† 福音書縦観 「姦淫」 マタイ5:27~32
マタイ5:27~32
マタイ5:27~32
Matt.5:31また『妻を出す者は離縁状を渡せ』と言われている。口語訳聖書
† 日本語訳聖書 Matt.5:31
【漢訳聖書】
Matt.5:31 又言、若人出其妻、當與之以離書。
【明治元訳】
Matt.5:31 また曰(いへ)ることあり凡(おほよ)そ人(ひと)その妻(つま)を出(いだ)さんとせば之(これ)に離縁状(りえんじやう)を與(あた)ふべしと
【大正文語訳】
Matt.5:31 また「妻をいだす者は離縁状を與ふべし」と云へることあり。
【ラゲ訳】
Matt.5:31 又「何人も妻を出さば是に離縁状を與ふべし」と云はれたる事あり。
【口語訳】
Matt.5:31 また『妻を出す者は離縁状を渡せ』と言われている。
【新改訳改訂3】
Matt.5:31 また『だれでも、妻を離別する者は、妻に離婚状を与えよ』と言われています。
【新共同訳】
Matt.5:31 「『妻を離縁する者は、離縁状を渡せ』と命じられている。
【バルバロ訳】
Matt.5:31 また、<妻を離縁するときにには離縁状を与えよ>と言われている。
【フランシスコ会訳】
Matt.5:31 『妻を離縁する者は、妻に離縁状を渡せ』と命じられている。
【日本正教会訳】
Matt.5:31 又言へるあり、若し人其妻を出さば、之に離書(りしょ)を與(あた)ふべしと。
【塚本虎二訳】
Matt.5:31 また(昔の人は)、“妻を離縁する者は離縁状を渡せ”と命じられた。
【前田護郎訳】
Matt.5:31 またいわれている、『妻と離婚するものは雑縁状を渡せ』と。
【永井直治訳】
Matt.5:31 また誰にてもその妻を去らんとせば、これに去り状を與ふべし、と謂はれたり。
【詳訳聖書】
Matt.5:31 妻を離縁する者はその妻に離縁状を与えなければならない、とも言われている。
† 聖書引照 Matt.5:31
Matt.5:31 また「妻をいだす者は離縁状を與ふべし」と云へることあり。
[また「妻をいだす者は離縁状を與ふべし」と云へることあり] マタ19:3,7; 申命24:1~4; エレ3:1; マル10:2~9
† ギリシャ語聖書 Matt.5:31
Stephens 1550 Textus Receptus
ερρεθη δε οτι ος αν απολυση την γυναικα αυτου δοτω αυτη αποστασιον
Scrivener 1894 Textus Receptus
ερρεθη δε οτι ος αν απολυση την γυναικα αυτου δοτω αυτη αποστασιον
Byzantine Majority
ερρεθη δε οτι ος αν απολυση την γυναικα αυτου δοτω αυτη αποστασιον
Alexandrian
ερρεθη δε ος αν απολυση την γυναικα αυτου δοτω αυτη αποστασιον
Hort and Westcott
ερρεθη δε ος αν απολυση την γυναικα αυτου δοτω αυτη αποστασιον
† ギリシャ語聖書 品詞色分け
Matt.5:31
᾽Ερρέθη δέ, Ος ἂν ἀπολύσῃ τὴν γυναῖκα αὐτοῦ, δότω αὐτῇ ἀποστάσιον.
† ヘブライ語聖書 Matt.5:31
Matt.5:31
נֶאֱמַר, אִישׁ כִּי יְשַׁלַּח אֶת אִשְׁתּוֹ יִתֵּן לָהּ סֵפֶר כְּרִיתוּת
† ラテン語聖書 Matt.5:31
Latin Vulgate
Matt.5:31
Dictum est autem: Quicumque dimiserit uxorem suam, det ei libellum repudii.
And it has been said: ‘Whoever would dismiss his wife, let him give her a bill of divorce.’
