マタイによる福音書2章7節

マタイによる福音書
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† 福音書対観 「東方の博士の来訪」 マタイ2:1~12

マタイ2:1~12

Matt.2:7そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、星の現れた時について詳しく聞き、口語訳聖書

† 日本語訳聖書 Matt. 2:7

【漢訳聖書】
Matt. 2:7 於是希律密召博士、詳問星現之時。

【明治元訳】
Matt. 2:7 是(ここ)に於(おい)てヘロデ密(ひそか)に博士(はかせ)等(たち)を召(よび)星(ほし)の現(あらは)れし時(とき)を詳(こまか)に問(とひ)て

【大正文語訳】
Matt. 2:7 ここにヘロデ密に博士たちを招きて、星の現れし時を詳細(つまびらか)にし、

【ラゲ訳】
Matt. 2:7 其時ヘロデ密に博士等を召して、星の現れし時を聞匡(ききただ)し

【口語訳】
Matt. 2:7 そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、星の現れた時について詳しく聞き、

【新改訳改訂3】
Matt.2:7  そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、彼らから星の出現の時間を突き止めた。

【新共同訳】
Matt. 2:7 そこで、ヘロデは占星術の学者たちをひそかに呼び寄せ、星の現れた時期を確かめた。

【バルバロ訳】
Matt. 2:7 ヘロデはひそかに博士たちを呼び、星の現われたときのことを詳しく聞きただしてから、

【フランシスコ会訳】
Matt. 2:7 そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼び寄せて、星の現われたのはいつだったかを確かめた。

【日本正教会訳】
Matt. 2:7 是に 於て イロド 密に 博士を 召し、 詳に 星の 現れし 時を 問ひ、

【塚本虎二訳】
Matt. 2:7 そのあとヘロデは内証で博士たちを呼びよせ、(最初に)星の現われた時間を彼らに確かめた上で、

【前田護郎訳】
Matt. 2:7 そこでヘロデはひそかに賢者たちを呼んで星の現われた時を聞きただした。

【永井直治訳】
Matt. 2:7 そのときヘロデ密かに博士等を召して、星の現はれし時を突き留めたり。

【詳訳聖書】
Matt. 2:7 そこで、ヘロデはひそかに博士たち[占星学者]を呼びにやって、彼らによって星の出現の時刻<すなわち、星が東の国で《上ってから》どれぐらい長く見えているのか>を精確に確かめた。

† 聖書引照 Matt. 2:7

Matt. 2:7 ここにヘロデ密に博士たちを招きて、星の現れし時を詳細(つまびらか)にし、

[ここにヘロデ密に博士たちを招きて、星の現れし時を詳細(つまびらか)にし]  出エ1:10; Ⅰサム18:21; 詩篇10:9,10; 55:21; 64:4~6; 83:3,4; イザ7:5~7; エゼ38:10,11; 黙示12:1~5,15

† ギリシャ語聖書 Matt. 2:7

Stephens 1550 Textus Receptus
τοτε ηρωδης λαθρα καλεσας τους μαγους ηκριβωσεν παρ αυτων τον χρονον του φαινομενου αστερος

Scrivener 1894 Textus Receptus
τοτε ηρωδης λαθρα καλεσας τους μαγους ηκριβωσεν παρ αυτων τον χρονον του φαινομενου αστερος

Byzantine Majority
τοτε ηρωδης λαθρα καλεσας τους μαγους ηκριβωσεν παρ αυτων τον χρονον του φαινομενου αστερος

Alexandrian
τοτε ηρωδης λαθρα καλεσας τους μαγους ηκριβωσεν παρ αυτων τον χρονον του φαινομενου αστερος

Hort and Westcott
τοτε ηρωδης λαθρα καλεσας τους μαγους ηκριβωσεν παρ αυτων τον χρονον του φαινομενου αστερος

† ギリシャ語聖書 品詞色分け

Matt. 2:7

Τότε ῾Ηρῴδης λάθρᾳ καλέσας τοὺς μάγους ἠκρίβωσεν παρ ᾽αὐτῶν τὸν χρόνον τοῦ φαινομένου ἀστέρος,

† ヘブライ語聖書 Matt. 2:7

Matt. 2:7

אָז קָרָא הוֹרְדוֹס בַּחֲשַׁאי לְחַכְמֵי הַמִּזְרָח וּבֵרֵר אֶצְלָם מָתַי הוֹפִיעַ הַכּוֹכָב.

