マタイによる福音書2章14節

マタイによる福音書
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† 福音書対観 「エジプト避難と幼児殺戮」 マタイ2:13~18

マタイ2:13~18

Matt.2:14そこで、ヨセフは立って、夜の間に幼な子とその母とを連れてエジプトへ行き、 2:15ヘロデが死ぬまでそこにとどまっていた。それは、主が預言者によって「エジプトからわが子を呼び出した」と言われたことが、成就するためである。 口語訳聖書

† 日本語訳聖書 Matt.2:14

【漢訳聖書】
Matt. 2:14 約瑟遂起、夜間挈嬰兒與其母、而往埃及、

【明治元訳】
Matt. 2:14 ヨセフ起(おき)て夜(よる)嬰兒(をさなご)と其(その)母(はは)とを挈(たづさ)へエジプトに往(ゆき)

【大正文語訳】
Matt. 2:14 ヨセフ起きて、夜の間に幼兒とその母とを携へて、エジプトに去りゆき、

【ラゲ訳】
Matt. 2:14 ヨゼフ起きて孩兒と其母とを携へて夜エジプトに避け、

【口語訳】
Matt. 2:14 そこで、ヨセフは立って、夜の間に幼な子とその母とを連れてエジプトへ行き、

【新改訳改訂3】
Matt.2:14 そこで、ヨセフは立って、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトに立ちのき、

【新共同訳】
Matt. 2:14 ヨセフは起きて、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトへ去り、

【バルバロ訳】
Matt. 2:14 ヨゼフは起きて、夜のうちに子どもとその母を連れてエジプトに逃れ、

【フランシスコ会訳】
Matt. 2:14 ヨセフは起きて、夜のうちに幼な子とその母とを連れてエジプトに逃れ、

【日本正教会訳】
Matt. 2:14 彼 起きて、 夜間 嬰兒と 其母とを 携へて、 エギペトに 往き、

【塚本虎二訳】
Matt. 2:14 そこでヨセフは起きて、夜のあいだに幼児とその母とを連れてエジプトに立ちのき、

【前田護郎訳】
Matt. 2:14 彼は起きて、夜のうちに幼子と母を伴ってエジプトへ立ち去った。

【永井直治訳】
Matt. 2:14 乃ち彼は起きて夜に乘じ、幼兒とその母とを携へてエジプトに立ち退けり。

【詳訳聖書】
Matt. 2:14 ヨセフは、起きて、夜の間に幼子とその母を連れてエジプトへ去り、

† 聖書引照 Matt. 2:14

Matt. 2:14 ヨセフ起きて、夜の間に幼兒とその母とを携へて、エジプトに去りゆき、

[ヨセフ起きて、夜の間に幼兒とその母とを携へて、エジプトに去りゆき]マタ2:20,21; 1:24; 使徒26:21

† ギリシャ語聖書 Matt. 2:14

Stephens 1550 Textus Receptus
ο δε εγερθεις παρελαβεν το παιδιον και την μητερα αυτου νυκτος και ανεχωρησεν εις αιγυπτον

Scrivener 1894 Textus Receptus
ο δε εγερθεις παρελαβεν το παιδιον και την μητερα αυτου νυκτος και ανεχωρησεν εις αιγυπτον

Byzantine Majority
ο δε εγερθεις παρελαβεν το παιδιον και την μητερα αυτου νυκτος και ανεχωρησεν εις αιγυπτον

Alexandrian
ο δε εγερθεις παρελαβεν το παιδιον και την μητερα αυτου νυκτος και ανεχωρησεν εις αιγυπτον

Hort and Westcott
ο δε εγερθεις παρελαβεν το παιδιον και την μητερα αυτου νυκτος και ανεχωρησεν εις αιγυπτον

† ギリシャ語聖書 品詞色分け

Matt. 2:14

ὁ δὲ ἐγερθεὶς παρέλαβεν τὸ παιδίον καὶ τὴν μητέρα ατοὐῦ νυκτὸς καὶ ἀνεχώρησεν εἰς Αἴγυπτον,

† ヘブライ語聖書Matt. 2:14

Matt. 2:14

הוּא קָם וְלָקַח אֶת הַיֶּלֶד וְאֶת אִמּוֹ בַּלַּיְלָה וְיָצָא לְמִצְרַיִם.

