マタイによる福音書1章21節

マタイによる福音書
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† 福音書対観 「イエスの誕生」 マタイ1:18~25

マタイ1:18~25

Matt. 1:21彼女は男の子を産むであろう。その名をイエスと名づけなさい。彼は、おのれの民をそのもろもろの罪から救う者となるからである」。口語訳聖書

† 日本語訳聖書 Matt. 1:21

【漢訳聖書】
Matt. 1:21 彼將生子、爾必名之曰耶穌、以將救其民於其罪惡中。

【明治元訳】
Matt. 1:21 かれ子(こ)を生(うま)ん其(その)名(な)をイエスと名(なづ)くべし蓋(そは)その民(たみ)を罪(つみ)より救(すく)はんとすれば也(なり)

【大正文語訳】
Matt. 1:21 かれ子を生まん、汝その名をイエスと名づくべし。己が民をその罪より救ひ給ふ故なり』

【ラゲ訳】
Matt. 1:21 彼一子を生まん、汝其名をイエズスと名くべし、其は自(みづから)己が民を其罪より救ふべければなり。

【口語訳】
Matt. 1:21 彼女は男の子を産むであろう。その名をイエスと名づけなさい。彼は、おのれの民をそのもろもろの罪から救う者となるからである」。

【新改訳改訂3】
Matt. 1:21 マリヤは男の子を産みます。その名をイエスとつけなさい。この方こそ、ご自分の民をその罪から救ってくださる方です。」

【新共同訳】
Matt. 1:21 マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである。」

【バルバロ訳】
Matt. 1:21 彼女は子を生むからその子をイエズスと名づけよ。なぜなら彼は罪から民を救う方だからである」。

【フランシスコ会訳】
Matt. 1:21 彼女は男の子を産む。その子をイエスと名づけなさい。その子は自分の民を罪から救うからである」。

【日本正教会訳】
Matt. 1:21 彼は子を生まん、爾其名をイイススと名づけん、彼其民を其罪より救わんとすればなり。

【塚本虎二訳】
Matt. 1:21 男の子が生まれるから、その名をイエス(訳すると、神はお救いになる)とつけよ。この方がその民を罪からお救いになるのだから。」

【前田護郎訳】
Matt. 1:21 彼女は男の子を生もう。彼の名をイエスとつけよ、彼こそその民をもろもろの罪から救おうから」と。

【永井直治訳】
Matt. 1:21 また彼は子を産まん、また汝はその名をイエスと呼ばん。そは彼はその民を彼等の罪より救ひ給ふべければなり。

【詳訳聖書】
Matt. 1:21 このかたこそご自分の民をその罪から救われる[すなわち、彼らが人生の真の目的と目標(神こそそれである)に達せず、またそれを見失うことのないようにされる]からである。

† 聖書引照 Matt. 1:21

Matt. 1:21 かれ子を生まん、汝その名をイエスと名づくべし。己が民をその罪より救ひ給ふ故なり』

[かれ子を生まん] ルカ1:31,35,36
[その名をイエスと名づくべし]  ルカ1:31~34; 2:21
[己が民をその罪より救ひ給ふ故なり]  詩篇130:7,8; イザ12:1,2; 45:21,22; エレ23:6; 33:16; エゼ36:25~29; ダニ9:24; ゼカ9:9; ヨハ1:29; 使徒3:26; 4:12; 5:31; 13:23,38,39; エペ5:25~27; コロ1:20~23; テト2:14; ヘブ7:25; Ⅰヨハ2:1,2; 3:5; 黙示1:5,6; 7:14

† ギリシャ語聖書 Matt. 1:21

Stephens 1550 Textus Receptus
τεξεται δε υιον και καλεσεις το ονομα αυτου ιησουν αυτος γαρ σωσει τον λαον αυτου απο των αμαρτιων αυτων

Scrivener 1894 Textus Receptus
τεξεται δε υιον και καλεσεις το ονομα αυτου ιησουν αυτος γαρ σωσει τον λαον αυτου απο των αμαρτιων αυτων

