† 福音書縦観 「荒野の試み」 マタイ4:1~11
マタイ4:1~11 マルコ1:12~13 ルカ4:1~13
マタイ4:1~11
Matt.4:8 次に悪魔は、イエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華とを見せて (4:5それから、悪魔はイエスを高い所へ連れて行き、またたくまに世界のすべての国々を見せて ルカ4:5) 口語訳聖書
† 日本語訳聖書 Matt.4:8
【漢訳聖書】
Matt.4:8 魔鬼復攜之至高之山、將天下諸國、以及其榮、示之、
【明治元訳】
Matt.4:8 惡魔(あくま)また彼(かれ)を最(いと)高(たか)き山(やま)に携(たづさ)へゆき世界(せかい)の諸國(くにぐに)とその榮華(えいぐわ)とを見(み)せて
【大正文語訳】
Matt.4:8 惡魔またイエスを最高き山につれゆき、世のもろもろの國と、その榮華とを示して言ふ、
【ラゲ訳】
Matt.4:8 惡魔又彼を携へて最高き山に行き、世の諸國と其榮華とを示して、
【口語訳】
Matt.4:8 次に悪魔は、イエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華とを見せて
【新改訳改訂3】
Matt.4:8 今度は悪魔は、イエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華を見せて、
【新共同訳】
Matt.4:8 更に、悪魔はイエスを非常に高い山に連れて行き、世のすべての国々とその繁栄ぶりを見せて、
【バルバロ訳】
Matt.4:8 悪魔は彼を非常に高い山に連れていき、世のすべての国とその栄華を見せ、
【フランシスコ会訳】
Matt.4:8 また悪魔は、イエズスを非常に高い山に連れて行き、世のすべての国々とそのはなやかさとを見せて、
【日本正教会訳】
Matt.4:8 惡魔復(また)彼を攜(たづさ)へて、最高(いとたか)き山に至り、世界の萬國(ばんこく)と其榮華(えうぐわ)とを示して、
【塚本虎二訳】
Matt.4:8 悪魔はまたイエスを非常に高い山に連れてゆき、世界中の国々と、栄華とを見せて
【前田護郎訳】
Matt.4:8 また悪魔は彼をいと高き山に連れ行き、世のすべての王国とその繁栄を彼に示していった、
【永井直治訳】
Matt.4:8 復た惡魔、彼を甚だ高き山に携へ〔往けり〕。かくて此の世のすべての國々とその榮光とを彼に見(あら)はし、
【詳訳聖書】
Matt.4:8 悪魔はまたイエスを非常に高い山に連れて行った。そしてこの世のすべての王国とその栄誉<光輝、壮大、卓越、すばらしさ>を彼に示した。
† 聖書引照 Matt.4:8
Matt.4:8 惡魔またイエスを最高き山につれゆき、世のもろもろの國と、その榮華とを示して言ふ、
[惡魔イエスを最高き山につれゆき] マタ4:5; ルカ4:5~7
[世のもろもろの國と、その榮華とを示して言ふ] マタ16:26; エス1:4; 5:11; 詩篇49:16,17; ダニ4:30; ヘブ11:24~26; Ⅰペテ1:24; Ⅰヨハ2:15,16; 黙示11:15
† ギリシャ語聖書 Matt.4:8
Stephens 1550 Textus Receptus
παλιν παραλαμβανει αυτον ο διαβολος εις ορος υψηλον λιαν και δεικνυσιν αυτω πασας τας βασιλειας του κοσμου και την δοξαν αυτων
Scrivener 1894 Textus Receptus
παλιν παραλαμβανει αυτον ο διαβολος εις ορος υψηλον λιαν και δεικνυσιν αυτω πασας τας βασιλειας του κοσμου και την δοξαν αυτων
Byzantine Majority
παλιν παραλαμβανει αυτον ο διαβολος εις ορος υψηλον λιαν και δεικνυσιν αυτω πασας τας βασιλειας του κοσμου και την δοξαν αυτων
Alexandrian
παλιν παραλαμβανει αυτον ο διαβολος εις ορος υψηλον λιαν και δεικνυσιν αυτω πασας τας βασιλειας του κοσμου και την δοξαν αυτων
Hort and Westcott
παλιν παραλαμβανει αυτον ο διαβολος εις ορος υψηλον λιαν και δεικνυσιν αυτω πασας τας βασιλειας του κοσμου και την δοξαν αυτων