† ラテン語聖書Matt. 2:14

Latin Vulgate
Matt. 2:14

Qui consurgens accepit puerum, et matrem eius nocte, et secessit in Ægyptum:
And getting up, he took the boy and his mother by night, and withdrew into Egypt.

† 私訳(詳訳)Matt. 2:14

【私訳】 「そして、彼〔ヨセフ〕は眠りから目覚めて<呼び起こされて、立ち上がって>、その夜のうちに幼子とその母を連れて、そして、エジプトに去り<立ち退き、危険を避けて逃れ>」

† 新約聖書ギリシャ語語句研究

Matt. 2:14

ὁ δὲἐγερθεὶςπαρέλαβεν τὸ παιδίονκαὶ τὴν μητέρα ατοὐῦ νυκτὸςκαὶἀνεχώρησεν εἰς Αἴγυπτον,

【また】 δὲδέデ de {deh} (ch 接続詞・完)

1)ところで、しかし、さて、そして 2)しかも、そしてまた、なお、すると、また 3)次に、さらに 4)否、むしろ

【ヨセフは】 ὁ δ ὲἐγερθεςὶ 

【起きて】 ἐγερθεςὶἐγείρωエゲイローegeirō {eg-i‘-ro} (vpapnm-s 分詞・1アオ受主男単)

1)眠りからさます、おこす、めざめさせる、目を覚ます、呼び起こす、起こす、立ち上がる 2)動かす、刺激する 3)甦らせる、復活する、生き返らす

マタ1:24; 2:13,14,20, 21; 11:11; 8:15,26; 11:5; 25:7; 26:46;マル4:27; 5:41; 14:42;使徒3:15; 12:7;ロマ13:11;エペ1:20; 5:14コロ2:12;Ⅰテサ1:10 etc.

【夜のうちに】 νυκτςὸνύξヌゆクスnux {noox} (n-gf-s 名詞・属女単)

1)夜 2)暗闇 3)闇

マタ2:14;ヨハ9:4; 11;10;使徒16:9; 18:9; 20:31; ロマ13:12;Ⅰテサ2:9; 3:10; 5:5;Ⅰテモ5:5;Ⅱテモ1:3黙示7:15; 8:12; 22:5

【幼児】 παιδίονπαιδίονパイディオン paidion {pahee-dee‘-on} (n-an-s 名詞・対中単)

1)小さな子ども、生まれたての子、幼児、幼子2)少年、少女 3)しもべ、奴隷

「παῖς 子ども」の指小詞

マタ2:8,9,11,13,14,20,21;マル5:39; 9:24,36,37; 10:15;ルカ9:47,48; 18:17;ヨハ4:49 etc.

【と】 καὶκαί カイ kai {kahee} (cc 接続詞・等位)

1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた

【その】 ατοὐῦαὐτόςアウトス autos {ow-tos‘}(npgm3s 代名詞・属男3)

1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど

【母を】 μητέραμήτηρメーテール mētēr {may‘-tare} (n-af-s 名詞・対女単)

1)母、生みの親 2)子宮、母胎、胎内 3)祖国、故郷

マタ1:18; 2:11; 12:49,50マル3;35;ヨハ19:27;ロマ16:13;ガラ4:26;Ⅰテモ5:2;黙示12:5

【連れて】 παρέλαβενπαραλαμβάνωパラらムバノーparalambanō {par-al-am-ban‘-o} (viaa–3s 動詞・直・2アオ・能・3単)

< παρά傍らに + λαμβάνω掴む

1)受け入れる、引き継ぐ、受け継ぐ、継承する、引き受ける、受け取る、受ける 2)相続する、わがものにする 3)配偶者を受け入れる、みとめる、共に連れて行く 4)連れ出す、連れて行く 5)取り去る、取り上げる

マタ1:20,24; 17:1; 26:37;マル4:36; 5:40; 7:4;ルカ9:10;ヨハ1:11;Ⅰコリ11:23; 15:1,3;ガラ1:9,12; ピリ4:9; コロ2:4; 4:17;Ⅰテサ2:13; 4:1;Ⅱテサ3:6;ヘブ12:28; etc.