† ラテン語聖書 Matt. 2:7

Latin Vulgate
Matt. 2:7

Tunc Herodes clam vocatis Magis diligenter didicit ab eis tempus stellæ, quæ apparuit eis:
Then Herod, quietly calling the Magi, diligently learned from them the time when the star appeared to them.

† 私訳(詳訳)Matt. 2:7

【私訳】 「そこで、ヘロデは内密に<こっそりと>マゴス〔占星学者、博士〕を呼び寄せ、星の現れた<見えるようになった、光を放つようになった>時期を彼らから<彼らによって>注意深く確かめ<詳しく聞きただし>た」

† 新約聖書ギリシャ語語句研究

Matt. 2:7

Τότε ῾Ηρῴδης λάθρᾳ καλέσας τοὺς μάγους ἠκρίβωσεν παρ ᾽αὐτῶν τὸν χρόνον τοῦ φαινομένου ἀστέρος,

【そこで】 Τότε  τότε トテ tote {tot‘-eh}  (ab 副詞)

1)そのとき 2)それから 3)そうすれば 4)そのあとで 5)そこで 6)その時間に 7)次に 8)同時に

【ヘロデは】 ῾Ηρδηςῴ  ῾Ηρῴδης  ヘローデース Hērōdēs {hay-ro‘-dace} (n-nm-s 名詞・主男単)

ヘロデ  ギリシャ名「英雄」

(ヘロデ大王) マタ2:1~22;  ルカ1:5

【占星術の学者たちを】 μάγους  μάγος  マゴス magos {mag‘-os} (n-am-p 名詞・対男複)

(ラテン語 マギ magi)

1)魔術師、占星学者 2)博士、医師、学者、天文学者、賢者

「マギ magi」は「マジック magic」の語源。「マギ magi」は哲学、薬学、自然科学に秀でていた。

マタ2:1,7,11;  使徒13:6,8

新改訳「東の博士たち」

【ひそかに】 λάθρᾳ  λάθρᾳ  らとラ lathra {lath‘-rah} (ab 副詞)

< λαθεῖν 隠れる

1)内密に 2)密かに、秘密に 3)こっそりと、~に知られずに、隠れて 4)小声で

マタ1:19; 2:7;  ヨハ11:28;  使徒16:37

【呼びよせ】 καλέσας  καλέω カれオー kaleō {kal-eh‘-o} (vpaanm-s 分詞・1アオ能主男単)

1)呼ぶ、呼びかける、大声で呼ぶ 2)招く 3)呼び出す、呼び掛ける、呼び寄せる 4)~を~と呼ぶ、名づける 5)召喚する

マタ1:21; 2:15; 4:21; 9:13; 20:8; 22:3,8,9; 25:14;  マル1:20; 2:17; 3:31;  ルカ7:39; 19:13  ヨハ2:2; 10:3; 使徒4:18; 24:2;  ヘブ3:13; 11:8;  Ⅰペテ2:9 etc.

