俳句短歌2023-7~2023-9

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<2023.9.24>
夜話の 行きつ戻りつ 秋の宵
さやけしや 道路掃除に 子らも出て
雨戸閉じ 日ざしをさけて 籠り居る 用なき我は 一人午睡す(道子)
朝明けに 姿かたちも なき鳥の いづれの枝に 鳴くやかそけし
おろおろと こむら返りの 声あぐる 妻を見つめて すべなきわれか

サンピエトロ大聖堂 キリスト像

<2023.9.17>
秋暁に 聖書を 読める 書斎かな
末生りと 云へど 最後の 瓜を食む
わが歌を ときに「いいね」と 言いくれる 夫の励まし 共に学びつ(道子)
夕暮れの 色変はりつる 白壁に 木の影揺れて 閨に入るらし
蓮根に 竹輪を添へし 手料理の 恙なく来し 共八十路かも

<2023.9.10>
台風の 予報に避難す 虫急ぐ
使ひ来し 辞書を手入れす 秋の朝
猛暑日を 耐えて雨音 きくあした 老いて安けき 御言葉にあう(道子)
惜しむごと 頁をくくり 書を読める 身の幸せを 老いと知りしも
藜食む 遠き記憶は 匂ひ立つ 皿を囲める 幼なわれなる

サン・ピエトロ大聖堂(Vatican)

<2023.9.3>
長き夜や こすりて痛き まぶたかな
見へずとも 木の枝伸びて 銀河濃し
近づけば 犬柵ごしに 走り来て 面輪やさしく 我につきくる(道子)
購ひし ハンバーガーを 皿に置き 西洋風に 今日の食卓
勇ましく どうだ見たかと 南瓜割る 老いの心は ひたに幼し

<2023.8.27>
身を隠す すべひとつなし アメンボウ
蝉声に 鎮まりをりし チャペル裏
死の床に 立ちあうことも かなわずに 荼毘に付されし 兄を悲しむ(道子)
誘へる 花のあるなど われ知らず あはれを知らぬ 十六夜の月
近近に 抜きて捨て去る 庭草の 夏のおはりに なをも芽を出す

サン・ピエトロ大聖堂(Vatican)

<2023.8.20>
道おしへ わが悩みにも 歩を合はす
御言葉の 深きに黙し 茗荷食む
食卓の 向こうとこちら それぞれに 歌つくりおり 盆の休日(道子)
ひそやかに 人話すごと 夏の夜の 風入り来る 窓に立ちゐつ
足らざるは 欠けにはあらず 三日月の 今宵に魅せる 刻の満ち欠け

<2023.8.13>
はざかひを 見極め立つや 銭葵
ふぞろひの 種そのままに 瓜のびる
レントゲン 列の中より みっちゃんと 幼名でわれを呼ぶ やえ子ちゃん(道子)
見るほどに 黒き色なし 雲厚く 雨が来るなと 妻に声掛く
焚火には まことよろしき 木の枝を 束ねて運ぶ 塵集積所

サン・ピエトロ大聖堂(Vatican)

<2023.8.6>
おほきさを 問はず わが 畑甲虫
葵とふ 花見染めたる 八十路かな
二人して 植えし花木を 惜しみつつ 手入れやさしき 庭にととのう(道子)
誘はれて 妻と眺むる 満月の 打ち寄す波の ごとし叢雲
まとわりつ 離れぬ夜に 炎天の 息深深と こもる言霊

<2023.7.30>
意固地なり 大暑になにを 熱き珈琲
パソコンの 過熱ではかる 大暑かな
卵焼き 美味しくできて うれしいと 文あり祈る 厳しさ知れば(道子)
ふるさとの お山のかたち そのままに いつまであれや いつ日戻れる

サン・ピエトロ大聖堂(Vatican)

<2023.7.23>
風鈴の 音をまだ知らず 隣家の子
地と化して 老婆草引く 大西日
うたを詠む 心はなえて 沈む日は 重くはあらず ただに寂しい(道子)
地の影に 老いのかたちを 見ればこそ ままをわが身と なしつ歩める
つら見るに 年の積りに ふさわしき わが言の葉の いとど貧しき

<2023.7.16>
色褪めし 牧師の傘が 白雨行く
ゴキブリの 出でたるあたり 姿なし
覚えなき 花あり見れば 立ち葵 種もまかずに わが庭に咲く(道子)
雨が打つ 音の静かに 色変はる 家並の甍 窓に立ち見ゆ
妻引くに 力足らざる 草の根に 指かけ引けるを のこぞわれ

サン・ピエトロ広場(Vatican)

<2023.7.9>
迷ひゐる 心を削除 夏つばめ
尻向ける 妻の姿や 草むしる
足しげく 姿を見せし 友遠く なりても咲ける カーネーションの花(道子)
雲の間に 明るさあれば 遠雷と 草引く背中に 雨打ちはじむ
叢を 陰に小さく 野すみれは 花一輪の 原に色添ふ

<2023.7.3>
こはごはと 竹に垂らして 蛇の衣
しばらくを がくあぢさゐに 過ごしけり
日めくりに 日のあれこれを 書き記す せねば忘れる 八十路吉日(道子)
つらつらと 眺め眺めて かしこさの 一つも出でず あぢさゐの花
雨垂れの 音の変はりを 枕辺に 聞きつ眠れる われは幼し

コメント

  1. 皆川誠 より:

    サン・ピエロトロ大聖堂の写真はいずれも圧巻ですね。聖堂の入口なのでしょうか。人の大きさから聖堂の大きさが分かります。入口の上にあるラテン語COELIS ET QVODCVMQVE SOLVERIS SVPER TERAMは「天にあるもの地にあるもの、すべては解決される」の意味でしょうか。この門をくぐって人は礼拝に導かれるのでしょう。黙示録21:1の「また私は、新しい天と新しい地とを見た」を思い起こします。皆川

    • hiroshi より:

      そうなんです。圧巻というのが相応しいことばです。美しさや完成度の高さももちろんです。これだけの聖堂を建てた人々の権威,あるいは権力,そして信仰はどういうものだったのだろうかと思いを馳せていました。