matt.4:24
שִׁמְעוֹ יָצָא בְּכָל סוּרְיָה וְהֵבִיאוּ אֵלָיו אֶת כָּל הַחוֹלִים הַסּוֹבְלִים מִמַּחֲלוֹת וּמַכְאוֹבִים לְמִינֵיהֶם, וְגַם אֲנָשִׁים אֲחוּזֵי שֵׁדִים, מֻכֵּי יָרֵחַ וּמְשֻׁתָּקִים, וְהוּא רִפֵּא אוֹתָם
† 私訳(詳訳)Matt.4:24
【私訳】 「そして、彼〔イエス〕のうわさ<消息、評判>はシリア全域に広まり<立ち廻り、出発していき>、そして、〔人々は〕彼〔イエス〕に、あらゆる<あらん限りの>病<邪悪、災い、有害、不吉、有害な病>、また、さまざまの苦しみ<苦悩、苦痛、災禍、災難、病苦、不幸、錯乱>で悩んでいる<身動きできぬ、痛む、苦しむ>者、また悪魔の力にとりこになった者<悪霊の支配下にある、悪霊にとりつかれる、死者の霊に取り憑かれる、病魔に憑かれる>、またセレーニアゾマイ(月の影響をこうむる、月に行く、月の力のとりこになる、月光のために心を犯される、癲癇症である、「月の作用による病気」詳訳聖書)>、また中風の者<中風の、不随の、麻痺した者>など、あらゆる病人をみな彼〔イエス〕に連れてきた<運んできた、捧げた、差し出した>。彼〔イエス〕は彼ら<その人々>を癒され<仕えられ、手当され>た」
† 新約聖書ギリシャ語語句研究
Matt.4:24
καὶ ἀπῆλθεν ἡ ἀκοὴ αὐτοῦ εἰς ὅλην τὴν Συρίαν καὶ προσήνεγκαν αὐτῷ πάντας τοὺς κακῶς ἔχοντας ποικίλαις νόσοις καὶ βασάνοις συνεχομένους [καὶ] δαιμονιζομένους καὶ σεληνιαζομένους καὶ παραλυτικούς, καὶ ἐθεράπευσεν αὐτούς.
【そして】 καὶ καί カイ kai {kahee} (ch 接続詞・完)
1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた
【彼の】 αὐτοῦ αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npgm3s 代名詞・属男3)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
【評判が】 ἀκοὴ ἀκοή アコエー akoē {ak-o-ay‘} (n-nf-s 名詞・主女単)
1)聞こえること、聞こえた音、聞いたこと、聞くこと 2)聴覚、耳、聞く能力 3)説くところ、説教 4)うわさ、評判、伝聞、風説、消息
マタ4:24; 13:14; 14:1; 24:6 マル1:28; 7:35; 13:7 etc.
【シリア】 Συρίαν\ Συρία スゆリア Suria {soo-ree‘-ah } (n-af-s 名詞・対女単)
シリア パレスチナの北の国で首都はアンティオケ
マタ4:24; ルカ2:2; 使徒15:23, 41; 18:18; 20:3; 21:3; ガラ1:21
【中に】 εἰς ὅλην
【中】 ὅλην ὅλος ホろス holos {hol‘-os} (a–af-s 形容詞・対女単)
1)全体の 2)すべての 3)全部の 4)全くの 5)完全な
【に】 εἰς εἰς エイス eis {ice} (pa 前置詞・対)
1)~の中へ 2)~へ 3)~まで 4)~のために 5)~に対して 6)~に向かって 7)~を目標にして 8)の間に
【広まった】 ἀπῆλθεν ἀπέρχομαι アペルこマイ aperchomai {ap-erkh‘-om-ahee} (viaa–3s 動詞・直・2アオ・能・3単)
< ἀπό ~から + ἔρχομαι 行く、来る
1)~から去る、~から離れる、離れて行く、立ち去る 2)行く、退く、出発する 3)やめる
マタ2:22; 5:30; 8:18;,19,21,33; 10:5; 13:28; 14:15,16; 16:21; 18:30; 20:4; 21:29; 22:5,18,25; 26:36,42,44;27:5; 25:10 etc.