† 私訳(詳訳)Matt.5:31
【私訳】 「さて、『彼〔自身〕の妻を離縁する<追い出す、解き放つ、自由にする、離婚する、去らせる、バラバラにする、清算する>者は離縁状を渡せ<与えよ、差し出せ、ゆだねよ>』と命じられている」
† 新約聖書ギリシャ語語句研究
Matt.5:31
᾽Ερρέθη δέ, Ος ἂν ἀπολύσῃ τὴν γυναῖκα αὐτοῦ, δότω αὐτῇ ἀποστάσιον.
【さて】 δέ δέ デ de {deh} (cc 接続詞・等位)
1)ところで、しかし、さて、そして 2)しかも、そしてまた、なお、すると、また 3)次に、さらに 4)否、むしろ
(G1161 δέ A primary particle (adversative or continuative); but, and, etc.: – also, and, but, moreover, now [often unexpressed in English]. Internet Sacred Text Archive)
【彼の】 αὐτοῦ αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npgm3s 代名詞・属男3)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
(G846 αὐτός From the particle αὖ au (perhaps akin to the base of 109 through the idea of a baffling wind; backward); the reflexive pronoun self, used (alone or in the compound of 1438 of the third person, and (with the proper personal pronoun) of the other persons: – her, it (-self), one, the other, (mine) own, said, ([self-], the) same, ([him-, my-, thy-]) self, [your-] selves, she, that, their (-s), them ([-selves]), there [-at, -by, -in, -into, -of, -on, -with], they, (these) things, this (man), those, together, very, which. Compare 848. Internet Sacred Text Archive)
【妻を】 γυναῖκα γυνή グゆネー gunē {goo-nay‘} (n-af-s 名詞・対女)
1)女、婦女、婦人 2)女主人、貴婦人 3)いいなずけ、妻、花嫁、人妻 4)寡婦 5)女中 6)雌
(G1135 γυνή Probably from the base of 1096 a woman; specifically a wife: – wife, woman. Internet Sacred Text Archive)
マタ1:20,24; 5:31,32; 14:3; 19:3,5; 22:28; マル6:18;12:23; ルカ4:26; 20:33; 使徒5:1,7,14; Ⅰコリ7:2; エペ5:22,28; 黙示2:20 etc.
【離縁する】 ἀπολύσῃ ἀπολύω アポりゆオー apoluō {ap-ol-oo‘-o} (vsaa–3s 動詞・仮・1アオ・能・3)
< ἀπό ~から + λύω 解く、ほどく
1)追い出す、解く、解き放つ、解放する、自由にする、弛める、ほどく 2)離婚する、去らせる、バラバラにする、解散する 3)清算する 4)罪をゆるす、釈放する
(G630 ἀπολύω From 575 and 3089 to free fully, that is, (literally) relieve, release, dismiss (reflexivelydepart), or (figuratively) let die, pardon, or (specifically) divorce: – (let) depart, dismiss, divorce, forgive, let go, loose, put (send) away, release, set at liberty. Internet Sacred Text Archive)
マタ1:19; 14:15,22,23; 15:32,39; 27:15,17,21,26; マル6:36,45; 15:6,9,11,15; ルカ2:29; 8:38; 9:1,22; ヨハ18:39; 19:10,12; 使徒23:22; etc.
