今回の聖書の食べ物は「こじか」です。
「こじか」と聞けば、「子鹿物語」の人間と鹿の悲しい物語を思い出すかもしれませんが、ここでの「こじか」は「仔鹿」のことではないようです。
聖書の「こじか」
「こじか」は申命記に食べることのできる動物として名前が出てきます。
「雄じか、かもしか、こじか、野やぎ、くじか、おおじか、野羊など」 申命記14:5 口語訳聖書
口語訳聖書で「こじか」は、明治元訳聖書・新共同訳聖書「小鹿」、新改訳聖書・フランシスコ会訳聖書「のろ鹿」、バルバロ訳聖書「赤しか」と訳され、統一されていません。
ソロモン王の食卓
Ⅰ列王記には、ソロモンが全イスラエルの王となったとき、王宮で一日分として調理された食料の量は次のように記されています。
「さてソロモンの一日の食物は細かい麦粉三十コル、荒い麦粉六十コル、肥えた牛十頭、牧場の牛二十頭、羊百頭で、そのほかに雄じか、かもしか、こじか、および肥えた鳥があった。」 Ⅰ列王記4:21~22 口語訳聖書)
ソロモンの王宮では一日約2000リットルの穀物と牛30頭、ヒツジ100頭が料理されたのです。年間にすると穀物73万ℓ、牛1万1千頭、ヒツジ3万6千頭になります。それに加えて「雄鹿、かもしか、のろじかと、肥えた鳥」の肉がソロモン王の食卓に並べられたことになります。
想像に絶するソロモンの栄華を思わせるソロモンの食卓ですが、その中でも「こじか」は通常の牛やヒツジに対して、特別料理として振舞われたようです。
日本かもしか
「こじか」と訳されるヘブライ語は「ヤハムール」で、新聖書大辞典は「かもしかであろう」とし、砂漠地帯に棲む「砂漠羚羊」の中の小さな種類ではないかと推測しています。(新聖書大辞典)
「羚羊」は偶蹄目ウシ科の哺乳類のうち、ウシ亜科・ヤギ亜科を除いた、シカに似た姿のものの総称です。足は細く、岩場に立ち、走れば容易に捕まらない動物です。
日本では「羚羊」は「かもしか」と混同されるようですが、「かもしか」はヤギ亜科で、ウシ科の「こじか」とは別の動物になります。
ちなみに、「日本かもしか」は日本では天然記念物で、捕獲することも、食べることも出来ません。
(しかし、隠れて「食べてみた」という話は昔からあって、それによると「鍋料理」は臭くてダメで、ひれ肉のステーキは美味しいとのことです。「かもしか」の名前は「鴨のように美味しい」から来ているという説もあります。あくまでも「うわさ話」ということで…)
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