† ギリシャ語聖書 Interlinear
Matt.4:8
Πάλιν παραλαμβάνει αὐτὸν ὁ διάβολος εἰς ὄρος ὑψηλὸν λίαν καὶ δείκνυσιν αὐτῷ πάσας τὰς βασιλείας τοῦ κόσμου καὶ τὴν δόξαν αὐτῶν
Πάλιν παραλαμβάνει αὐτὸν ὁ διάβολος εἰς ὄρος ὑψηλὸν λίαν
Again, takes him the devil to a mountain high exceedingly,
καὶ δείκνυσιν αὐτῷ πάσας τὰς βασιλείας τοῦ κόσμου καὶ τὴν δόξαν αὐτῶν
and shows him all the kingdoms of the world, and the glory of them;
† ギリシャ語聖書 品詞色分け
Matt.4:8
Πάλιν παραλαμβάνει αὐτὸν ὁ διάβολος εἰς ὄρος ὑψηλὸν λίαν καὶ δείκνυσιν αὐτῷ πάσας τὰς βασιλείας τοῦ κόσμου καὶ τὴν δόξαν αὐτῶν
† ラテン語聖書 Matt.4:8
Latin Vulgate
Matt.4:8
Iterum assumpsit eum diabolus in montem excelsum valde: et ostendit ei omnia regna mundi, et gloriam eorum,
Again, the devil took him up, onto a very high mountain, and showed him all the kingdoms of the world and their glory,
† ヘブライ語聖書 Matt.4:8
Matt.4:8
לָקַח אוֹתוֹ הַשָֹטָן לְהַר גָּבוֹהַ מְאֹד וְהֶרְאָה לוֹ אֶת כָּל מַמְלְכוֹת תֵּבֵל וּכְבוֹדָן
† 私訳(詳訳)Matt.4:8
【私訳】 「また、悪魔<中傷者、偽って告訴する者、サタン>は彼〔イエス〕を非常に<抜きんでて、はなはだしく>高い山に連れて行き、この世のあらゆる国々<権威、統治、支配、王位、主権、王権、王国、王権>と、その輝き<考え、思い、意見、見解、判断、信念、誉れ、壮大、栄光>を見せ<指し示す、開示し、あらわし、明らかにし、見せつけ>て」
† 新約聖書ギリシャ語語句研究
Matt.4:8
Πάλιν παραλαμβάνει αὐτὸν ὁ διάβολος εἰς ὄρος ὑψηλὸν λίαν καὶ δείκνυσιν αὐτῷ πάσας τὰς βασιλείας τοῦ κόσμου καὶ τὴν δόξαν αὐτῶν
【更に】 Πάλιν πάλιν パりン palin {pal‘-in} (ab 副詞)
1)逆の方向に、引き返して 2)元に、元の方向に、戻って、また、再び、~とも 3)後ろに 4)もう一度、こんどは、他方では
【悪魔は】 διάβολος διάβολος ディアボろス diabolos {dee-ab‘-ol-os } (ap-nm-s 形容詞・主男単)
< διάβαλλω 中傷する < διά + βόλος 投網を投げる
1)悪く言いふらす、偽って告訴する者、中傷する 2)中傷者、誹謗者 3)悪魔
マタ4:1,5,8,11; 13:39; 25:41; ルカ2,3,55,13; 8:12; ヨハ6:70; 8:44; 13:2 etc.
【非常に】 λίαν λίαν りアン lian {lee‘-an} (ab 副詞)
1)非常に 2)はなはだしく 3)あまりに 3)まったく 4)絶対に 5)確かに
【高い】 ὑψηλὸν ὑψηλός ヒゆプセーロス hupsēlos {hoop-say-los‘} (a–an-s 形容詞・対中単)
1)高い、高くそびえ立つ 2)崇高な、身分の高い、位の高い 3)抜きんでた、高慢な、おごり高ぶる
マタ4:8; 17:1: マル9:2; ヘブ1:3; 7:26; 黙示21:10,12
【山】 ὄρος ὄρος オロス oros {or‘-os} (n-an-s 名詞・対中単)
1)境界 2)国境 3)山、丘 4)限られた場所、限界、限度 5)境界の標柱、柵 6)基準
マタ4:8; 5:1,14; 8:1; 14:23; 15:29; 17:1,9,20; 18:12; 21:1,21; 24:3,16; 26:30; 28:16; マル3:13; 5:5,11;6:46; 9:2,9; 11:1,23: 13:3,14: 14:26 etc.