【そして】 καὶ καί カイ kai {kahee} (ch 接続詞・完)
1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた
【いろいろな病気】 πάντας τοὺς κακῶς 「全ての、あらゆる病気」
【いろいろの】 πάντας πᾶς パース pas {pas} (a–am-p 形容詞・対)
1)どれでも、何であれ、何でも、あらゆる、みな 2)~全部の、あらんかぎりの、1つも欠けが無い、ひとり残らず 3)全体の、全部の、すべて 4)混じりものがなく、純粋な
πᾶσαι パーサイ 「πᾶς どれでも、全体の」の複数形
【病気を】 κακῶς κακῶς カコース kakōs {kak-oce‘} (ab 副詞)
1)(広い意味で)悪い、醜い、低い、賎しい、邪悪な、性悪な 2)災いの、不吉な、酷い、ひどい 3)有害な、病気 4)間違って
マタ4:24; 15:22; 17:15; 21:41; マル1:34; 6:55; ヨハ18:23; 使徒23:5; ヤコ4:3 etc.
【持つ人】 ἔχοντας ἔχω エこー echō {ekh‘-o} (vppaam-p 分詞・現能対男複)
1)持っている、保持している、保存する、保管する、所有する、保つ 2)身につける、帯びる、具備している、着る 3)含んでいる、抱く、とどめる、しっかり捕らえている 4)~とみなす、思う
【いろいろな苦しみ】 ποικίλαις νόσοις
【いろいろの】 ποικίλαις ποικίλος ポイキろス poikilos {poy-kee‘-los} (a–df-p 形容詞・与女複)
1)色とりどりの、さまざまな 2)多様な、込み入った 3)変転する、変わりやすい、不安定な
マタ4:24; マル1:34; ルカ4:40; Ⅱテモ3:6; テト3:3; ヘブ2:4; 13:9; ヤコ1:2; Ⅰペテ1:6; 4:10
【苦しみ】 νόσοις νόσος ノソス nosos {nos‘-os} (n-df-p 名詞・与女複)
1)病気、病苦、不幸 2)狂気、錯乱 3)苦痛、苦悩 4)災難、災禍、災厄、悪い、邪悪な、禍の、不吉な、醜い、悪業、困りもの、損になる
「νόσος ノソス」は全身の疾病、「μαλακία マラキア」は部分的疾患 (黒崎幸吉『注解 新約聖書 マタイ』)
マタ4:23,24; 8:17; 9:35; 10:1; マル1:34; ルカ4:40; 6:17; 7:21; 9:1; 使徒19:12
【そして】 καὶ καί カイ kai {kahee} (cc 接続詞・等位)
1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた
【悩む者】 βασάνοις συνεχομένους
【悩む】 βασάνοις βάσανος バサノス basanos {bas‘-an-os} (n-df-p 名詞・与女複)
1)試金石 2)拷問の試み 3)苦痛、苦しみ、試験、吟味、痛み 4)地獄の責苦
「βάσανος」は「試金石」からきた言葉で「硬さを確かめるために用いられた黒い石」から「試練の苦しみ」を意味する。
マタ4:24; ルカ16:23,24
黒崎幸吉は、「悩める者」の原語は「工合が悪い者」と直訳すべき語で「病気」という語ではないとする
(黒崎幸吉『注解 新約聖書 マタイ』)
【者】 συνεχομένους συνέχω スゆネこー sunechō {soon-ekh‘-o} (vpppam-p 分詞・現受対男複)
1)一緒にしておく、離れぬように固まって保つ、まわりから圧迫する、身動き出来ぬようにこみあう、~にしばられている、一つに保持する、集めておく、強制する、おしつける 2)閉じる、追いやる 3)苦しむ
マタ4:24; ルカ4:38; 8:37,45; 12:50; 19:43; 22:63; 使徒7:57; 18:5; 28:8; Ⅱコリ5:14; ピリ1:23
「βασάνοις συνεχομένους」は「苦痛の試金石」に「身動きできぬように」固定されること。黒崎幸吉「具合が悪いもの」
【悪霊に取りつかれた者】 δαιμονιζομένους δαιμονίζομαι ダイモニゾマイ daimonizomai {dahee-mon-id‘-zom-ahee} (vppnam-p 分詞・現能欠対男複)
1)悪霊の支配下にある 2)悪霊にとりつかれる 3)死者の霊に取り憑かれる 4)病魔に憑かれる
「δαιμονίζομαι ダイモニゾマイ」は「δαίμων ダイモーン 悪魔」の力にとりこになった者、死者の霊にとりつかれた者