【星の】 ἀστέρος  ἀστήρ  アステール  astēr {as-tare‘} (n-gm-s 名詞・属男単)

1)星  2)天体 3)光輝

マタ2:2,7,9,10; 21:29;  マル13:25;  Ⅰコリ15:41  ユダ13;  黙示1:16,20; 2:1; 3:1; 6:13; 8:10,11,12; 9:1;12:1,4

【あらわれた】 φαινομένου  φαίνω ふァイノー phainō {fah‘ee-no} (vppegm-s 分詞・現両属男単)

1)輝く、光を放つ、見えるようになる、照らす、現われる、見える、姿を見せる 2)示す、出現させる 3)明るい 4)あらわにする、明らかにする 5)知らせる、訴える、告発する

マタ1:20; 2:7,13,19; 13:26; 24:27,30;  マル16:9;  ヨハ1:5; 5:35;  ロマ7:13;  Ⅱコリ13:7; Ⅱペテ1:19;

Ⅰヨハ2:4;  黙示1:16 etc.

【時期を】 χρόνον  χρόνος  くロノス  chronos {khron‘-os} (n-am-s 名詞・対男単)

1)時、時間 2)期間、季節 3)人生、生涯

(「クロノス」はギリシャ神話の巨神族テイタンの一人である「クロノス Cro,noj」と結びついて「時の神」の名になった)

マタ2:7;  マル9:21;  ルカ1:57; 4:5;  使徒1:7; 3:21; 7:17,23; 17:30;  ガラ4:4;  ヘブ11:32;  Ⅰペテ1:17; 4:2,3;  黙示10:6

【彼ら】 ατὐῶν  αὐτός  アウトス autos {ow-tos‘}  (npgm3p 代名詞・属男3)

1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど

【から】 παρ᾽ παρά パラ para {par-ah‘} (pg 前置詞・属)

1)~から 2)の傍らで 3)の所へ

【確かめた】 ἠκρίβωσεν  ἀκριβόω  アクリボオー  akriboō {ak-ree-bo‘-o} (viaa–3s 動詞・直・1アオ・能・3単)

1)正確にする、完全にする、厳密に考える 2)注意深く調べる、厳密に調査する、詳しく問いただして確かめる、十分に調べる、詳しく聞きただす 3)突き止める 4)きちんと整える

マタ2:7,16

† 英語訳聖書

King James Version
2:7 Then Herod, when he had privily called the wise men, enquired of them diligently what time the star appeared.

American Standard Version
2:7 Then Herod privily called the Wise-men, and learned of them exactly what time the star appeared.

New International Version
2:7 Then Herod called the Magi secretly and found out from them the exact time the star had appeared.

Bible in Basic English
2:7 Then Herod sent for the wise men privately, and put questions to them about what time the star had been seen.

Darby’s English Translation
2:7 Then Herod, having secretly called the magi, inquired of them accurately the time of the star that was appearing;

Douay Rheims
2:7 Then Herod, privately calling the wise men, learned diligently of them the time of the star which appeared to them;

Noah Webster Bible
2:7 Then Herod, when he had privately called the wise men, inquired of them diligently what time the star appeared.

Weymouth New Testament
2:7 Thereupon Herod sent privately for the Magi and ascertained from them the exact time of the star’s appearing.

World English Bible
2:7 Then Herod secretly called the wise men, and learned from them exactly what time the star appeared.

Young’s Literal Translation
2:7 Then Herod, privately having called the mages, did inquire exactly from them the time of the appearing star,

† 細き聲 聖書研究ノート

<ここにヘロデ密に博士たちを招きて、星の現れし時を詳細(つまびらか)にし>

預言から「キリスト(メシヤ)」の生まれる場所を突き止めたヘロデ王は、東の博士たちを呼び寄せ、星の現われた時間を聞き出し、メシア誕生の正確な時期を突き止めた。

<猜疑心の強い人>

ヘロデ王は人に知られぬように博士たちを呼び寄せる。猜疑心の強い人は誰も信用しない。そして誰からも信用されない。猜疑心は自分よりまさるものへの嫉妬である。

猜疑心の「猜」は「犬」+「青」で、もともとは「黒い犬」のことだった。中国では「黒犬は人になつかない」ことから「警戒心の強い、人になつかない、ねじけて人を損なう」を意味する。中国から見れば、ヘロデは「噛みつく黒犬」である。