【者は】 Ος ἂν
Ος ὅς ホス hos {hos} (aprnn-s 関係代名詞・主中単)
1)この~ 2)これ 3)ところの、そして
(G3739 ὅς Probably a primary word (or perhaps a form of the article 3588 ; the relative (sometimes demonstrative) pronoun, who, which, what, that: – one, (an-, the) other, some, that, what, which, who (-m, -se), etc. See also 3757. Internet Sacred Text Archive)
ἂν ἄν アン an {an} (qv 不変化詞)
1)~まで 2)(~ならば~)です(仮定文で) 3)ともかく
事がある条件の元に起こることを示す
(G302 ἄν A primary particle, denoting a supposition, wish, possibility or uncertainty: – [what-, where-, whither-, who-]soever. Usually unexpressed except by the subjunctive or potential mood. Also contraction for 1437. Internet Sacred Text Archive)
【離縁状を】 ἀποστάσιον ἀποστάσιον アポスタシオン apostasion {ap-os-tas‘-ee-on} (n-an-s 名詞・対中単)
1)離縁 2)離別する 3)離縁状
(G647 ἀποστάσιον Neuter of a (presumed) adjective from a derivative of 868 properly something separative, that is, (specifically) divorce: – (writing of) divorcement. Internet Sacred Text Archive)
マタ5:31; 19:7; マル10:4
【彼女に】 αὐτῇ αὐτός アウトス autos {ow-tos‘} (npdf3s 代名詞・与女3)
1)彼、彼女、それ(三人称の代名詞) 2)自身で、自分から、自分として(強調用法) 3)同じ同一の 4)まさに、ちょうど
(G846 αὐτός From the particle αὖ au (perhaps akin to the base of 109 through the idea of a baffling wind; backward); the reflexive pronoun self, used (alone or in the compound of 1438 of the third person, and (with the proper personal pronoun) of the other persons: – her, it (-self), one, the other, (mine) own, said, ([self-], the) same, ([him-, my-, thy-]) self, [your-] selves, she, that, their (-s), them ([-selves]), there [-at, -by, -in, -into, -of, -on, -with], they, (these) things, this (man), those, together, very, which. Compare 848. Internet Sacred Text Archive)
【渡せ】 δότω δίδωμι ディドーミ didōmi {did‘-o-mee} (vmaa–3s 動詞・命・2アオ・能・3単)
1)与える、あげる、差し出す、提供する、分け与える、賜う、施す、支払う 2)捧げる、供える、提供する、授ける、賜る 3)ゆだねる、渡す、許す、かなえる、置く
(G1325 δίδωμι A prolonged form of a primary verb (which is used as an alternate in most of the tenses); to give (used in a very wide application, properly or by implication, literally or figuratively; greatly modified by the connection): – adventure, bestow, bring forth, commit, deliver (up), give, grant, hinder, make, minister, number, offer, have power, put, receive, set, shew, smite (+ with the hand), strike (+ with the palm of the hand), suffer, take, utter, yield. Internet Sacred Text Archive)
【と命じられている】 ᾽Ερρέθη εἶπον エイポン eipon {i‘-pon} (viap–3s 動詞・直・1アオ・受・3)
1)言う、話す、語る、告げる、言いあらわす、述べる、呼ぶ 2)命じる、願う、尋ねる 3)~と呼ぶ、称する 4)語られたこと、言葉、発言、発話、話の内容 5)出来事
(G2036 ἔπω A primary verb (used only in the definite past tense, the others being borrowed from 2046 4483 and 5346 ; to speak or say (by word or writting): – answer, bid, bring word, call, command, grant, say (on), speak, tell. Compare 3004. Internet Sacred Text Archive)
† 英語訳聖書 Matt.5:31
King James Version
5:31 It hath been said, Whosoever shall put away his wife, let him give her a writing of divorcement:
New King James Version
5:31 “Furthermore it has been said, ‘Whoever divorces his wife, let him give her a certificate of divorce.’
American Standard Version
5:31 It was said also, Whosoever shall put away his wife, let him give her a writing of divorcement:
New International Version
5:31 “It has been said, `Anyone who divorces his wife must give her a certificate of divorce.’
Bible in Basic English
5:31 Again, it was said, Whoever puts away his wife has to give her a statement in writing for this purpose:
Today’s English Version
5:31 “It was also said, “Anyone who divorces his wife must give her a written notice of divorce.’
Darby’s English Translation
5:31 It has been said too, Whosoever shall put away his wife, let him give her a letter of divorce.
Douay Rheims
5:31 And it hath been said, Whoseoever shall put away his wife, let him give her a bill of divorce.
Noah Webster Bible
5:31 It hath been said, Whoever shall put away his wife, let him give her a writing of divorcement:
Weymouth New Testament
5:31 ‘It was also said, ‘If any man puts away his wife, let him give her a written notice of divorce.’
