C ガリラヤ及び北方地域の宣教
(ⅰ) 宣教開始
† 福音書縦観 「宣教の初め」 マタイ4:12~17
マタイ4:12~17 マルコ1:14~15 ルカ4:14~15 ヨハネ4:1~3
マタイ4:12~17
Matt.4:12さて、イエスはヨハネが捕えられたと聞いて、ガリラヤへ退かれた。 (ヨハネが捕えられた後、イエスはガリラヤに行き マルコ1:14)(イエスが、ヨハネよりも多く弟子をつくり、またバプテスマを授けておられるということを、パリサイ人たちが聞き、それを主が知られたとき、 4:2(しかし、イエスみずからが、バプテスマをお授けになったのではなく、その弟子たちであった) 4:3ユダヤを去って、またガリラヤへ行かれた。 4:4しかし、イエスはサマリヤを通過しなければならなかった。ヨハネ4:1~3)口語訳聖書
† 日本語訳聖書 Matt. 4:12
【漢訳聖書】
Matt. 4:12 夫耶穌聞約翰見囚、遂往加利利、
【明治元訳】
Matt. 4:12 イエス、ヨハネの囚(とらは)れし事(こと)を聞(きき)てガリラヤに往(ゆき)
【大正文語訳】
Matt. 4:12 イエス、ヨハネの囚はれし事をききて、ガリラヤに退き、
【ラゲ訳】
Matt. 4:12 イエズスヨハネの囚はれしを聞き給ひしかば、ガリレアに避け、
【口語訳】
Matt. 4:12 さて、イエスはヨハネが捕えられたと聞いて、ガリラヤへ退かれた。
【新改訳改訂3】
Matt. 4:12 ヨハネが捕らえられたと聞いてイエスは、ガリラヤへ立ちのかれた。
【新共同訳】
Matt. 4:12 イエスは、ヨハネが捕らえられたと聞き、ガリラヤに退かれた。
【バルバロ訳】
Matt. 4:12 イエズスはヨハネが捕らえられたと聞いたのでガリラヤに帰り、
【フランシスコ会訳】
Matt. 4:12 イエズスは、ヨハネが捕らえられたと聞いて、ガリラヤに退かれた。
【日本正教会訳】
Matt. 4:12 イイススはイオアンが囚はれたりと聞きて、ガリレヤに去れり、
【塚本虎二訳】
Matt. 4:12 イエスは(洗礼者)ヨハネが牢に入れられたと聞くと、(郷里)ガリラヤ(のナザレ)に引っ込まれた。
【前田護郎訳】
Matt. 4:12 彼はヨハネが捕われたと聞いてガリラヤに退かれた。
【永井直治訳】
Matt. 4:12 またイエスはヨハネの付(わた)されしことを聞き給ひしとき、ガリラヤに立ち退き給へり。
【詳訳聖書】
Matt. 4:12 さて、ヨハネが逮捕された<投獄された>と聞いて、イエスはガリラヤに引き揚げられた。
† 聖書引照 Matt. 4:12
Matt. 4:12 イエス、ヨハネの囚はれし事をききて、ガリラヤに退き、
[イエス、ヨハネの囚はれし事をききて、ガリラヤに退き] マル1:14; 6:17; ルカ3:20; 4:14,31; ヨハ4:43,54
† ギリシャ語聖書 Matt. 4:12
Stephens 1550 Textus Receptus
ακουσας δε ο ιησουσ οτι ιωαννης παρεδοθη ανεχωρησεν εις την γαλιλαιαν
Scrivener 1894 Textus Receptus
ακουσας δε ο ιησουσ οτι ιωαννης παρεδοθη ανεχωρησεν εις την γαλιλαιαν
Byzantine Majority
ακουσας δε ο ιησουσ οτι ιωαννης παρεδοθη ανεχωρησεν εις την γαλιλαιαν
Alexandrian
ακουσας δε οτι ιωαννης παρεδοθη ανεχωρησεν εις την γαλιλαιαν
Hort and Westcott
ακουσας δε οτι ιωαννης παρεδοθη ανεχωρησεν εις την γαλιλαιαν
† ギリシャ語聖書 Interlinear
Matt. 4:12
᾽Ακούσας δὲ ὅτι ᾽Ιωάννης παρεδόθη ἀνεχώρησεν εἰς τὴν Γαλιλαίαν.