【そして】 καὶκαί カイ kai {kahee} (cc 接続詞・等位)

1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた

【エジプト】 ΑγυπτονἴΑἴγυπτοςアイグゆプトス Aiguptos {ah‘ee-goop-tos} (n-af-s 名詞・対女単)

エジプト

はじめはナイル河を呼ぶ名であったが、後に国を指すようになった。

マタ2:13,14,15,19;使徒2:10; 7:9,10,11,12,15,17,18,34,36,39,40; 13:17; ヘブ3:16; 8:9; 11:26,27ユダ5黙示8:27

【へ】 εςἰεἰς エイスeis {ice}(pa 前置詞・対)

1)~の中へ 2)~へ 3)~まで 4)~のために 5)~に対して 6)~に向かって 7)~を目標にして 8)の間に

【去り】 ἀνεχώρησενἀναχωρέωアナこーレオーanachōreō {an-akh-o-reh‘-o} (viaa–3s 動詞・直・1アオ・能・3単)

< ἀνά戻る +χωρέω 進む

1)戻る、帰る、去る、後ずさりする、退く 2)退却する、引き下がる 3)危険を避けて逃れ去る、人目を避けて去る

マタ2:12,14; 4:12; 9:24; 14:13; 15:21 マル2:12,13,14; 12:15; 27:5; ヨハ6:15

† 英語訳聖書 マタイ2:14

King James Version
2:14 When he arose, he took the young child and his mother by night, and departed into Egypt:

American Standard Version
2:14 And he arose and took the young child and his mother by night, and departed into Egypt;

New International Version
2:14 So he got up, took the child and his mother during the night and left for Egypt,

Bible in Basic English
2:14 So he took the young child and his mother by night, and went into Egypt;

Darby’s English Translation
2:14 And, having arisen, he took to him the little child and his mother by night, and departed into Egypt.

Douay Rheims
2:14 Who arose, and took the child and his mother by night, and retired into Egypt: and he was there until the death of Herod:

Noah Webster Bible
2:14 When he arose, he took the young child and his mother by night, and departed into Egypt:

Weymouth New Testament
2:14 So Joseph roused himself and took the babe and His mother by night and departed into Egypt.

World English Bible
2:14 He arose and took the young child and his mother by night, and departed into Egypt,

Young’s Literal Translation
2:14 And he, having risen, took the child and his mother by night, and withdrew to Egypt,

Amplified Bible
2:14 So Joseph got up and took the Child and His mother while it was still night, and left for Egypt.

† 細き聲 聖書研究ノート

<ヨセフ起きて、夜の間に幼兒とその母とを携へて、エジプトに去りゆき>

ヨセフは眠りから覚めると、ヘロデ王の幼児殺害から逃れるために、その夜のうちに、妻マリヤと幼子イエスを連れてエジプトに急いだ。

<エジプト逃避行>

エジプトまでは直線にして500㎞あり、誕生したばかりのイエスを連れての逃避行は困難を極めたろう。当時エジプトにはユダヤ人共同体が多数あり、ヨセフたちの旅を助け、エジプトでの滞在を援助したと思われる。

<エジプト逃亡>

ヨセフとマリヤがエジプトのどこに逃れたかはわからない。当時のエジプトには100万人ものユダヤ人が居住していたと言われている。エジプト第二の都市アレクサンドリア Ακεξάνδρεια には世界各地から詩人や学者が集まるムーセイオンやアレクサンドリア図書館があり、「世界の結び目」と呼ばれている。ヨセフとマリヤもアレクサンドリアに逃れたのかもしれない。彼らのエジプトへの逃亡は苦難に満ちていたが孤独なものではなかったろう。