World English Bible
5:31 ‘It was also said, ‘Whoever shall put away his wife, let him give her a writing of divorce,’
Young’s Literal Translation
5:31 ‘And it was said, That whoever may put away his wife, let him give to her a writing of divorce;
Amplified Bible
5:31 “It has also been said, ‘Whoever divorces his wife is to give her a certificate of divorce’;
† 細き聲 聖書研究ノート
<また「妻をいだす者は離縁状を與ふべし」と云へることあり>
「姦淫してはならない」(マタイ5;27)について、イエスの教えは「離縁」の教え(申命記24:1)に及ぶ。
申命記24:1には、「人が妻をめとり、その夫となってから、妻に何か恥ずべきことを見いだし、気に入らなくなったときは離縁状を書いて彼女の手に渡し家を去らせよ」「彼女を去らせた最初の夫は彼女を再び妻にすることはできない」と定められている。
<妻をいだす者は離縁状を與ふべし>
申命記24:1 「人が妻をめとり、その夫となってから、妻に何か恥ずべきことを見いだし、気に入らなくなったときは離縁状を書いて彼女の手に渡し家を去らせよ」「彼女を去らせた最初の夫は彼女を再び妻にすることはできない」
「気に入らなくなった」は直訳で「彼女が彼の目の中に愛顧を見出さなくなった」(いのちのことば社「新聖書注解」)
申命記24:1 は「妻に何か恥ずべきこと」があり、妻を「気に入らなくなった」ときには離縁状を書いて家を去らせることを認める。その後この教えは、妻に特別「恥ずべきこと」がなくても、夫が妻を「気に入らない」という理由だけで離婚が認められるようになり、イエスの時代には離縁は日常的に行われるようになっていた。
「気に入らなくなった」(申命記24:1)は直訳で「彼女が彼の目の中に愛顧を見出さなくなった」(いのちのことば社「新聖書注解」)。ユダヤ教の文献には、ラビ・ヒレルが、離婚の条件として「料理がヘタなこと」を認め、ラビ・アキバが「より美しい女を見つけたこと」を離婚の条件に含めたことが残されている。
離婚について夫の側にだけ権利が認められ、妻に一切その権利が認められないのは公平に欠ける。イエスはこれについて、モーセは時代の状況に対応して「許した」のであって、「初めからそうだったわけではない」と語られている(マタイ19:3~9)。
時代は常に変動する。ある時代に善であったものが、別の時代には悪になることもある。「倫理」は「時代の倫理」として生きていなければならず、同時に「時代」を超えて働くものでなければならない。イエスはその両方に光をあてられるのである。
<離縁状>
ユダヤの離縁状には「見よ、なんじは、何人と結婚するも自由である」と書かれた。(キリスト新聞社「新聖書大辞典」) 離縁状は夫または代理人が書き、法廷で証人によって認定される必要があった。運用は厳格になされたが離縁の理由は厳密ではなかった。いつの時代にも「離婚」はそのように成立する。
<三行半>
群馬県太田市(旧尾島町)の縁切り寺として知られる「満徳寺」には、次のような「三行半」が残されている。
離別一札之事
一、深厚宿縁浅薄之事
不有私 後日雖他え
嫁 一言違乱無之
仍如件
弘化四年 国治郎 爪印
八月 日
常五郎殿姉
きくどの
読み下し:離別一札の事。一つ、深厚の宿縁、浅薄の事。わたくしあらず。後日他へ嫁すと(謂えど)も、一言違乱これなく。よってくだんの如し。弘化四年八月 日。国治郎 爪印。常五郎殿姉。きく殿。
意訳:離別状。深く厚いと思った宿縁は、実は浅く薄かったのです。双方の責によるところではありません。後日、他へ嫁ぐことになろうとも、一切異議無く、前言を撤回することはありません。以上。弘化4年8月 日。国治郎 爪印(爪印とは、親指の爪の縁に墨を塗ってつけた筋状の印。)。常五郎殿姉。きく殿。 (ウィキペティア 「三行半」)
† 心のデボーション
「『妻をいだす者は離縁状を與ふべし』と云へることあり」 マタイ5:31 大正文語訳聖書
「『妻を離縁する者は、離縁状を渡せ』と命じられている」 新共同訳聖書
