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牛は羊と共に重要な家畜として聖書に出て来ます。

牛が増えることは神の祝福を意味しました。(申命7:13) 牛は羊とともに神への「全焼のいけにえ」としてささげられる「和解のいけにえ」でした。(出エジプト20:24 レビ1:2)

牛はユダヤ人の「財産」であり、所有する牛の数はそのまま社会的な地位の高さをあらわしたのです。(創世記12:16 伝道2:6)

牛は耕作や荷車の牽引などの力仕事に欠かすことができない家畜で、ユダヤ人の生活になくてはならない家畜でした。(民数7:3) 律法は申命22:10に「牛とろばを組みにして畑を耕してはならない」と規定しています。牛もろばもそれぞれに役割があり、それにふさわしく扱うべきで、不釣り合いな扱いをすべきではないという意味です。

食肉としての牛

牛はユダヤでも古くから、食肉用として、また乳用として主要な家畜でした。

律法には牛の料理に関しても丁寧な規定が定められています。

その一つは「子やぎを、その母親の乳で煮てはならない」(出エジプト23:19)というもので、ユダヤ人は肉を乳で料理することを止め、厳格な人々は肉料理をもった器で乳を飲むこともしなかったのです。

牛乳には肉の繊維を分解する効果があります。そこで硬くなった牛肉を牛乳に浸してから焼くと柔らかい肉になるのですが、聖書の時代にはこの方法はご法度でした。「牛肉のクリーム煮」などもダメです。ロシアの「ビーフストロガノフ」も残念ながらパスです。

もう一つの律法の規定は、「肉は、そのいのちである地のあるあるままで食べてはならない」(創世9:4)というものです。フィリピンには肉を血で煮た「Dinuguan(ディニュグアン)」という伝統的な料理があって、美味しくいただけるそうです。旧約聖書の時代にはとても考えられない料理ということになします。それどころか、現代の「血のしたたるステーキ」もいけません。

勿論、これらの律法が禁止した料理は、律法の時代の終りとともになくなり、現代では有効なものではありません。「聖書の食べ物」として、その調理法を通してその時代を直接的に知るために学んでおきたい事柄なのです。

子牛の料理

アブラハムが日の暑いころマムレの樫の木のそばで天幕の入り口に座っていると3人の人が彼のそばに立ちます。

アブラハムは旅人と思って、走っていき、地にひれ伏して礼をし、迎えます。そして牛の群れから「柔らかくて美味しそうな子牛」を選び、若い僕に渡して料理させ、マムレの樫の木の下で、凝乳と牛乳と子牛の料理を3人に振舞ったのです。彼らと話すうちにアブラハムはこの3人が御使いであり、神御自身であることを知るのです。(創世記18:1~10)

アブラハムが御使いとともに食べた「子羊の料理」は興味深いものがあります。しかし、残念なことに創世記には具体的に記されていません。

ユダヤ人家庭でよく食べられる肉料理に「ハミン(チョレント)」があります。「ハミン」は「温かい」という意味のヘブライ語からきたもので「温かい煮込み料理」のことです。安息日には「安息日のハミン」が料理されます。アブラハムの「子羊の料理」は「ハミンだったかもしれないな」などと考えて作ってみるのも悪くはありません。

「安息日のハミン」は玉ねぎとジャガイモと豆を子牛の肉と煮込みます。塩と胡椒で味付け、蜂蜜を加えます。

ただし、アミンは弱火で長時間煮る料理ですので、アブラハムが3人の旅人を「急いで」接待したということを考えると、時間的に無理があるかもしれません。

あるいはユダヤ人に「シシリク」と呼ばれる串焼きかもしれません。子牛の「シシカバブ」は臭みがなくて美味しいそうです。

マムレの樫の木の下で、出来たばかりの子牛の料理を3人の旅人にすすめるアブラハムの周囲に漂う肉料理の匂いを想像しながら聖書を読むのは楽しいものです。

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