【に】 εἰς εἰς エイス eis {ice} (pa 前置詞・対)
1)~の中へ 2)~へ 3)~まで 4)~のために 5)~に対して 6)~に向かって 7)~を目標にして 8)の間に
【彼を】 αὐτὸν αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npam3s 代名詞・対男3)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
【連れて行き】 παραλαμβάνει παραλαμβάνω パラらムバノー paralambanō {par-al-am-ban‘-o} (vipa–3s 動詞・直・現・能・3単)
< παρά 傍らに + λαμβάνω 掴む
1)受け入れる、引き継ぐ、受け継ぐ、継承する、引き受ける、受け取る、受ける 2)相続する、わがものにする 3)配偶者を受け入れる、みとめる、共に連れて行く 4)連れ出す、連れて行く 5)取り去る、取り上げる
マタ1:20,24; 17:1; 26:37; マル4:36; 5:40; 7:4; ルカ9:10; ヨハ1:11; Ⅰコリ11:23; 15:1,3; ガラ1:9,12; ピリ4:9; コロ2:4; 4:17; Ⅰテサ2:13; 4:1; Ⅱテサ3:6; ヘブ12:28; etc.
【そして】 καὶ καί カイ kai {kahee} (cc 接続詞・等位)
1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた
【世の】 κόσμου κόσμος コスモス kosmos {kos‘-mos } (n-gm-s 名詞・属男単)
1)秩序ある世界、整然としていること、折り目正しさ、慎み深い、まっとうな 2)政治 3)飾り、美しさ、名誉、栄光 4)宇宙、天空、星 5)世界、この世
マタ4:8; 5:14; 18:7; 24:21; 25:34; ルカ11:50; 12:30; ヨハ1:9,10,29; 3:16,17,19; 4:42; 6:14,33,51; 7:4,7;8:12,23,26; 9:5,39; 10:36; 11:9,27; 12:19,25,31,46,47; 13:1; 14:17,19,22,27,30,31;15:18,19;16:8,11,20,21,28,33; 17:5; 18:20,36,37 etc.
【すべての】 πάσας πᾶς パース pas {pas} (a–af-p 形容詞・対)
1)どれでも、何であれ、何でも、あらゆる、みな 2)~全部の、あらんかぎりの、1つも欠けが無い、ひとり残らず 3)全体の、全部の、すべて 4)混じりものがなく、純粋な
πᾶσαι パーサイ 「πᾶς どれでも、全体の」の複数形
【国々】 βασιλείας βασιλεία バシれイア basileia {bas-il-i‘-ah} (n-af-p 名詞・対女複)
1)統治、支配、王位、主権 2)王権、王国、王権
「天の国」は「神の支配」を意味する
マタ6:33; 12:25; 21:31; 24:7; 25:34; 26:29; マル1:15; 11:10; 13:8; 14:25; ルカ4:43; 9:62; 11:17;13:18;17:21: 18:29; 21:25 ヨハ3:3; 18:36 etc.
【と】 καὶ καί カイ kai {kahee} (cc 接続詞・等位)
1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた
【その】 αὐτῶν αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npgn3p 代名詞・属男3)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
【繁栄ぶりを】 δόξαν δόξα ドクサ doxa {dox‘-ah} (n-af-s 名詞・対女単)
1)考え、思い、意見、見解、判断、信念 2)評価、評判、好評、名声、名誉、誉れ 3)賛美、栄光、栄華、輝き、壮麗、壮大
マタ4:8; 16:27; 19:28; 24:30; 25:31; マル8:38; 10:37; 13:26; ルカ2:9,14,32; 9:20,31,32; 17:18; 19;38;21:27; 24:26 etc.
【彼に】 αὐτῷ αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npdm3s 代名詞・与男3)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
【見せ】 δείκνυσιν δεικνύω デイクヌゆオー deiknuō {dike-noo‘-o} (vipa–3s 動詞・直・現・能・3単)
1)指し示す、示す、見せる、教える 2)立証する、明らかにする、証拠を見せる 3)目の前に出してみせる、提示する、見せつける、誇示する 4)告発する
マタ4:8; 16:21; ルカ4:5; 24:40; ヨハ2:18; 5:20; 10:32; 14:8,9; etc.
