ノアの子孫

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大洪水の後、神は「ノアと、その息子たち」と契約を結ばれ(創世記9:8~17)、「生めよ。ふえよ。地に満ちよ」と祝福されます。(創世記9:1)

「イエスキリストの系図」では、「神の祝福」がノアの3人の息子セム・ハム・ヤペテの系図として実現していく様子が描かれています。生まれてくるノアの子どもたちは神の契約の実現でもあるわけです

「イエスキリストの系図」のノアの子孫の系図は創世記10章からおこされたものです。そこにはセム・ハム・ヤペテの子孫がどのように「地に満ちて」いったかが、地名を含めて記録されています。

ノアの子どもたちの名は、そのまま「氏族の名」になっているのも少なくありません。それらをすべて地図上に特定することは困難ですが、ある程度の場所をしめすことはできます。そこで、セム・ハム・ヤペテの子孫の拡散を大まかですが、掴み取ることができるように白地図に三つの円で示してみました。

創世記10章の系図はヤペテ・ハム・セムの順に記録されています。それは遠いものからはじめて大切なものを後に置く手法によるものです。以下、それに従って見ていきます。

ヤペテの子孫

ヤペテの子孫は「海沿いの国々」(創世記10:5)に拡がります。「海沿い」は黒海・カスピ海の沿岸を意味します。いわゆるインド・ヨーロッパ人種の祖先となるわけです。

ヤペテの子どもたちの行先を現在の国名にすると次のようになります。

ゴメル(トルコ)、マゴク(北の果て)、マダイ(イラン)、ヤワン(トルコ西部)、トバル(シリア)、メシェク(トルコ)、ティラス(ギリシャ)

創世記に「神はヤペテを広げ、セムの天幕にすまわせるように」と予言されたように、ヤペテの子孫は黒海からエーゲ海沿岸に広がり、それぞれの「国々」と「国語」に拡散していきます。(創世記10:5)

ハムの子孫

ハムは父ノアへの敬いを欠いた行為から「のろわれよ。カナン。兄弟たちのしもべらのしもべとなれ」と告げられます。(創世記9:20~25)

ハムの四人の子どもたちはイスラエルからアフリカに拡がり、エジプトを中心にした北アフリカのハム族の国々を生み出します。

クシュ(エチオペア)、ミツライム(エジプト)、プテ(リビア)、カナン(イスラエル)。

中でも注目すべきはクシュの子ニムロデです。ニムロデはエチオピアから紅海を渡って(あるいは陸路でエジプトからパレスティナを経由して)メソポタミア(イラク)に進出し当時の世界の主要な都市を築き、「地上で最初の権力者」となります。(創世記10:8~12)

 さらに、重要なのはカナンです。その名のとおり、カナン人としてパレスティナに定着し、後にアブラハムがこの地に入り、さらにエジプトから脱出したイスラエルの侵攻を受けることになります。

セムの子孫

セムの子孫は「東の高原地帯」(メソポタミア)に定住します。(創世記10:30)

ノアは「ほめたたえよ。セムの神、主を。カナンは彼らのしもべとなれ」とセムを祝福します。(創世記9:26)

セムの子らはエラム(イラン)、アシュル(イラン)、アルパクシャデ(サウジアラビア)、ルデ(トルコ)、アラム(イラク)に定着します。

セムの子孫はメソポタミアの地に定住し、子孫を残していきます。その中心には「セムの神」があり、やがて、テラがウルからカナンの地を目指して出発し、その後、アブラハムがカナン人のカナンに入国することになるわけです。

「イエスキリストの系図」にあるノアの子孫セム・ハム・ヤペテの三つの系図は、洪水後、私たちが思うよりも早く、そして想像以上に広い地域に拡がったことがわかります。それは「生めよ。ふえよ。地に満ちよ」との神の言葉がいのちを生み出し、育む力として働くことの力強い証になっているようです。

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