Byzantine Majority
τεξεται δε υιον και καλεσεις το ονομα αυτου ιησουν αυτος γαρ σωσει τον λαον αυτου απο των αμαρτιων αυτων

Alexandrian
τεξεται δε υιον και καλεσεις το ονομα αυτου ιησουν αυτος γαρ σωσει τον λαον αυτου απο των αμαρτιων αυτων

Hort and Westcott
τεξεται δε υιον και καλεσεις το ονομα αυτου ιησουν αυτος γαρ σωσει τον λαον αυτου απο των αμαρτιων αυτων

† ギリシャ語聖書  品詞色分け

Matt. 1:21

τέξεται δὲ υἱόνκαὶ καλέσεις τὸ ὄνομα αὐτοῦ ᾽Ιησοῦν αὐτὸς γὰρ σώσει τὸν λαὸν αὐτοῦ ἀπὸ τῶν ἁμαρτιῶν  αὐτῶν.

† ヘブライ語聖書 Matt. 1:21

Matt. 1:21

הִיא יוֹלֶדֶת בֵּן וְאַתָּה תִּקְרָא שְׁמוֹ יֵשׁוּעַ, כִּי הוּא יוֹשִׁיעַ אֶת עַמּוֹ מֵחַטֹּאתֵיהֶם.

† ラテン語聖書 Matt. 1:21

Latin Vulgate
Matt. 1:21

pariet autem filium et vocabis nomen eius Iesum ipse enim salvum faciet populum suum a peccatis eorum
And she shall give birth to a son. And you shall call his name JESUS. For he shall accomplish the salvation of his people from their sins.”

† 私訳(詳訳)Matt. 1:21

【私訳】 「また彼女〔マリヤ〕は子<息子、男の子>を産む<もうける>。そしてあなたは彼の名をイエスと呼びなさい。彼 〔イエス〕 はご自分の人々<民>をその罪から救う<解放する、癒す>からである」

† 新約聖書ギリシャ語語句研究

Matt. 1:21

τέξεται δὲ υἱόν, καὶ καλέσεις τὸ ὄνομα αὐτοῦ ᾽Ιησοῦν αὐτὸς γὰρ σώσει τὸν λαὸν αὐτοῦ ἀπὸ τῶν ἁμαρτιῶν  αὐτῶν.

【また】δὲ  δέ  デ de {deh} (cc 接続詞・等位)

1)ところで、しかし、さて、そして 2)しかも、そしてまた、なお、すると、また 3)次に、さらに 4)否、むしろ

【男の子を】ἱόν υἱός フゅィオス huios {hwee-os’}  (n-am-s 名詞・対男)

1)息子、子、子供、男の子、兄 2)子孫、末裔 3)従者、弟子、仲間 4)客、深い関係にあるもの 5)(ロバの)子

「υἱός フィオス」はヘブライ語「בֵּן  ベーン ben {bane}  息子」にあたり、「בֵּן ベーン ben {bane}」

は「בָּנָה バーナー banah {baw-naw’} 建てる」に由来する。「家を建ち上げる、興す者」の意味である。

マタ1:1; 3:17; 16:16; 22:42,45;  Ⅱコリ6:18;  ガラ3:7

【産む】τέξεται  τίκτω  ティクトー  tiktō {tik‘-to} (vifd–3s 動詞・直・未来・能欠・3単)

母が子を産む、父が子をもうける 2)生む 3)生じる 4)産出する

マタ1:21,23,25; 2:2;  ルカ1:31,57,; 2:6,7,22;  ヨハ16:21;  ガラ4:27;  ヘブ6:7;  ヤコ1:15;黙示12:2,4,5,13

【そして】καὶ  καί カイ kai {kahee} (cc 接続詞・等位)