† 英語訳聖書 Matt.4:8
King James Version
4:8 Again, the devil taketh him up into an exceeding high mountain, and sheweth him all the kingdoms of the world, and the glory of them;
American Standard Version
4:8 Again, the devil taketh him unto an exceeding high mountain, and showeth him all the kingdoms of the world, and the glory of them;
New International Version
4:8 Again, the devil took him to a very high mountain and showed him all the kingdoms of the world and their splendor.
Bible in Basic English
4:8 Again, the Evil One took him up to a very high mountain, and let him see all the kingdoms of the world and the glory of them;
Darby’s English Translation
4:8 Again the devil takes him to a very high mountain, and shews him all the kingdoms of the world, and their glory,
Douay Rheims
4:8 Again the devil took him up into a very high mountain, and shewed him all the kingdoms of the world, and the glory of them,
Noah Webster Bible
4:8 Again, the devil taketh him up upon an exceeding high mountain, and showeth him all the kingdoms of the world, and the glory of them,
Weymouth New Testament
4:8 Then the Devil took Him to the top of an exceedingly lofty mountain, from which he caused Him to see all the Kingdoms of the world and their splendour,
World English Bible
4:8 Again, the devil took him to an exceedingly high mountain, and showed him all the kingdoms of the world, and their glory.
Young’s Literal Translation
4:8 Again doth the Devil take him to a very high mount, and doth shew to him all the kingdoms of the world and the glory of them,
Amplified Bible
4:8 Again, the devil took Him up on a very high mountain and showed Him all the kingdoms of the world and the glory [splendor, magnificence, and excellence] of them;
† 細き聲 聖書研究ノート
<惡魔またイエスを最高き山につれゆき、世のもろもろの國と、その榮華とを示して言ふ>
サタンは第二の誘惑も退けられ、次にイエスを「高き山」に誘い、そこから人間の住む世界を見せて言った。
<高い山>
「世のすべての国々」にローマ帝国を含むとすれば、その繁栄を見渡せるほどの「高い山」は存在しない。悪魔が世の国々とその繁栄を見せる「山」である。それは地上のどの山よりも抜きん出て高い。
<栄光と誉れ>
「繁栄 δόξα ドクサ」は「誉れ、栄光」の意味。 悪魔は「世界の国々の δόξα ドクサ」を「神の δόξα ドクサ」として、イエスの「目の前に描き出し、立証して」見せようとしたのかもしれない。あらゆる「誉れ」は、それが「神のドクサ」と重ねることで、永遠性を獲得する。しかし、そこにはサタンの「わたしを拝め」が隠されている。
† 心のデボーション
「惡魔またイエスを最高き山につれゆき、世のもろもろの國と、その榮華とを示して言ふ」 マタイ4:8 大正文語訳聖書
「また悪魔は、イエズスを非常に高い山に連れて行き、世のすべての国々とそのはなやかさとを見せて」 フランシスコ会訳聖書
「高い山」
「世のすべての国々」にローマ帝国を含むとすれば、その繁栄を見渡せるほどの「高い山」は存在しない。悪魔が世の国々とその繁栄を見せる「山」である。それは地上のどの山よりも抜きん出て高い。
