「コエンドロ」は和名で、英名は「コリアンダー coriander 学名:Coriandrum sativum 」です。
タイ語では「パクチー」です。
和名の「コエンドロ」はポルトガル語 coentro から来たものだそうです。
聖書の中のコエンドロ
聖書には荒野でイスラエルに与えられた「マナ」について、「それをマナと名づけた。それはコエンドロの種のようで、白く、その味は蜜を入れたせんべいのようであった」と記されています。(出エジプト記16:31 新改訳聖書)
さらに民数記11:7には「マナは、こえんどろの実のようで、色はブドラクの色のようであった」とも説明されています。新共同訳聖書は「ブドラク」を「琥珀」と訳しますが、「真珠」との説もあります。
(聖書に「コエンドロ」は上記2カ所のみです)
コエンドロの葉
「コエンドロ」は草丈30~60㎝ほどの一年生草で、白い花を咲かせます。白い花びらにピンクの花弁のある奇麗な花です。
葉や茎に独特な香りがあり、カメムシや南京虫の匂いのようだといいます。「コリアンダー coriander」はギリシャ語で「カメムシ」を意味するκορίαννονから来たものです。その香りから中国語では「香菜」と呼ばれます。「中国パセリ」とも言われるそうです。乾燥させて香辛料に使われます。
流石に生葉の「カメムシや南京虫」の匂いには好き好きがあって評価はわかれるところです。
茎や葉の匂いは細かく刻むとさほど強くはなく、肉や魚料理の臭みをとる効果もあって、抵抗なくいただけるそうです。
タイ・ラオスの料理のでも、「コエンドロ」は主菜というよりも、あくまでも薬味として使われるようです。
ちょっとした誤解
それにしても、「コエンドロ」と「マナ」が似ているという出エジプト記の記述には少々違和感があります。
カメムシとか南京虫とかの匂いのする「コエンドロ」と「白く、その味は蜜を入れたせんべいのようであった」というマナがどうしても重ならないのです。
しかし、それはすぐにわかることでした。マナに似ているというのは、コエンドロの「真珠のように白い花」のことで、葉や茎の「その味」が似ているというわけはないのです。
さらに言えば、聖書には「コエンドロの種」と明記されていて、たとえられているのは「コエンドロの葉や茎」ではありません。
コエンドロの「カメムシや南京虫」の匂いという強烈な表現につられて、「種」もそうだと連想するのは間違いというわけです。
コエンドロの種
「コエンドロ」の実は熟すると葉の匂いはなくて、レモンに似た甘い芳香があり、油菓子やビスケット、クッキーなどの風味づけとして用いられるのです。荒野でイスラエル人に与えられた「マナ」は「コエンドロの種のように、白く、その味は蜜を入れたせんべいのようであった」のです。
「コエンドロ」は地中海東部原産で、イスラエルの家庭料理の香辛料として古くから知られ、その葉や茎は肉料理の香りづけとして、その「種」は「甘いパンや焼き菓子」が作られたようです。
熟したコエンドロの種を入れて煮たてた紅茶も美味しいそうです。
種は柑橘類の香りがあり、香辛料として愛用されます。
現代もカレーには欠かせない香辛料の一つになっています。その意味では私たちの舌に馴染んだ食材の一つでもあるのですが、葉や茎や根はあまり出回らないようです。
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