「離婚」
離婚からは「整理をつけられない感情が生じる」と指摘されている。(ジョン・W・ジェイムズ/ラッセル・フリードマン『悲しみにさよならを言う方法』) その離婚が理不尽な夫婦関係から解き放たれるものであるとしても、なお、その魂は未解決の問題を抱えることになることを忘れてはならない。
† 心のデボーション
「『妻をいだす者は離縁状を與ふべし』と云へることあり」 マタイ5:31 大正文語訳聖書
「『妻を離縁する者は、離縁状を渡せ』と命じられている」 新共同訳聖書
「是故に人は其父母を離れて其妻に好合(あ)ひ二人一體となるべし」 創世記2:24 明治元訳聖書
「神の合わせたまえる者」
結婚に対して聖書は「男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる」(創世記2:24)と教え、牧師は結婚式で男女に「神の合わせたまえる者は、人これを離すべからず」と告げるのである。
† 細き聲 説教
「離縁状」
「『妻をいだす者は離縁状を與ふべし』と云へることあり」 マタイ5:31 大正文語訳聖書
「『妻を離縁する者は、離縁状を渡せ』と命じられている」 新共同訳聖書
「姦淫してはならない」(マタイ5;27)について、イエスの教えは「離縁」の教えに及ぶ。
申命記24:1には、「人が妻をめとり、その夫となってから、妻に何か恥ずべきことを見いだし、気に入らなくなったときは離縁状を書いて彼女の手に渡し家を去らせよ」「彼女を去らせた最初の夫は彼女を再び妻にすることはできない」と定められているのである。
聖書は結婚について、「人は父母を離れ、その妻に合ひて、二人のもの一體となるべし」として、創造の初めから「離すべからざるもの」であった。(創世記2:24 Ⅰコリント7:10,11)
結婚は、「神のかたちに創造された人間」の本質的な関係であり、「神のかたち」(創世記1:27)のあらわれとして、神と人間の関係にも及ぶのである。
したがって既婚者に対する「姦淫」は、結婚の絆を破棄するばかりでなく、神と人の絆を裏切る行為を意味し、モーセの律法は「姦淫」が認められたとき「離縁状」を渡すことを認めたのである。
「人が妻をめとり、その夫となってから、妻に何か恥ずべきことを見いだし、気に入らなくなったときは離縁状を書いて彼女の手に渡し家を去らせよ」「彼女を去らせた最初の夫は彼女を再び妻にすることはできない」申命記24:1
古代、パレスティナの社会では「離婚」は普通のことであり、夫は何の制限もなしに妻を離縁することができた。
その中にあってモーセの律法をいただくイスラエル人社会では結婚の絆はよく保たれた。
しかし、そのような状況のもとにあっても、イスラエル人を悩ませたのは「妻に何か恥ずべきこと」があり、妻を「気に入らなくなった」ときには離縁状を書いて家を去らせることを認めた律法の実際的な解釈であった。
「気に入らなくなった」(申命記24:1)は直訳で「彼女が彼の目の中に愛顧を見出さなくなった」(いのちのことば社「新聖書注解」)。ユダヤ教の文献には、ラビ・ヒレルが、離婚の条件として「料理がヘタなこと」を認め、ラビ・アキバが「より美しい女を見つけたこと」を離婚の条件に含めたことが残されている。
離婚について夫の側にだけ権利が認められ、妻に一切その権利が認められないのは公平に欠ける。
こうして、この教えは、妻に特別「恥ずべきこと」がなくても、夫が妻を「気に入らない」という理由だけで離婚が認められるようになり、イエスの時代には離縁は日常的に行われるようになっていたのである。
イエスはこれについて、モーセは時代の状況に対応して「許した」のであって、「初めからそうだったわけではない」と語られている(マタイ19:3~9)。
ユダヤの離縁状には「見よ、なんじは、何人と結婚するも自由である」と書かれた。(キリスト新聞社「新聖書大辞典」) 離縁状は夫または代理人が書き、法廷で証人によって認定される必要があった。運用は厳格になされたが離縁の理由は厳密ではなかった。
時代は常に変動する。ある時代に善であったものが、別の時代には悪になることもある。「倫理」は「時代の倫理」として生きていなければならず、同時に「時代」を超えて働くものでなければならない。イエスはその両方に光をあてられるのである。
(皆川誠)
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