1)~と、~も、そして 2)~さえ、でさえも 3)しかし 4)しかも、それは 5)それでは、それだのに 6)そうすれば、すなわち 7)のみならず、もまた

【彼の】αὐτοῦ  αὐτός  アウトス autos {ow-tos‘}  (npgm3s 代名詞・属男3)

1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど

【名を】ὄνομα  ὄνομα  オノマ  onoma {on‘-om-ah} (n-an-s 名詞・対中単)

1)名前、名、名称 2)人数 3)本人、人間、人格 4)名声 5)名目、口実 6)語、用語、術語

マタ1:21; 10:2;  マル3:16; 14:32;  ルカ1:5,26;  ヨハ1:6; 3:1;  使徒13:8;  黙示21:14 etc.

【イエスと】᾽Ιησοῦν  ᾽Ιησοῦς イエースウース  Iēsous {ee-ay-sooce‘ } (n-am-s 名詞・対男単)

イエス 意味は「ヤㇵウェは救いである」

「イエス」はヘブル語「 יְהוֺשׁוּעַ イェホーシュア Yehowshuwa` {yeh-ho-shoo’-ah} ”Jehovah is salvation” 主は救い、ヨシュア」の ギリシャ名

マタ16:16;  マル5:7;  ルカ1:32;  ヨハ1:29,36; 14:6; 6:33,51;  ロマ1:16; 3:29; 11:26; 14:9;  Ⅰコリ1:24; 2:8; 15:45;  Ⅰテモ6:15;  ヘブ2:10; 3:6; 9:11,15; 12:24;  黙示1:5;,8; 2:8; 3:14

【呼びなさい】καλέσεις  καλέω カれオー kaleō {kal-eh‘-o} (vifa–2s^vmaa–2s 動詞・直・未来・能・2単/命・アオ)

1)呼ぶ、呼びかける、大声で呼ぶ 2)招く 3)呼び出す、呼び掛ける、呼び寄せる 4)~を~と呼ぶ、名づける 5)召喚する

マタ1:21; 2:15; 4:21; 9:13; 20:8; 22:3,8,9; 25:14;  マル1:20; 2:17; 3:31;  ルカ7:39; 19:13  ヨハ2:2; 10:3; 使徒4:18; 24:2;  ヘブ3:13; 11:8;  Ⅰペテ2:9 etc.

【というのは】γὰρ  γάρ  ガル gar {gar} (cs 接続詞・従位)

1)なぜなら、というのは、その理由は、だから 2)すなわち、では、いったい、結局 4)確かに、もちろん、だって

【彼は】αὐτὸς  αὐτός  アウトス autos {ow-tos‘}  (npnm3s 代名詞・主男3)

1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど

【自分の】 αὐτοῦ  αὐτός  アウトス autos {ow-tos‘}  (npgm3s 代名詞・属男3)

1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど

【民を】λαὸν  λαός  らオス laos {lah-os‘} (n-am-s 名詞・対男単)

1) 人々、人の群れ 2)群衆、民衆、大衆  3)民、民族 4)国民、種族 5)イスラエル民族

マタ1:21; 2:4; 4:23; 13:15; 21:23; 26:3,42; 27:1;  マル7:6;  ルカ1:17,68; 2:10; 19:47; 22:66;  ヨハ11:50;  使徒3:23; 4:8,10; 15:14;  ロマ9:23,26;  ヘブ4:9; 11:25;  Ⅰペテ2:10;  Ⅱペテ2:1;  黙示18:4 etc.

【彼らの】αὐτῶν  αὐτός  アウトス autos {ow-tos‘}  (npgm3p 代名詞・属男3)

1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど

【罪】ἁμαρτιῶν  ἁμαρτία  ハマルティア  hamartia {ham-ar-tee‘-ah} (n-gf-p 名詞・属女複)

1)的を外す、正しい道から迷いでる 2)罪、失敗、誤り、間違い、過ち、咎 3)犯罪、犯行 4)罪人

ἁμαρτία ハマルティアの元意は「的をはずす」こと

マタ1:21; 12:31;  ヨハ1:29; 8:34;  ロマ5:21; 6:6,12,14,17; 7:17,20,23; 8:2;  Ⅰコリ15:17,56;  Ⅱコリ11:7;  1テサ2:15;  ヘブ4:15;  ヤコ1:15  etc.