᾽Ακούσας δὲ ὅτι ᾽Ιωάννης παρεδόθη ἀνεχώρησεν εἰς τὴν Γαλιλαίαν.
hearing Now that John was delivered up he departed to the Galilee;
† ギリシャ語聖書 Matt. 4:12
Matt. 4:12
᾽Ακούσας δὲ ὅτι ᾽Ιωάννης παρεδόθη ἀνεχώρησεν εἰς τὴν Γαλιλαίαν.
† ラテン語聖書 Matt. 4:12
Latin Vulgate
Matt. 4:12
Cum autem audisset Iesus quod Ioannes traditus esset, secessit in Galilæam:
And when Jesus had heard that John had been handed over, he withdrew into Galilee.
† ヘブライ語聖書 Matt. 4:12
Matt. 4:12
כַּאֲשֶׁר שָׁמַע יֵשׁוּעַ כִּי הִסְגִּירוּ אֶת יוֹחָנָן יָצָא אֶל הַגָּלִיל
† 私訳(詳訳)Matt. 4:12
【私訳】 「さて、彼〔イエス〕はヨハネが引き渡された<捕縛された、生命の危険にさらされた>と伝え聞き<知らせを受け、理解し、~を耳にして>、ガリラヤに立ち退かれた」
† 新約聖書ギリシャ語語句研究
Matt. 4:12
᾽Ακούσας δὲ ὅτι ᾽Ιωάννης παρεδόθη ἀνεχώρησεν εἰς τὴν Γαλιλαίαν.
【さて】 δὲ δέ デ de {deh} (cc 接続詞・等位)
1)ところで、しかし、さて、そして 2)しかも、そしてまた、なお、すると、また 3)次に、さらに 4)否、むしろ
【ヨハネが】 ᾽Ιωάννης ᾽Ιωάννης イオーアンネース Iōannēs {ee-o-an‘-nace} (n-nm-s 名詞・主男単)
ヨハネ ヘブライ名「ヤーゥエの賜物」
(バプテスマのヨハネ マタ3:1,2,6,11; マル1:4; 2:18; ルカ3:2,3; ヨハ3:23; 使徒10:37; 13:24,25; 19:3,4)
【捕らえられた】 παρεδόθη παραδίδωμι パラディドーミ paradidōmi {par-ad-id‘-o-mee} (viap–3s 動詞・直・1アオ・受・3単)
1)手渡す、引き渡す、捕える、手渡す 2)委ねる、任せる、預ける、託す 3)生命を死の危険にさらすこと 4)伝える、口頭で伝える 5)裏切る
マタ4:12; 10:17,19,21,22; 17:22; 18:34; 20:18,19; 24:9,10; 26:15,16,45; 27:2,18,26; マル9:31; 10:33; 13:9;,11,12; 14:11,41; 15:1,10,15 etc.
【と】 ὅτι ὅτι ホティ hoti {hot‘-ee} (ch 接続詞・完)
1)~ということ 2)なぜなら~だから、というのは~だから、すなわち 3)~であるから 4)というのは
【聞き】 ᾽Ακούσας ἀκούω アクーオー akouō {ak-oo‘-o} (vpaanm-s 分詞・1アオ能主男)
1)聞く、傾聴する、伝え聞く 2)耳に入る、知らせを受け取る、聞こえる 3)耳を傾ける、聞き従う、理解する 4)~と呼ばれる
マタ2:3,9; 7:24; 13:15; 17:5; マル7:14; 8:18; ルカ2:46; 5:1; 7:22; 8:18; 9:35; 19:48; 20:45; ヨハ5:24;9:31; 使徒3:22; 4:19; 12:13; 13:16; 15:12; 22:1; ロマ10:17; ガラ3:2,5; etc.
