「いちじく桑」はヘブライ語「shiqmah シクマー」、ギリシャ語「sykomoreaシュコモレア」と呼ばれるくわ科の樹木です。英語はsycomore figとなります。
教会学校でザアカイ物語を聞いた人はすぐに「ザアカイのいちじく桑の木」を思い出すでしょう。その「いちじく桑の木」です。
聖書にはギリシャ語「sukeスケー いちじくの木」と呼ばれるものと、「sykomoreaシュコモレア いちじく桑の木」の二種類の「いちじく」が見られますが、別々の木です。
「sukeスケー いちじくの木」は普通のいちじくでスーパーで入手できますが、「sykomoreaシュコモレア いちじく桑の木」のいちじくはやや特殊で、販売する店も少なく簡単には手に入りません。
シュコモレア いちじく桑の木
「シュコモレア いちじく桑の木」は桑の葉に似ていて、実はいちじくなので、その名があります。
「シュコモレア いちじく桑の木」は幹1~2m、樹高15m、幅20~25mにも広がる「巨木」です。
横に太い幹をのばすので、ザアカイはやすやすと木に登り、葉の影からイエス様を一目見ようとすることができたのでしょう。(ルカ1~6)
「いちじく桑の木」のヘブライ語「shiqmah シクマー」はエジプト・シリア原産の「エジプトイチジク(シカモア)」から来ています。「いちじく桑の木」は腐りにくく耐久力が強いので、食用としてよりも材木としての利用価値が高い木です。エジプトではファラオの棺にいちじく桑が使われます。現代でもミイラをおさめたいちじく桑の棺が発掘されるそうです。聖書には、「杉の木を低地のいちじく桑の木のように大量に用いる」(Ⅱ歴代1:15)とあるように、家具や建材として栽培される貴重な木だったのです。
いちじく桑の実
「いちじく桑」の実は幹や枝などあらゆるところに房状につきます。食べることはできますが、普通のいちじくにくらべると味がおとりますが、年数回収穫できるところから「貧者の実」とされています。羊飼いたちは野性いちじく桑の木に登って実をとります。
いちじく桑の実は実の中に雄雌の花がある陰花果で、「イチジクバチ(psen)」と呼ばれる蜂が実の中に卵を産みつけ蛆虫のこぶをつくるため、そのままでは食べられません。そこで収穫の3~4日前に小さな刃物や爪で実に傷をつけるのです。それは実を刺激して熟させ、合わせて傷から虫が這い落ちる効果があったようです。
アモスは羊飼いでしたが、いちじく桑の栽培をも仕事としていましたが、神に召されて預言者になっています。「わたしは家畜を飼い、いちじく桑を栽培する者だ」(アモス7:15)「栽培する」のヘブライ語は「未熟の実に(爪または刃物で)傷を入れることを意味する」(新聖書大辞典 キリスト新聞社)
アモスは羊を飼うかたわらいちじく桑の手入れをする職人でもあったのでしょう。
いちじく桑の実の食べ方
いちじく桑の実は寒さには弱いものの年数回収穫できるので貧者にはありがたい果樹でした。果物としてそのまま食べるのが一般てきでしたが、乳の出をよくするために葉と実を牛に与えられています。
地は貧者を忘れない。枝を低く広げ、実をつけて、飢えた人がだれでもとって食べるようにする。
日本で「いちじく桑の実」を食べることは容易なこととは言えません。機会があれば口にしてみたいものの一つです。私自身が「貧しき者」であることを忘れない為に。
「わたしは豊かにシオンの食物を祝福し、その貧しい者をパンで満ち足らせよう」 詩篇132:15 新改訳聖書
薬用効果
「いちじく桑の実」には薬用効果があり、火傷、腫瘍、破傷風、いぼ、皮膚病などに用いられます。アフリカでは下剤として用いられることもあるそうです。
コメント