<確かめる>

ヘロデ王は「星術の学者たちをひそか呼びよせ」、星の現われた時期について「確かめ ἀκριβόω  アクリボオー」る。「確かめ ἀκριβόω  アクリボオー」は「厳密に考える、注意深く調べる」(Weymouth New Testamentは   「突き止めようとした」)であるが、ヘロデ王の方法は「他者からの情報」であって、自身のそれではない。ヘロデ王は「時期」について「正確な」情報を得ることができたが、それまでだった。

現代における「情報」も、いかに厳密に考えたところで、「他者」からのものであることに変わりはない。事態について直接的に知ることをしない限り、人は正しく知ることも、それによって正しく行動することはできない。しかし、直接的な認識は、すでに限定されたものである。それをふまえて、「確かめ ἀκριβόω  アクリボオー」ることを断念しない態度を学ばなければならない。

<幼児殺害計画>

ヘロデが「いつ星が現れたのか、その時期を確かめた」のは、何歳までの幼児を殺害するかを計算するためだった。ヘロデは東の博士たちが幼子イエスの居場所を突き止めても知らせに戻ってこない場合に備えて周到に手を回し、東の博士たちの情報をあらかじめ引き出しておいたに違いない。この時ヘロデにはすでに幼児殺害の計画が始まっていた。

悪の計画はそれが始まるはるか以前に存在し、それが表面にでたときは止めようがない。

<小声のささやき>

「ひそか λάθρᾳ  らとラ 内密に、密かに、こっそりと、~に知られずに、隠れて、小声で」語られることには注意する必要がある。「小声のささやき」にはたくらみが隠されている。「ここだけの話」とは「筒抜けの話」のことである。

<クロノスとカイロス>

ヘロデ王は「星の出現の χρόνος  くロノス 時間、その期間」を突き止める。ヘロデ王の関心はこの不思議な現象の詳細に知ることにあった。しかし、彼は「キリストの  καιρός カイロス 時」を調べない。カイロスを知る人はクロノスを知り、クロノスを知る人はカイロスを知る。クロノスとカイロスは一つとして光を放つ。

<時のしるし>

時のしるしは天にある。しかし、それは十分に「確かめる ἀκριβόω  アクリボオー 注意深く調べる、厳密に調査する、詳しく問いただして確かめる、正確にする、完全にする、厳密に考える、きちんと整える、十分に調べる、詳しく聞きただす」必要がある。

<隠れたやり方で>

ヘロデは祭司長・律法学者に調べさせた情報をマギ達に与えて、彼らから「星の現れた時期」を聞きだし、さらに、詳細な情報を得ようとしてマギ達を派遣する。権力者は隠れたやり方で情報を集め、「密かな企て」のために利用する。