マタ4:24; 8:16,28,33; 9:32; 12:22; 15:22; マル1:32; 5:15,16,18; ルカ8:36; ヨハ10:21
【そして】 καὶ καί カイ kai {kahee} (cc 接続詞・等位)
1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた
【てんかんの者】 σεληνιαζομένους σεληνιάζομαι セれーニアゾマイ selēniazomai {sel-ay-nee-ad‘-zom-ahee } (vppnam-p 分詞・現能欠対男複)
< σελήνη 月、月光
1)月の影響をこうむる、月に行く、月の力のとりこになる、月光のために心を犯される 2)癲癇症である
当時、月光を浴びると精神のバランスが崩れるとされ、「σεληνιάζομαι セれーニアゾマイ」と呼ばれる人々がいた。人々は「てんかん」を患う人をも「σεληνιάζομαι セれーニアゾマイ」と呼んだ。しかし、「てんかん」は決して「σεληνιάζομαι セれーニアゾマイ」ではない。現代では「てんかん」はギリシャ語で ἐπιληψία エピレープシア、 英語 epilepsy を用いる。
以後、細き聲聖書研究では、この病を「セレーニアゾマイ 月の作用による病気(詳訳聖書)」と表記することにする。
マタ4:24; 17:15
【そして】 καὶ καί カイ kai {kahee} (cc 接続詞・等位)
1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた
【中風の者】 παραλυτικούς παραλυτικός パラりゅティコス paralutikos {par-al-oo-tee-kos‘} (ap-am-p 形容詞・対男複)
< παραλύω ぐらぐらにゆれる、弱める、麻痺させる
1)中風の 2)不随の 3)麻痺した
マタ4:24; 8:6; 9:2,6; マル2:3,4,5,9,10
【彼に】 αὐτῷ αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npdm3s 代名詞・与男3)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
【連れてこられたので】 προσήνεγκαν προσφέρω プロスふェロー prospherō {pros-fer‘-o} (viaa–3p 動詞・直・1アオ能・3複)
< πρός ~から + φέρω 運ぶ
1)持って行く、運んでくる、連れてくる 2)近づける、くっつける、あてがう 3)加える、差し出す、提供する、ささげる、贈る 、~にもってくる、献げものを献げる 4)適用する 5)申し出る、申し入れる
マタ2:11; 4:24; 5:23,24; 8:4,16; 9:2,32; 12:22; 14:35; 17:16; マル1:44; 使徒7:42; ヘブ5:1,7; 8:3,4;9:7,9,25,28; 10:1;,2,8,12; 11:4,17 etc.
【そして】 καὶ καί カイ kai {kahee} (ch 接続詞・完)
1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた
【彼らを】 αὐτούς αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npam3p 代名詞・対男3 彼)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
【いやされた】 ἐθεράπευσεν θεραπεύω てラペウオー therapeuō {ther-ap-yoo‘-o } (viaa–3s 動詞・直・1アオ・能・3単)
< θεράπων 召使い、下僕
1)奉仕する、仕える 2)治療する、いやす、直す、看護する、手当する 3)世話する、面倒をみる、心を掛ける、配慮する 4)育む、養う
Psychotherapy 精神療法 はギリシャ語の 「θεραπεία ψυχῆς」に由来する。「ψυχῆς プシュケー いのち、こころ、精神、自我、自己」に「θεραπεία テラペイア 奉仕、世話、治療、手当」すること
マタ4:23,24; 8:7,16; 9:35; 10:1,8; 12:10,15,22; 14:14; 15:30; 17:26; 19:2: 21:14; マル1:34; 3:2,10:6:5,13 etc.
