「聖書の食べ物」のシリーズに「こおろぎ」があるのを驚かれるかもしれません。そうです。初秋から庭の隅でリーリーリーと鳴き始めれば耳を澄まさずにはいられない、あの「こおろぎ」です。
「たのしさはふえし蔵書にちちろ虫」 水原秋櫻子
歌に詠まれる「こおろぎ」は「つづれさせ」(この虫の声を聞いたら綴れを刺して秋の用意をせよの意味)、「ころころ」、「ちちろ」など色々の呼び名で親しまれています。
「こうろぎ」は古くは「きりぎりす」とも呼ばれていました。羽根をこすりあわせて泣くのは雄で、雌は鳴きません。
「糸つむぐ車の下やちちろ鳴く」 虚子
聖書の中のこおろぎ
聖書に「こおろぎ」の名はレビ記11:22の一ヵ所のみです。
「それらのうち、あなたがたが食べてもよいものは次のとおりである。いなごの類、毛のないいなごの類、こおろぎの類、ばったの類である。」 レビ記11:22 新改訳聖書
聖書には9種類の蝗が挙げられているが、レビ記11:22はそのうち食べることの出来る4種類の蝗が記されているのです。「こおろぎ」と訳されたヘブライ語は「ハルゴル」で蝗の類であったと思われます。
「こおろぎや箸で追いやる膳の上」 狐屋 と詠まれるほどに、日本人に愛されたことろぎですが、イスラエルの人々には箸で追い払うよりも、捕まえて食べてしまおうかと考えるところです。
「こおろぎ」は「蝗」と一緒に語られているところから、その料理法も「蝗」と一緒だったようです。
おそらく、「こおろぎ」も串刺しにして火であぶり塩をふって食べたのでしょう。
バプテスマのヨハネは荒野で「蝗と野蜜」を食べたといいますから、「こおろぎ」の味も知っていたことでしょう。
蝗とともに「貧者の食料」でした。(「蝗」については聖書の食物 009 いなご をご覧ください)
イスラエルの人々には、野の草のかげで鳴くこおろぎの声を聞くという楽しみはなかったのでしょうか?
その辺りを知りたいと調べてみましたが、聖書にそうした記述が見当たりません。
一説に、「虫の音」を聞き分けるのは日本人とポリネシア人だけだといいます。世界の多くの人々には「虫の音」は雑音にしか聞こえないというのです。「虫の音」に情感を動かすのは日本人特有のことなのかもしれません。
次世代の食料
国際連合食糧農業機関は「昆虫食」を世界の人口増加による食料危機に備えての非常食として取り上げています。
アメリカには「こおろぎ」の粉末を原料にしたプロテイン「クリケットフラワー」を販売する企業もあるそうです。
世界で食べられている昆虫は世界1400種類にものぼるそうです。
昆虫は少ない飼料で飼育できるので、資源が乏しい宇宙での動物性食物として注目されているそうです。将来の宇宙ステーションの食堂ではメインディッシュになるかもしれません。
※ アイキャッチ画像は,蚕料理です(中国,丹東にて撮影)
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