† 心のデボーション

「ここにヘロデ密に博士たちを招きて、星の現れし時を詳細(つまびらか)にし」 マタイ2:7 大正文語訳聖書

「其時ヘロデ密に博士等を召して、星の現れし時を聞匡(ききただ)し」 ラゲ訳聖書

「聞きただす」

ヘロデ王は祭司長たちからキリスト誕生の場所を、東の博士たちからその時期を聞き出す。

しかし、ヘロデにはさらに集めなければならないメシアについての情報があった。それは人から集めることは誰にもできない。

† 心のデボーション

「ここにヘロデ密に博士たちを招きて、星の現れし時を詳細(つまびらか)にし」 マタイ2:7 大正文語訳聖書

「其時ヘロデ密に博士等を召して、星の現れし時を聞匡(ききただ)し」 ラゲ訳聖書

「メシア情報」

ヘロデは祭司長、律法学者を退け、密かに別室のマギを召し、「星がいつ現れたのか」を聞き出した。

祭司長、律法学者からの「メシア情報」がエルサレムの住民に「大きな待望」に変わることを恐れたのかもしれない。祭司長、律法学者をこれ以上に刺激するのは危険であった。

支配者は常に民が目覚めないように気遣う。

† 心のデボーション

「ここにヘロデ密に博士たちを招きて、星の現れし時を詳細(つまびらか)にし」 マタイ2:7 大正文語訳聖書

「其時ヘロデ密に博士等を召して、星の現れし時を聞匡(ききただ)し」 ラゲ訳聖書

「詳細(つまびらか)」

「詳細(つまびらか)」の「詳」は「言」に「羊」で、「羊」は姿の整った羊を示し、「欠けたところのない、行き届いて論じる」の意味である。

ヘロデはマギに「星の現れた時」について、余分なことを省いて自分の知りたい事実だけを求めた。それは決してい「詳細(つまびらか)」とは言えない。「ヘロデが「星の現れし時」を真に「詳細(つまびらか)に」知ることができたら、歴史は大きく変わったに違いない。

† 心のデボーション

「ここにヘロデ密に博士たちを招きて、星の現れし時を詳細(つまびらか)にし」 マタイ2:7 大正文語訳聖書

「其時ヘロデ密に博士等を召して、星の現れし時を聞匡(ききただ)し」 ラゲ訳聖書

「聞きただす」

「聞匡(ききただ)す」の「匡 きょう」は「わくの中に押し込めて形を直す」で「ただす」の意味。

ヘロデの「匡 きょう」はマギ達のもたらす情報を自分の都合のよい形に直して、利用しようとするものだった。

「聞匡(ききただ)す」は「匡座 きょうざ」(正しく座し)、「匡励 きょうれい」(支えはげまし)、互いに「匡諌 きょうかん」(悪い点をただす)ために「聞き」たい。

(†心のデボーション00131)

† 細き聲 説教

「疑心暗鬼」

「ここにヘロデ密に博士たちを招きて、星の現れし時を詳細(つまびらか)にし」 マタイ2:7 大正文語訳聖書

「其時ヘロデ密に博士等を召して、星の現れし時を聞匡(ききただ)し」 ラゲ訳聖書

ヘロデ王は祭司長、律法学者たちから「メシア誕生の地」の情報を得て、メシア殺害の決意をし、その思いを隠して東の博士たちに「星の現われた時の詳細な情報」から「誕生の時期」を特定した。

ヘロデ王は疑心暗鬼にとらわれたのである。

「疑心暗鬼を生ず」という。「暗鬼」は暗闇の中の亡霊で、いったん疑ってかかると、ないはずの闇に亡霊が浮かんで見える。

「列子・説符」にある話

ある男が斧を失くし、隣の家の息子が怪しいと思うと、その歩きかたから目つきまで、すべてが怪しく感じられた。ところが、ある日近くの谷間で失くした斧を見つけた。自分がそこに置き忘れたのだった。すると、その日から、隣の家の息子の言動が少しもおかしく感じられなくなった。

疑心暗鬼が生ずると、周囲の動向がみな「おかしく」感じられる。男が谷間で失くした斧を見つけたのはまったくの偶然である。偶然が間に合わなければヘロデの悲劇が引き起こされる。

この話を少し書き換えてみる。

ある男が斧を失くし、隣の家の息子が怪しいと思うと、その歩きかたから目つきまで、すべてが怪しく感じられた。消えた斧は見つからず、疑惑は深まったが証拠がない。ある日、疑うことにも疲れた男は、もしかすると隣の家の息子ではないのかもしれないと考えた。すると、その日から、隣の家の息子の言動が少しもおかしく感じられなくなった。

暗がりの中にいる「鬼」が、今度は光の中に移動したのだった。暗がりの中の鬼は見つけやすいが、光の中の鬼は見つけにくい。

暗がりであれ、光であれ、住み着いた鬼をそのままにしてはいけない。

(皆川誠)

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