† 英語訳聖書 Matt.4:24
King James Version
4:24 And his fame went throughout all Syria: and they brought unto him all sick people that were taken with divers diseases and torments, and those which were possessed with devils, and those which were lunatick, and those that had the palsy; and he healed them.
American Standard Version
4:24 And the report of him went forth into all Syria: and they brought unto him all that were sick, holden with divers diseases and torments, possessed with demons, and epileptic, and palsied; and he healed them.
New International Version
4:24 News about him spread all over Syria, and people brought to him all who were ill with various diseases, those suffering severe pain, the demon-possessed, those having seizures, and the paralyzed, and he healed them.
Bible in Basic English
4:24 And news of him went out through all Syria; and they took to him all who were ill with different diseases and pains, those having evil spirits and those who were off their heads, and those who had no power of moving. And he made them well.
Darby’s English Translation
4:24 And his fame went out into the whole of Syria, and they brought to him all that were ill, suffering under various diseases and pains, and those possessed by demons, and lunatics, and paralytics; and he healed them.
Douay Rheims
4:24 And his fame went throughout all Syria, and they presented to him all sick people that were taken with divers diseases and torments, and such as were possessed by devils, and lunatics, and those that had palsy, and he cured them:
Noah Webster Bible
4:24 And his fame spread throughout all Syria: and they brought to him all sick people that were taken with diverse diseases and torments, and those who were possessed with demons, and those who were lunatic, and those that had the palsy; and he healed them.
Weymouth New Testament
4:24 Thus His fame spread through all Syria; and they brought all the sick to Him, the people who were suffering from various diseases and pains–demoniacs, epileptics, paralytics; and He cured them.
World English Bible