<夜の出発>

ヨセフはその夜のうちに行動を起こす。真の「行動」は「時」を知っている。「時」にうながされたらたとえ「夜」でも出発しなければならない。しかし、出発は通常朝であって、「夜」の出発は特別の時である。

<静思の人>

ヨセフは思索の人で物事を慎重に受け止めて判断する人であったが、この時の行動は素早く大胆である。「静思の人」は「行動と決断の人」でもある。

<現実の中で>

「信じる」は「現実を知る」ことである。信仰はいかなる「現実」も恐れず、避けない。「今ここ」の緊張感に生きる。人が神を見出すのは「現実」の中しかない。

<強盗ディスマスとイエス>

イエスが十字架にかけられたとき、二人の強盗が共に処刑されたが、一人は「お前はメシアではないか。自分自身と我々を救ってみろ」とののしったが、もう一人は「この方は何も悪いことをしていない」と仲間をたしなめ、イエスに「あなたの御国においでになるときには、わたしを思い出してください」と願うと、イエスは「あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」と言われた。(ルカ23:32~43)

伝説によると、もう一人の強盗の名は「ディスマス」で、ディスマスは、それ以前にエジプトに逃れる途中のヨセフとマリヤを襲ったが、幼子イエスを見て殺害を思いとどまったという。そして、強盗ディスマスは十字架上でイエスと再会し、罪を悔い改めたのだという。(強盗ディスマスは「聖人」と認められ、オーストラリアのシュタイアーマルク州のグラーツにあるカルヴァリオ山聖堂の礼拝堂に1694年から1803年まで祭られたが、それ以後は聖母マリヤが祭られている)

<蜘蛛の糸>

クリスマスツリーに金銀のモールを巻くのは、シリアにつたわるイエスと蜘蛛の糸の伝説による。

エジプトに逃れるヨセフとマリヤは、旅の途中、小さな洞窟で夜を過ごした。洞窟の入り口に一匹の蜘蛛がいた。寒い夜で、蜘蛛は「幼いイエスが風邪をひかないように」と入口に蜘蛛の巣を張った。真夜中にヘロデの兵士が幼子イエスを追って洞窟の入り口に来たが、蜘蛛の巣を見て「ここに居るはずはない」と判断して洞窟には入らなかった。蜘蛛の巣は夜露を集めてキラキラと輝いた。それから、人々はクリスマスツリーに金銀のモールを巻くようになった。

別の伝説では、兵士に追われた時、ビャクシンの木が枝を広げて、イエスとヨセフとマリヤを包み込んだので、難を逃れることが出来た。その後、イタリアではクリスマスの日に馬小屋にビャクシンの枝をつるすようになったという。

聖家族がエジプトに向かう途中、休んだ場所には必ず「エリコのバラ Rose of Jericho」が花開いたという。この植物はアンザンジュで枯れると葉や根が丸くかたまり、風に吹かれて転がり、湿った場所にいくとそこに種をおとし、発芽するところから「復活草 Resurrection」とも呼ばれる。

<「岩窟の聖母」>

レオナルド・ダ・ヴィンチ描いた「岩窟の聖母」は、エジプトへの逃避行の途中、岩窟に身をひそめるマリヤとイエスを描いたものである。1483年フランシスコ会系「聖母無原罪の御宿り信心会」がミラノのサン・フランチェスコ・グランデ聖堂の祭壇画として依頼したもので、1486年に完成するが代金や絵の内容に問題が生じ受け取りを拒否され、再度書き直して完成させたのが発注から25年後の1508年であった。

第一の「岩窟の聖母」はパリのルーヴル美術館に、第二の「岩窟の聖母」はロンドンのナショナル・ギャラリーに収蔵されている。

「岩窟の聖母」にはマリヤと二人の幼児と大天使ウリエルが描かれている。二人の幼児はイエスとバプテスマのヨハネであるが、どちらがイエスで、バプテスマのヨハネかで現代も論争が続いている。

