油菓子

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旧約聖書に神の宮に仕える祭司が任職するときの捧げものの中に「油菓子」が見られます。「油を入れた輪型のパン」(出エジプト29:23)で、ヘブライ語で「レヘブ セメン」と呼ばれています。

これはスペインのチュロスのように油で揚げるお菓子というよりも、粉に油を混ぜて焼いて作るようです。

ユダヤ人に限らず、甘いお菓子は世界中の人々を魅惑してやみません。それにしてもアラブのお菓子はいずれも濃厚な甘さです。砂漠の厳しい環境に生きるには、疲労回復に「甘いもの」が欠かせないのかもしれません。それにしても、砂糖と蜂蜜を煮詰めたように甘いお菓子に出会うこともすくなくありません。これぞアラブのお菓子ですね。

聖書の「油菓子」は、ユダヤ人が荒野を旅した40年間に食した「マナ」と関連しているのかもしれません。

モーセを先頭にエジプトを脱出したイスラエルの民はエリㇺとシナイの間にあるシンの荒野に到達し、そこで食料の危機に直面します。神は民の訴えを聞かれ、「天からのパン」を食物として与えられます。それは「コエンドロの種のようで、その色はブドラハ(薄黄色)のようで、その味はおいしいクリームの味のよう」でした。(民数11:7~9)

人々はこの不思議な食物を味わい、「これは何だろう(マナ)!」と互いに言い、「神からのパン」を「マナ(これは何だろう!)」と名づけたのです。

40年間の荒野彷徨の後に、イスラエルの民はヨシュアに導かれてカナンに入国し、それにともなってマナはなくなり、ユダヤ人はその年の「カナンの地で収穫したもの」を食べるようになります。(ヨシュア記5:12)

ユダヤ人は家庭で「油菓子」を食べるとき、荒野の40年間と「天からのパン マナ」を偲び、いのちの源である神さまを思ったのではないでしょうか。

聖書はただ疲れをとる濃厚な甘さのお菓子というよりも、「マナ」の甘さを控えた上品な油菓子を神さまへの捧げものとしたのかもしれません。

ルガラー Rugelach,ハヌカ Chanukkah

残念ながら、祭司の任職に捧げられた「油菓子」がどのようなレシピであったかを知ることは難しいのですが、ユダヤ人の「油菓子」として今も食べられているものの中に、「ルガラー Rugelach」がありますのでご紹介します。

これはユダヤ教の祭日である「ハヌカ Chanukkah」の期間に食べるお菓子です。

「ハヌカ」は 紀元前2世紀にイスラエルはシリアのギリシャ軍によって占領されます。神殿は破壊され、土足で踏みにじられます。ついに、この弾圧にユダヤ人が反乱を起こし、紀元前165年にエルサレム神殿を奪回し、開放します。ギリシャ軍は神殿を徹底的に汚し、破壊していましたが、燭台(メノラー)の油壺が一つだけ汚されずに残されていました。油壺に残された油は一日分にも満たない僅かの量でしたが、灯してみるとそれから8日間も燃え続けたといいます。この奇跡を記念して「ハヌカ」が定められ、「光の祭り」と呼ばれたのです。このハヌカの期間に食べられるお菓子が「ルガラー」です。

ルガラーの作り方

「ルガラー」は三角の焼き菓子の生地に、チョコレートを巻き込んで作ります。チョコレート以外にもクリームチーズ・ジャム・シナモンシュガー・ドライフルーツなどバリエーションは様々です。仕上がりはミニクロワッサンのようになります。

「ルガラー」は中東の焼き菓子「マームール mamoul」(ペースト状にしたドライフルーツやナッツを生地で包んで焼くクッキーのようなお菓子)」だったとの説もあります。

クッキー生地に「クリームチーズ」を入れて、「レーズン・オレンジ・ウォールナッツ・シナモンパウダー」などをトッピングし、生地を巻き込み焼き上げます。

イスラエルの民はエジプト滞在中に「マームール」を食べてその味を知っていたかもしれませんね。甘さの強いお菓子にくらべて「マームール」は砂糖をあまり使わないそうです。

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