【ガリラヤ】 Γαλιλαίαν Γαλιλαία ガりらイア Galilaia {gal-il-ah-yah} (n-af-s 名詞・対女単)
ガリラヤ ヘブル地名「周辺」 パレスチナ北部地域を指す。(バークレイは「ガリラヤ」はヘブル語
「ガリル 環」からきているとする)ガリラヤ地方は異邦の民が多く居住し、ユダヤ人との混血も行なわれたところから「霊的暗黒の地」とされた。
マタ2:22; 3:13; 4:12,15,18,23,25; 15:29; 17:22; 19:1; 21:11; 26:32; 27:55; 28:7,10,16; マ1:9,14,16,28,39:3:7; 6:21: 7:31; 9:30; 14:28; 15:41; 16:7 etc.
【に】 εἰς εἰς エイス eis {ice} (pa 前置詞・対)
1)~の中へ 2)~へ 3)~まで 4)~のために 5)~に対して 6)~に向かって 7)~を目標にして 8)の間に
【退かれた】 ἀνεχώρησεν ἀναχωρέω アナこーレオー anachōreō {an-akh-o-reh‘-o} (viaa–3s 動詞・直・
1アオ・能・3単)
< ἀνά 戻る + χωρέω 進む
1)戻る、帰る、去る、後ずさりする、退く 2)退却する、引き下がる 3)危険を避けて逃れ去る、人目を避けて去る
マタ2:12,14; 4:12; 9:24; 14:13; 15:21 マル2:12,13,14; 12:15; 27:5; ヨハ6:15
† 英語訳聖書 Matt. 4:12
King James Version
4:12 Now when Jesus had heard that John was cast into prison, he departed into Galilee;
American Standard Version
4:12 Now when he heard that John was delivered up, he withdrew into Galilee;
New International Version
4:12 When Jesus heard that John had been put in prison, he returned to Galilee.
Bible in Basic English
4:12 Now when it came to his ears that John had been put in prison, he went away to Galilee;
Darby’s English Translation
4:12 But having heard that John was delivered up, he departed into Galilee:
Douay Rheims
4:12 And when Jesus had heard that John was delivered up, he retired into Galilee:
Noah Webster Bible
4:12 Now when Jesus had heard that John was cast into prison, he departed into Galilee.
Weymouth New Testament
4:12 Now when Jesus heard that John was thrown into prison, He withdrew into Galilee,
World English Bible
4:12 Now when Jesus heard that John was delivered up, he withdrew into Galilee.
Young’s Literal Translation
4:12 And Jesus having heard that John was delivered up, did withdraw to Galilee,
Amplified Bible
4:12 Now when Jesus heard that John [the Baptist] had been arrested and put in prison, He left for Galilee.
† 細き聲 聖書研究ノート
<イエス、ヨハネの囚はれし事をききて、ガリラヤに退き>
イエスはサタンの試みを退けられたイエスは、バプテスマのヨハネが国主ヘロデに捕えられ投獄されたと聞いて、危険をさけてガリラヤに退かれた。
<国主ヘロデ>