【から】ἀπὸ  ἀπό  アポ apo {apo‘} (pg 前置詞・属)

1)~から  2)~から離れて 3)~の中から、~のうちの、~のうちから 4)~以来、~の後で 5)によって 6)(人、物、状態から)自由にする、取り去る

【救うからである】σώσει  σῴζω  ソーゾー sōzō {sode‘-zo} (vifa–3s 動詞・直・未来・能・3単)

<σῶς 健康である

1)救済、死の危険からの解放、救出する、救済する、救助する、助ける、救う、安全に護る 2)無事に保つ、保護する、保持する、保存する 3)癒す、直す 4)心に留める、覚えている、忘れない

マタ1:21; 9:21,22; 19:25;  マル5:23,28,34; 10:26;  ルカ7:50; 18:26;  ヨハ3:17;  使徒2:40;  ロマ5:9; Ⅰコリ1:18;  Ⅱコリ2:15;                                                                                          Ⅰテモ1:15; 2:4; ヤコ5:20; etc.

† 英語訳聖書 Matt. 1:21

King James Version
1:21 And she shall bring forth a son, and thou shalt call his name JESUS: for he shall save his people from their sins.

American Standard Version
1:21 And she shall bring forth a son; and thou shalt call his name JESUS; for it is he that shall save his people from their sins.

New International Version
1:21 She will give birth to a son, and you are to give him the name Jesus, because he will save his people from their sins.”

Bible in Basic English
1:21 And she will give birth to a son; and you will give him the name Jesus; for he will give his people salvation from their sins.

Darby’s English Translation
1:21 And she shall bring forth a son, and thou shalt call his name Jesus, for he shall save his people from their sins.

Douay Rheims
1:21 And she shall bring forth a son: and thou shalt call his name JESUS. For he shall save his people from their sins.

Noah Webster Bible
1:21 And she shall bring forth a son, and thou shalt call his name JESUS: for he shall save his people from their sins.

Weymouth New Testament
1:21 She will give birth to a Son, and you are to call His name JESUS for He it is who will save His People from their sins.’

World English Bible
1:21 She shall bring forth a son. You shall call his name JESUS, for it is he who shall save his people from their sins.’

Young’s Literal Translation
1:21 and she shall bring forth a son, and thou shalt call his name Jesus, for he shall save his people from their sins.’

Amplified Bible
1:21 She will give birth to a Son, and you shall name Him Jesus (The Lord is salvation), for He will [l]save His people from their sins.”

Footnotes:
[l]Those who, by personal faith, accept Him as Savior are saved from the penalty of sin and reconciled with the Father.

† 細き聲 聖書研究ノート

<かれ子を生まん、汝その名をイエスと名づくべし。己が民をその罪より救ひ給ふ故な>

主の使いはヨゼフに、生まれる子が「男の子」であり、その名を「イエス」とつけるように告げる。「イエス」という名は「ヤㇵウェは救いである」との意味である。

<その名をもって呼ばれる>

マリヤの産む「男の子」の名は、あらかじめ神から知らされる。神は生まれてくる子を母の胎にあるうちから、その名をもって呼ばれる。どの両親も生まれてくる子を、神がどのような名で呼ばれるか聴くのである。

<的外れ>

「罪 ἁμαρτία  ハマルティア」は「的を外す」からくる言葉。あるべき「自己」という的を外すこと。「悔改め」は「私は神によって創られた自己を失った」との認識と告白であり、「あるべき自己」を見出すのが「キリストの救い」である。

