漢字で「にんにく」は「大蒜」と書きますが、「蒜 ひる」は匂いの強いネギ科の植物の総称として、「野蒜」とか「大蒜」などに使われるお馴染みの野菜です。ニラとともに中華料理に欠かせません。
「葫」とか「忍辱」といった漢字も使われます。(「忍辱」は「困難を耐え忍ぶ」の意味だそうです)
「にんにく」は古代から栽培されていて、エジプトでは紀元前3200年頃すでに栽培されていたことが知られています。
イスラエルの民とにんにく
伝説ではエジプトに移住する前のヤコブの時代に、にんにくが食べられていたといいますが、聖書にはその記述はありません。
聖書には、モーセに導かれてエジプトを脱出したイスラエルの民が過酷な荒野の旅の途上でエジプトでの豊かな食生活を思い出して嘆いた言葉の中に登場します。
「エジプトで、ただで魚を食べていたことを思い出す。きゅうりも、すいか、にら、たまねぎ、にんにくも」民数記11:5
古代エジプトではピラミッドの建築など、砂漠地帯での過酷な労働に「にんにく」は、肉の臭みを消して、うま味を加えてくれる貴重な香辛料でしたし、なによりも、強壮剤としての効用からもなくてならない野菜だったのです。
古代ギリシアでは兵士が戦場にゆくときは各自が食料を携帯する必要があり、「にんにく」は準備すべき食材に数えられたということです。戦いに勝利するのに「にんにく」の力が不可欠だったのですね。
イスラエルの民が「にんにく」の味を覚えたのはエジプトでの強制労働の時代だったようです。そして、エジプトの強制労働から解放されると、食べ物が制限される荒野で、食べ覚えた「にんにく」の味だけが思い出して、「ああ、肉が食べたい。にんにくが食べたい」という不満になったのでしょう。
強烈な匂い
「にんにく」は好きでも、あの強烈なにおいはどうも…、という人は多いはずです。
ヨーロッパの吸血鬼伝説では、吸血鬼はにんにくの匂いが苦手で、人が亡くなると死人が吸血鬼にならないように墓に大量のにんにくを添えたりしたそうです。「にんにく」の匂いには吸血鬼も逃げ出すというわけです。
民族によっては魔除けとして、「にんにく」を身体にすりこんだり、首に下げたりする習慣も見られます。
ただ、吸血鬼伝説や魔除けと、聖書はまったく関係がありません。
食べた後の強烈な匂いもなんのその、ユダヤ人は「にんにく」を好んだようです。そのため、ローマ人やギリシャ人はユダヤ人を「にんにく臭い」と笑ったそうです。(「新聖書大辞典」より)
にんにく料理
「にんにく」は肉料理の香辛料として、肉料理を中心とする民族に広まったようです。
日本には8世紀頃、中国から伝わったと思われますが、肉を食べるようになるまでは薬や強壮剤として扱われたようです。
肉料理では、みじん切りにして油で炒めて肉を焼くというお馴染みの料理法が主流ですが、ユダヤ人料理ではサラダなど新鮮な野菜ににんにくを使用されます。
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