いのんど

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「いのんど」はセリ科の一年草で、ギリシャ語名「アネートン」、ヘブライ語名「ケツアーク」、英名「ディル dill」、和名「いのんど」又は「ういきょう」と呼ばれます。

旧約聖書には、農夫が土地を起こし、地面をならしたら、「ういきょうを蒔き、クミンの種を蒔き、小麦を…、大麦を…」とあります。「いのんど」は古くから毎年植えられる作物だったことがわかります。(イザヤ28:25) 「いのんど」の種の収穫には脱穀機は使わず「杖で打った」ことが記されています。(イザヤ28:27)

新約聖書には律法学者、パリサイ人たちが律法を拡大解釈して、律法には定められていない農作物にまで十分の一税を納めることで信仰の篤さを強調したが、実は「正義、あわれみ、誠実」の律法の教えの中心をおろそかにしていると責められています。律法学者、パリサイ人たちに拡大解釈された農作物リストの中に「いのんど」がありました。(マタイ23;23)

いのんど

「いのんど」は草丈が50~80㎝で葉は細い糸状でやわらかく、8月に枝先に黄色の花を傘のように広げ、10月には楕円形の実をつけ、種がとれます。

茎や種に芳香があり、生薬や香味料として古くから栽培されてきました。

BC4000年代のエジプトで薬草として栽培されていたことが知られています。

乾燥させた葉茎を「ディルウィード」、種は「ディルシード」と呼ばれます。

いのんど料理

「ディルウィード」や「ディルシード」は「ディルピクルス」として瓶詰めのピクルスでおなじみの香辛料ですね。ピリッとした刺激が魅力的な一品です。特有の風味や辛さが胃を刺激して唾液の分泌を促し消化をうながします。胃もたれのあるとき「ディルシード」を数粒口に含んで噛むとよいそうです。ちなみに「ディル  dill」の語源とされる「dilla」には「なだめる」の意味があるそうです。

「いのんど」は魚料理につかわれることも多く、「魚のハーブ」という言葉もあるくらいです。

ロシアでは茹でたジャガイモに「いのんど」の葉を刻んでふりかけるシンプルな食べ方もあるそうです。

カレー料理のスパイスにもおすすめです。

生薬

「いのんど」の果実を陰干しした「ディルシード」は「生薬」として使われます。食べ過ぎ、食欲不振、胃もたれなどに有効とされます。「ディルシード」を直接食べたり、紅茶にうかべて飲むとよいそうです。

果実を収穫した後の葉茎を入浴剤とすると身体がよく温まるとか。お試しください。

「ディル  dill」の花言葉は「知恵」だそうです。身体の不調をととのえ、身体から具合の悪いものを追い出し、疲労を回復し、健康をうながしてくれる深い知恵をもつ草なのですね。

安息日のチキンスープ

ユダヤ人の家庭では安息日に食べる「安息日のチキンスープ」というのがあります。それぞれの家庭で作られて伝えられてきた安息日の料理です。鶏手羽元に人参や玉ねぎを煮込み、いのんどなどの香辛料を加えたスープで心の温まるスープです。子どもたちは安息日のスープを食べながら父親の聖書物語を聞いたのかもしれません。

「安息日をおぼえて、これを聖なる日とせよ」 出エジプト記20:8 新改訳聖書

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