4:24 The report about him went forth into all Syria. They brought to him all who were sick, afflicted with various diseases and torments, possessed with demons, epileptics, and paralytics; and he healed them.
Young’s Literal Translation
4:24 and his fame went forth to all Syria, and they brought to him all having ailments, pressed with manifold sicknesses and pains, and demoniacs, and lunatics, and paralytics, and he healed them.
Amplified Bible
4:24 So the news about Him spread throughout all Syria; and they brought to Him all who were sick, those suffering with various diseases and pains, those under the power of demons, and epileptics, paralytics; and He healed them.
† 細き聲 聖書研究ノート
<その噂あまねくシリヤに弘り、人々すべての惱めるもの、即ちさまざまの病と苦痛とに罹れるもの、惡鬼に憑かれたるもの、癲癇および中風の者などを連れ來りたれば、イエス之を醫したまふ>
イエスの教えは人々を深くとらえ、その評判はガリラヤの北方の国シリアにまでひろまった。人々は癒すことの困難な病に苦しむ者たちをイエスの所に連れてくると、イエスはそれらの人々を癒された。病には身体的な疾患と霊的なものが引き起こすと思われた苦悩も含まれていた。
<評判>
「評判 ἀκοή アコエー」は「耳、聴覚」からくる言葉。
「広まる ἀπέρχομαι アペルこマイ」は「立ち去る、出発する」の意味。
イエスの「評判」は「出発し」、遠くパレスチナの北の国シリアの耳にまで届いたのである。
<連れてくる>
「連れてくる προσφέρω プロスふェロー」は「持ち出す、運んでくる」で、この言葉には「ささげものを捧げる」にも用いられる。人々はあらゆる病や苦痛を、あたかも神への「ささげもの」のように運んだのである。
<悪霊に取りつかれた者>
「悪霊に取りつかれた者 δαιμονίζομαι ダイモニゾマイ」は「δαίμων ダイモーン 悪魔」の力にとりこになった者で「死者の霊にとりつかれた者」の意味もある。「悪霊に取りつかれる者 δαιμονίζομαι ダイモニゾマイ」は、特殊な存在であると共に、すべての人に深く内在し人を動かす力である。
漢訳聖書は「悪霊」を「鬼」と訳した。これをうけて明治元訳聖書は「鬼(おに)に憑(つかれ)たるもの」とし、大正文語訳聖書は「惡鬼に憑かれたるもの」とし、口語訳聖書は「悪霊につかれている者」とした。
「鬼」は中国では、「陽の神」に対して「陰の神」をさし、陰の気のもので、生きた者をそこなうとされる。
<セレーニアゾマイ>
「てんかん」と訳された「σεληνιάζομαι セれーニアゾマイ」は「月、月光」を意味する言葉「σελήνη セレーネー」からきており、「月の影響をこうむる、月に行く、月の力のとりこになる」などの意味をもつ。当時は「てんかん」を患う人が「σεληνιάζομαι セれーニアゾマイ」とされた。
<中風>
「中風 παραλυτικός パラりゅティコス」は「παραλύω パラリューオー ぐらぐらにゆれる」からきたもので、中風で体から力の抜けること。
<いやし>
「いやす θεραπεύω てラペウオー」は、「θεράπων セラポーン 召使い、下僕」を意味する言葉からくる。「仕える、「仕える」ということが「治療する、いやす」の中心的な行為である。
イエスは人間の病や苦悩に「仕え」られる。イエスのところに運ばれた「病」のことごとくが「癒された(完治した)」のではない。病には「癒され得ぬ病」がある。しかし、それゆえにこそ、イエスはそれらを身に負い、それらに「仕えられる」のである。
† 心のデボーション
「イエス之を醫したまふ」 マタイ4:24 大正文語訳聖書
「イエズスは彼らをお治しになった」 フランシスコ会訳聖書
「アブガル王」
伝説によると、病にかかったエデッサのアブガル5世は、自分の病を癒してくれるようにイエスに手紙を記し王宮秘書官に託してイエスの元へ送った。これに対してイエスは返書を返し、自分がこの世での使命を終えた後、弟子の1人を遣わすだろうと、告げたという。イエスの磔刑と復活の後、弟子の1人タダイがエデッサを訪れ、アブガル王の病を癒し、王は洗礼を受け「最初のキリスト教王」になったという(10世紀頃に描かれた絵画には、イエスの顔が浮き上がった聖骸布を持つアブガル王が描かれている)。 この伝説はイエスの評判がシリアにも届いたことを物語っている。