異常な高さは、異常な低さと同じに危険である。あり得ない高みから見えるのは、あり得ない「国々」とその「栄華」である。だが、人は若いときばかりでなく、老いてからでもそれを見ることができてしまう。
異常な高さに行く者は、異常な低さにも下っている。
† 心のデボーション
「われ詔命(みことのり)をのべんヱホバわれに宣まへり なんぢはわが子なり今日われなんぢを生り。われに求めよ さらば汝にもろもろの國を嗣業(ゆづり)としてあたへ地の極(はて)をなんぢの有(もの)としてあたへん」 詩篇2:7~8 明治元訳聖書
「主のさだめられたところに従ってわたしは述べよう。主はわたしに告げられた。『お前はわたしの子、今日、わたしはお前を生んだ。求めよ。わたしは国々をお前の嗣業とし地の果てまで、お前の領土とする』」 新同訳聖書
「悪魔の囁き」
詩篇2:7~8は神がイエスに与えたことばである。そこで悪魔は詩篇2:7~8から、イエスに「なんぢはわが子なり今日われなんぢを生り」と告げ、その上で、「われに求めよ さらば汝にもろもろの國を嗣業(ゆづり)としてあたへ地の極(はて)をなんぢの有(もの)としてあたへん」と約束するのである。
悪魔は自分に従いさえするなら、神が与えると同じ祝福を与えようと誘惑する。それはすべての偽りの中で最大のものである。
悪魔が「なんぢはわが子なり今日われなんぢを生り」と囁く声を聞いたら、たとえそれが「もろもろの國」と「地の極(はて)」の所有と引換であっても、聞いてはならぬ。
† 心のデボーション
「われは光をつくり又くらきを創造す われは平和をつくりまた禍害をさうざうす 我はヱホバなり 我すべてこれらの事をなすなり」 イザヤ45:7 明治元訳聖書
「光を造り、闇を創造し、平和をもたらし、災いを創造する者。わたしが主、これらのことをするものである」 新共同訳聖書
「繁栄への誘惑」
平家物語の冒頭に「驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」とある。だが、それが教訓になったことはない。「驕り」のない「繁栄」はなく、永続する「繁栄」もない。しかし、人の心から繁栄への誘惑が消えることはない。
† 心のデボーション
「惡魔またイエスを最高き山につれゆき、世のもろもろの國と、その榮華とを示して言ふ」 マタイ4:8 大正文語訳聖書
「また悪魔は、イエズスを非常に高い山に連れて行き、世のすべての国々とそのはなやかさとを見せて」 フランシスコ会訳聖書
「栄華」
「栄華」は「栄花」とも書く。「華」は「丸い花」をさし、草木の花が美しく咲くさまをあらわす。中国では「中華人民共和国」のように、「中華」を漢民族の自称として中国、中国人を指した。「華」に対して他国は「夷 い(背の低い人)」である。
しかし、「華」はいくら美しくも、やがて散るもので、その繁栄はすぐ醒める「栄華の夢」である。
† 細き聲 説教
「高い山」
「惡魔またイエスを最高き山につれゆき、世のもろもろの國と、その榮華とを示して言ふ」 マタイ4:8 大正文語訳聖書
荒野の試みで、サタンはイエスを「聖なる都」に連れて行き、「神殿の頂き」に立たせ、「汝もし神の子ならば己が身を下に投げよ」と誘惑した。
「神殿の頂き」での誘惑に失敗すると、サタンはイエスを「この世のすべての国々を見渡せる高い山」に連れて行き、その栄華を見せて「汝もし平伏して我を拜せば、此等を皆なんぢに與へん」と誘惑する。
先の「聖なる都」はエルサレムであり、「神殿」はソロモンの神殿である。サタンはイエスを現実の神殿の屋根に連れて行く。
次の「高い山」は「この世のすべての国々を見渡せる山」で、「この世の国々」がローマ帝国を指すならば、それほどの「高い山」は存在しない。サタンは先の「現実の場」から、次にはこの世には存在しない非現実的な場所にイエスを立たせる。
サタンは人を現実の場に立たせ、それを凝視させ誘惑する。そして、さらに人を非現実的な「高い山」に登らせ決して見ることのできない「栄華」を見るようにと誘惑する。
エルサレムの神殿の屋根に連れて行かれるならば、その高さに目がくらみ、誘惑の意図に気づくかもしれない。しかし、「この世のすべての国々を見渡せる山」に登ることはさほど難しくない。そればかりか、その光景は心地よく、目がくらむこともない。いつしか、それがもう一つの現実になるとき、サタンの誘惑は成功する。
(皆川誠)
† 細き聲 説教
「世の繁栄」
「惡魔またイエスを最高き山につれゆき、世のもろもろの國と、その榮華とを示して言ふ」 マタイ4:8 大正文語訳聖書
サタンがイエスに見せた「世の栄華」とはなんであろうか。
兵をもって世界を支配するローマの繁栄であり、大理石をもちい金の装飾がなされ『太陽に輝く雪山』と例えられたヘロデの神殿の繁栄であったろう。
その神殿はやがてローマによってわずかの壁をのこして陥落し、ローマ帝国も東西に分裂し、ゲルマン人の侵入などによって滅亡する。
「世の栄華」とは征服と滅亡にもかかわらず求めて止まない「人間の欲望」であろうか。
サタンはイエスを「人間の欲望」の長とし、その上に永遠の「神の国」を建てよと誘惑するのだろうか。それこそが神の創られた人間の祈りではないかと。
神を信じるものは、あらゆる形で「栄華への欲望」を手放さなければならない。
(皆川誠)
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