<救い>

イエスは「ご自分の人々を彼らの罪から」救われる。「救い σῴζω ソーゾー」は「σῶς 健康である」から来た言葉である。キリストの「救い」とは、人間が自己とは別の存在になることではない。「罪 ἁμαρτία  ハマルティア」は、人間がそのあるべき自己を失ったこと(的外れ)であり、存在の「死」である。とすれば、「救い」とは存在の死からの回復である。あるべき自分を回復する(健康にする)ことである。

「人生の目的」(詳訳聖書)は、人が「私」に接近し、「私」を実現することに他ならない。だが、人はひとりでそれを実現することができない。なぜなら、人間は「罪人」すなわち「的外れ」だからである。イエスはその回復の道に介入してこられ、「人間」を成し遂げられるお方である。

<救い>

「救い σῴζω ソーゾー」には「救済、解放、救出、保護、癒す」の意味がある。σῴζω のラテン語訳 salvo にも「治療、救済、救霊」の意味がある。「救い」は身体と精神の全体的な回復、解放である。

<その子をイエスと名付けなさい>

古代ギリシャ・ローマ社会では生後1週間は母子ともに試練の時であった。新生児も母親も死の危険にさらされたのである。その為、アテナイでは生まれてから10日が経過するまでは新生児に名前をつけないしきたりであったという。

日本でも同じ理由で平安時代から、生まれた子どもに名はすぐにはつけず、七日目の夜にようやく名をつけ、お宮参りまでの約一カ月はその命名書を飾っておく「お七夜」の風習があった。

聖書で誕生の前からイエスに「名前」がつけられたということは、通常とは違った意味を含んでいたことになる。マリヤから誕生した「いのち」は必ずや生きるとの強い確信を示している。

<処女マリヤ>

使徒信条に「主は聖霊によりてやどり、おとめマリヤより生まれ」と告白される。

イエスが「おとめマリヤから生まれた」という最も古い文書は二世紀末の『使徒たちの徴し』と言われている。「処女」という言葉は、旧約聖書のギリシャ語訳 LXX がイザヤ書7:14のヘブル語  almh 「若い女性」をギリシャ語 parthenos 「処女」と訳したことにはじまる。

教会は「処女マリヤ」を信仰告白の中心においた。処女マリヤをめぐるイエスの家族に言及することは、長い間タブー視さえされたのである。(アムブロシウスがマリヤはイエスの他にも子を生んだと主張し、390年のミラノ公会議で破門にされた。)

しかし、マリヤの処女性を信じるか否かは信仰の本質ではない。信仰が求めるのはイエスに関わる事柄であってマリヤについてではないからである。

信仰には理性的に理解できないいくつかの出来事がある。理性の理解し得ぬものはそのままにしておくがよい。マリヤの処女性はその一つである。処女降誕を理性的に説明することは、いまだに出来ない。

私は「使徒信条」を告白する。しかし、自分の告白をすべて自分で説明することはできない。この姿勢は自分のなかで矛盾しない。

自分が何を知り、何を知らぬかを明らかにする理性をもってイエスを信じたいのである。「明らかにし得ぬ」ものは、そのままにすることは現在の信仰をいささかも損なうものではない。

<盆 salvare>

英語「救い save」はラテン語 salvare を語源とする。料理を食卓に運ぶ金属製の大皿を「盆 salvare」というが、これは「救い」を意味するラテン語 salvare から派生したものである。中世の時代には料理に毒を盛ることが行われ、食事は危険をともなった。そこで料理は一品ごとに毒見されることになり、毒見人が犠牲になることで救われた(save)ことから、「盆」を salvare と呼ぶことになった。

† 心のデボーション

「わが患難わが辛苦をかへりみ わがすべての罪をゆるしたまへ」 詩篇25:18 明治元訳聖書

「わたしの悩みと労苦を見て、私のすべての罪を赦してください」 新改訳聖書

「存在の的外れ」

ギリシャ語で「罪」は「ἁμαρτία  ハマルティア」で「的を外す」からくる言葉である。存在の的外れを「罪」と呼ぶ。しばしば、私たちは「罪」について「的外れ」な認識から、「的外れ」な悩みに苦しむことになる。いくら悔い改めても救われないのは、そのためである。「的外れ」な悩みは「的外れ」な「救い」を求める。