† 心のデボーション
「その噂あまねくシリヤに弘り、人々すべての惱めるもの、即ちさまざまの病と苦痛とに罹れるもの、惡鬼に憑かれたるもの、癲癇および中風の者などを連れ來りたれば、イエス之を醫したまふ」 マタイ4:24 大正文語訳聖書
「そこで、イエズスの評判は全シリアに広まり、人々は、さまざまな病気や苦しみに悩んでいる者、悪魔につかれている者、てんかん、中風の人など、あらゆる病人をイエズスのもとに連れて来た。イエズスは彼らをお治しになった」 フランシスコ会訳聖書
「色とりどりの苦しみ」
「いろいろな病気や苦しみに悩む者」 「いろいろな ποικίλος ポイキろス」は「色とりどりの、さまざまな、多様な」。「悩む βασάνοις συνεχομένους」は「βάσανος バサノス 地獄の責め苦」に「συνέχω スネコー 一緒にしておく、離れぬように固まって保つ、まわりから圧迫する、身動き出来ぬようにこみあう、~にしばられている」状態。
色とりどりの「苦しみ」にかこまれ、「試練の黒い石」に身動きとれぬよう固定されてしまった人々である。
† 心のデボーション
「その噂あまねくシリヤに弘り、人々すべての惱めるもの、即ちさまざまの病と苦痛とに罹れるもの、惡鬼に憑かれたるもの、癲癇および中風の者などを連れ來りたれば、イエス之を醫したまふ」 マタイ4:24 大正文語訳聖書
「そこで、イエズスの評判は全シリアに広まり、人々は、さまざまな病気や苦しみに悩んでいる者、悪魔につかれている者、てんかん、中風の人など、あらゆる病人をイエズスのもとに連れて来た。イエズスは彼らをお治しになった」 フランシスコ会訳聖書
「宿痾(しゅくあ)の友」
人々がイエスに連れてきたのは宿痾(しゅくあ)に悩む人々であった。治らぬ病を宿した人たちである。同じ病に沈むのでなければ、その苦しみはわからない。イエスは「宿痾(しゅくあ)の友」となられた。
† 心のデボーション
「イエス之を醫したまふ」 マタイ4:24 大正文語訳聖書
「イエズスは彼らをお治しになった」 フランシスコ会訳聖書
「昼間に受けた傷」
昼間に受けた傷は今日のうちに癒されよ。イエス癒し給う。
† 細き聲 説教
「隠喩としての病」
「その噂あまねくシリヤに弘り、人々すべての惱めるもの、即ちさまざまの病と苦痛とに罹れるもの、惡鬼に憑かれたるもの、癲癇および中風の者などを連れ來りたれば、イエス之を醫したまふ」 マタイ4:24 大正文語訳聖書
「そこで、イエズスの評判は全シリアに広まり、人々は、さまざまな病気や苦しみに悩んでいる者、悪魔につかれている者、てんかん、中風の人など、あらゆる病人をイエズスのもとに連れて来た。イエズスは彼らをお治しになった」 フランシスコ会訳聖書
イエスの教えは人々を深くとらえ、その評判は遠くガリラヤの北方の国シリアにまでひろまった。人々は癒すことの困難な病に苦しむ者たちをイエスの所に連れてきた。そして、イエスはそれらの人々を癒された。
マタイは人々が連れてきた人々を注意深く観察し、どのような病であったかを記録している。
それらの病には身体的な疾患と霊的なものが引き起こすと思われた苦悩も含まれていた。
しかし、マタイの記録した「病」のリストは必ずしも現代の医学が分類する「病」と一致するものではない。また、「病」には、時代によってある意味を象徴することが伴うように、イエスの時代と現代では同じ名前の病にも異なる意味が付加されていることも注意深く見なければならない。
例えば、マタイの記録した「てんかん」と訳された「σεληνιάζομαι セれーニアゾマイ」は「月、月光」を意味する言葉「σελήνη セレーネー」からきており、「月の影響をこうむる、月に行く、月の力のとりこになる」などの意味をもつ。当時は「てんかん」を患う人が「σεληνιάζομαι セれーニアゾマイ」とされたのである。
どの時代にも「隠喩としての病」が存在する。人間の力の及ばない世界が開けるとき、人々はそれへの恐れを「隠喩としての病」に重ねて見るのである。「てんかん」「ライ病」「ペスト」「結核」「エイズ」「がん」等、「隠喩としての病」は時代とともに変わる。人々はキリストのところに「てんかんを患う人」を運んできた。人々があたかも神への「ささげもの」のように運んだのは「人間の力の及ばない世界が開けることへの恐れ」ではなかったか。
「隠喩としての病」に選ばれ、「病」の苦しみに加えて、いわれなき「苦悩」を背負わされた人々は不幸であった。これらの人々にたいして、長きにわたって人々の苦悩を負わせてきたとすれば、教会は過去の歴史への責任を負うものである。
そして、我々は人間に「隠喩としての病」のあることを重く考え、その意味するところを癒し主であるイエスに尋ねることをしなければならない。教会は「病」の本質を常に正しく見つめなければならない。
われわれは「病」に象徴される「死への恐怖」そのものをイエスのもとに運ぶのである。
(皆川誠)
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