† 心のデボーション

「ヨセフ起きて、夜の間に幼兒とその母とを携へて、エジプトに去りゆき」 マタイ2:14 大正文語訳聖書

「ヨセフは起きて、夜のうちに幼な子とその母とを連れてエジプトに逃れ」 フランシスコ会訳聖書

「直ちに従う」

ヨセフは夜夢で主の使いからヘロデ王の幼児殺害の動きのあることを知らされた。目覚めた時はまだ夜も明けぬ時刻だったが、「その夜のうちに」妻マリヤと赤子のイエスを連れてエジプトに逃れた。

かつてマリヤの身ごもりに逡巡していたヨセフはここにはいない。

慎重な人は大胆に信じることができる。

† 心のデボーション

「ヨセフ起きて、夜の間に幼兒とその母とを携へて、エジプトに去りゆき」 マタイ2:14 大正文語訳聖書

「ヨセフは起きて、夜のうちに幼な子とその母とを連れてエジプトに逃れ」 フランシスコ会訳聖書

「逃れる」

ヨセフとマリヤは幼子とともにエジプトに逃げた。信仰はいかなるものにも顔をそむけはしない。しかし、いかなるものからも「逃げない」という信仰はあぶない。

だからといって、危険を避けようとして、いかなるものに対して慎重であればよいのでもない。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ということもある。

† 心のデボーション

「ヨセフ起きて、夜の間に幼兒とその母とを携へて、エジプトに去りゆき」 マタイ2:14 大正文語訳聖書

「約瑟遂起、夜間挈嬰與其母、而往埃及」 漢訳聖書

「手を携へて」

「幼兒とその母とを携へて」は漢訳聖書では「挈 けい」で「刃物で切れ目をつけた所にカギや手をひっかけて引っぱる」こと。ヨセフは夜の道をマリヤとイエスの手をしっかり握り、引っぱるようにしてエジプトに逃れたのである。

東日本大震災のとき津波で、親の手を握っていたが、手を離してしまった人がいた。そのため親を亡くした人は「あの時、手を離さなければ」と深い後悔の念にとらわれている。どれほど強く握っても、離れてしまういのちもある。

人がその手を引き助かるいのちも、手を引いたが失われるいのちもある。だが、神は双方の「いのち」を「挈(たづさ)へ往(ゆき)」給う。神はその手を離されることはない。

「あの時、離れてしまった手」は神が受け、引かれたのだ。引く手もなく逝かれたのではない。
(†心のデボーション00146)

† 細き聲 説教

「神われらと偕に在す」

「ヨセフ起きて、夜の間に幼兒とその母とを携へて、エジプトに去りゆき」 マタイ2:14 大正文語訳聖書

ヨセフは幼子イエスを抱くマリヤを携えてエジプトに逃げた。

ヘロデ王の兵士が二歳以下の男の子を殺害せよとの命を受けてベツレヘムの村を急襲する最中の逃走であった。ベツレヘムの村を幼子を抱えて脱出する夫婦の噂を兵士が聞けば追いかけて来ることは必至の危険な逃走であった。

一刻も早くと思うヨセフに、マリヤは必死に走ったが、歩くこともできない幼子を抱えての逃走は困難を極めたに違いない。

人生はしばしば不安を抱えて歩むことを求める。その歩みを支えるのも信仰である。その一歩一歩に神の導きを信じ進まなければならない。

あたかも、イスラエルの民が追跡するエジプトの戦車の巻き上げる砂塵を見、どうどうと迫る戦車の地響きを背中に聞きながらエジプトを脱出したように、ヨセフとマリヤはイエスを抱いてエジプトに逃げたのである。

この時のヨセフとマリヤを支えたのは、主の使いからイエス誕生の予告に告げられた「視よ、處女(おとめ)みごもりて子を生まん。その名はインマヌエルと稱(とな)へられん 之を釋(と)けば、神われらと偕に在すと

いふ意(こころ)なり」 (マタイ1:23 大正文語訳聖書) のみことばであったろう。

「神われらと偕に在す」という信仰が彼らをエジプトに導いたのである。

(皆川誠)

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