国主ヘロデは義兄弟ヘロデ・ピリポの妻ヘロデヤを妻としたことをバプテスマのヨハネに告発され、怒ってヨハネを捕らえ牢に閉じ込めた。ヘロデヤは娘サロメから酒席での舞の褒美にパブテスマのヨハネの首を求められ、ヨハネを殺害した。(マルコ6:17~29)
<マケラスの砦>
バプテスマのヨハネが幽閉されたのは「マケラスの砦」であった。
マケラスはヘロデが造営した7つの砦の一つで、死海東岸、キリヤタイム(「二重の町」の意味)民数記32:37(現在のキリベト・エル・ケレーアード)の西にある。
標高736メートルの険しい山の上に建てられている。山頂からは死海が眺められ、宮殿の円柱が残されている。
バプテスマのヨハネは、この深い谷(ワディ)と岩山と死海しか見えない砦の牢に幽閉され、首をはねられた。
<ヨハネの告発>
「捕らえる παραδίδωμι パラディドーミ」は生命の危険をともなう「引き渡し」であった。ヨハネはその危険を承知で国主ヘロデの悪を告発した。
<「開始」するために「退く」>
「退く ἀναχωρέω アナこーレオー」は「立ち去る、退く、後ずさりする」の意味。イエスはヨハネが捕らえられたと聞き、ガリラヤに退き、「宣教」を開始された(マルコ1:14)。 しかし、イエスの「ガリラヤへの退き」は「退却、逃避」にはあたらない。それというのも、「ガリラヤ」は国主ヘロデ(ヘロデ・アンティパス)の統治下にあり、その行政府テべリアはカペナウムの近くにあったからである。マケラスの砦イエスはヨハネを迫害している国主ヘロデのお膝元で宣教を開始されたのである。
「宣教」は、しばしば、最も危険なところで開始される。
<バプテスマのヨハネの墓>
マケラスの砦で処刑されたバプテスマのヨハネの遺骸は弟子たちが引きとられ、墓に葬られた。(マルコ6:26) その場所がどこかは分からない。
AD705年に建設され、現存する世界最古のモスク ウマイヤド・モスク(Umayyad Mosque, Arabic: جامع بني أمية الكبير)には当初からバプテスマのヨハネの墓があり、重要な巡礼地になっている。
† 心のデボーション
「イエス、ヨハネの囚はれし事をききて、ガリラヤに退き」 マタイ4:12 大正文語訳聖書
「ヨハネが捕らえられたと聞いてイエスは、ガリラヤへ立ちのかれた」 新改訳聖書
「囚われる」
「囚われる」の「囚」は「口 かこい」の中に「人」で、「捕られて牢に入れる」ことである。
人を閉じ込める「口 かこい」がある。国主ヘロデはバプテスマのヨハネを人里離れた岩山の要塞という「口 かこい」に入れたが、ヨハネの宣教を「口 かこい」に入れることはできなかった。
† 心のデボーション
「イエス、ヨハネの囚はれし事をききて、ガリラヤに退き」 マタイ4:12 大正文語訳聖書
「ヨハネが捕らえられたと聞いてイエスは、ガリラヤへ立ちのかれた」 新改訳聖書
イエスはガリラヤに退かれ、ガリラヤで宣教を開始された。
ガリラヤはガリラヤ湖西岸の南北80キロ、東西40キロの「狭い地域」である。ヨセフスによればガリラヤに「204の村があり、一万五千人の人口があった」という。(バークレー『マタイ福音書』)
狭いが人口の密集した地域であった。
ガリラヤ地方は肥沃な地として栄えたが、人口が増えるにしたがって、貴族や富裕層と貧しい住民との間に格差がひろがり、社会は不安定になり、反乱の発生しやすい状況にあった。
(ヘロデ・アンティパス治世の初期、紀元後6年には、ヒゼキアの息子のユダが、父の後を継いで農民の反乱(ユダの反乱)を起こしている。)
イエスは、その時代の「最も福音を求める地」から宣教を開始された。
† 細き聲 説教
「ガリラヤへ」
「イエス、ヨハネの囚はれし事をききて、ガリラヤに退き」 マタイ4:12 大正文語訳聖書
「ヨハネが捕らえられたと聞いてイエスは、ガリラヤへ立ちのかれた」 新改訳聖書
イエスが荒野でサタンの試みを退けられたとき、バプテスマのヨハネが国主ヘロデに捕えられ投獄されたとの報に接し、イエスは直ちに危険を避けてガリラヤに退かれた。
バプテスマのヨハネを捕えた国主ヘロデと戦うことを避けられ、エルサレムに遠いガリラヤに退かれるのは、単に危険を避けられる以上の意味がある。
イエスは宣教にあたって、まず、弟子たちを見出し、任命されなければならなかった。福音宣教は人に伝えるだけで成るものではなく、継続して伝え続け、導く者を必要とする。その準備のないままに地上の権力と戦うことがイエスの選ばれる道ではなかった。
そして、イエスの弟子たちは、宗教の中心であったエルサレム神殿、いわば中央からではなく、異邦人のガリラヤと呼ばれる、霊的に取り残された辺境の地から起こされたのである。
イエスはひたすらに「人間」の救済のために行動される。
(皆川誠)
コメント