† 心のデボーション

「汝その名をイエスと名づくべし。己が民をその罪より救ひ給ふ故なり」 マタイ1:21 大正文語訳聖書

「マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである」 新共同訳聖書

「罪からの救い」

「罪 ἁμαρτία ハマルティア」は「罪」だけでなく「誤り、間違い、過ち、咎」を含む。ラテン語 peccatum も「罪、犯罪、過失」を意味する。人間は意識的な罪だけではなく、無意識からの罪、すなわち「過失」という罪も犯す罪人である。イエスの「救い」は人間の意識と無意識の世界に及ぶ。

† 心のデボーション

「汝その名をイエスと名づくべし。己が民をその罪より救ひ給ふ故なり」 マタイ1:21 大正文語訳聖書

「マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである」 新共同訳聖書

「その人の罪」

「その罪から ἀπὸ τῶν ἁμαρτιῶν  αὐτῶν 」「罪 ἁμαρτία ハマルティア hamartia {ham-ar-tee‘-ah}」には定冠詞 τῶν」がついている。「罪」は一般的な罪や悪ではなく「彼らの罪」である。固有の顔をもち、それぞれ「その人の罪」として特定されるものである。普遍的な罪や悪も、「私の罪」として経験されることによってはじめて認識されるのである。「罪」の救いは「私」から始まる。

† 細き聲 説教

「罪からの救い」

「汝その名をイエスと名づくべし。己が民をその罪より救ひ給ふ故なり」 マタイ1:21 大正文語訳聖書

「マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである」 新共同訳聖書

主の使いは夢でヨセフにマリヤが男の子を産むことが告げ、その名を「イエス」と名づけるよう伝える。

「イエス」の名はヘブライ語の「ヨシュア」にあたり、「主は救いである」という意味である。

主の使いはイエスの名について「この子は自分の民を罪から救う」と説明している。(マタイ1:21)

新訳聖書には「罪」を意味する多くの言葉がある。

「的外れ」を意味する「ハマルティア」、「罪過」を意味する「パラプトーマ」、「不正」を意味する「カキア」など、その他にもいくつかの言葉が用いられる。

マタイ1:21の「罪からの救い」の「罪」は「ハマルティア」で「的を外す」からくる言葉である。

創世記に最初の人アダムは神によってつくられ、神からその名を「アダム(人間)」と呼ばれた。

「アダム(人間)」は神によって創られた。ゆえに「神ではない存在」であり、自らを「神ではない存在」とすることにアダムの尊厳があった。

しかし、アダムはエバとともに「神の如き者」になろうとして「罪」を犯した。罪とは「神ではない存在」である自らを否定し、「神の如き者」になろうとすることである。

すなわち、「罪 ハマルティア(的外れ)」は、あるべき「自己」という的から外れて、「自己以外の者」になろうとすることである。

イエスは「ご自分の人々を彼らの罪から」救われる。

「救い σῴζω ソーゾー」は「σῶς 健康」から来た言葉である。キリストの「救い」とは、人間が自己とは別の存在になることではない。

「罪 ἁμαρτία ハマルティア」は、人間がそのあるべき自己を失ったこと(的外れ)であり、存在の「死」である。とすれば、「救い」とは存在の死からの回復である。あるべき自分を回復する(健康にする)ことである。

「人生の目的」(詳訳聖書)は、人が「私」に接近し、「私」を実現することに他ならない。だが、人はひとりでそれを実現することができない。なぜなら、人間は「罪人」すなわち「的外れ」だからである。イエスはその回復の道に介入してこられ、「人間」を成し遂げられるお方である。

「悔改め」は「私は神によって創られた自己を失った」との認識と告白であり、「あるべき自己」を見出すのが「キリストの救い」である。

(皆川誠)

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