俳句短歌2021-10〜2021-12

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<2021.12.26>
聖堂に 入る人ありて 冬木立
味噌汁の 椀に日の射す 初冬かな
さまざまな わずらいあれど 御支えに 思いをはせて 一日を祈る(道子)
まこと主は ふるきことばは あらたまの 昇る日のごと 海を引き裂く
わが妻は 小さき手もて われの手を おほきと云へり ストオブの前

<2021.12.19>
日は長く 影また長し 書架の壁
タアサイの 葉のひろがりの 賴もしき
朝夕に 小かぶ啄ばむ 鴉二羽 ガラス戸越しの 庭に羽ばたく(道子)
冷えし身を 溫めてくれる 冬の日に 手をかざしをり 文字を書く指
明日には ストオブを出しませう ふたりして 夜を暖かく むかへませう

<2021.12.12>
ことをはり 鎌洗いけり 冬の川
銀杏を 探して人の かがみける
心定め ゆだねて横たう 病院の 工事現場の ごとき密室(道子)
後ろから 來る妻待ちて 錢湯の 木戸をくぐれる 落葉踏む音
三秋を 過ぎにけらしも 銀杏葉の 黃の明るさは われを慰む

<2021.12.5>
冬めくや 教会の 尖塔白し
主にあへば ささげしものを 蜜柑むく
川沿いを 夕日に向かう 夫の背を 見送りわれは 公園にまつ(道子)
日に幾度 妻と笑へる 老いの日の 子どものごとき たはひなきこと
腰痛し 妻云ひくれば 見るわれの なすすべもなき 年の夕暮れ

<2021.11.28>
生眞面目に 舌にものせて 蕪漬
荒るる足 妻に差し出す 夜半かな
救急車 遠くにきくも 病む兄の 臥所を思う 安けくあれと(道子)
誘はれて 滿天星の 色變はり 日に燃えあがる 一片を見つ
妻ともに そぞろ步ける 公薗の 人居らずにも 搖れるブランコ

<2021.11.21>
見へぬけど 屋根のあたりか 秋の月
柿の實は もうありません 鳥の鳴く
柿もみじ 見るひまもなく 裸木となり つもる落ち葉に 夕の鐘きく(道子)
つれづれに 文讀みたれば 朝の日に 霜ほどけしや 朧影見ゆ
飮み頃の 茶をもつ妻に 筆とめて 二言三言 聲かけ添へる

<2021.11.14>

虫の音や 御堂の影の 慎ましき
食べごろを 記してありき ラフランス
話すこと ないと言いつつ 長電話 なぜか明るい 一人居の義妹(道子)
落葉踏む 人に音あり お御堂の 内にこもれる 空のしづけさ
月の弧の 地球の陰を 見るわれの 影の中なる 淡き月光

<20021.11.7>
とめどなく 物語りをり 秋の夜
興梠や 今年も來ぬに 安否問ふ
歯はなくも 食べられるぞと すぐり菜を 届けてくれし 老いのはざかい(道子)
からからと 乾いた殻の 鞘音を 聞く楽しみぞ 耳寄せにける
柿の葉の 落つる音聞く 風のなき ものみな鎭む 夕暮れの頃

<20021.10.31>
聖堂の 庭掃き淸む 秋の蝶
とり終へて 他家に見事な 柿を見ゆ
我が性を 疎むことなき 夫ゆえに われ我が性に 向きてこの年(道子)
かくすれば かくなることと 知り得べき 若き未熟を 今に引き繼ぐ
何處より 湧き立つ數ぞ 蜻蛉飛ぶ 何處に消へし 今日の夕暮

<2021.10.24>
秋晴れの 御堂にひとり ゐたりけり
口あけて 惚け顏する 十三夜
うす衣を まとえるごとき 十三夜 こののち幾夜 夫とあおがん(道子)
十三夜 「後の月」とも 辭書引きて 妻持ち來たり われに敎うる
捨てがたく 石に刻める ふくらうを 庭木の下に そつと置く妻

<2021.10.17>
久方に 身を伸ばし採る 熟柿かな
忍び寄る 足の音のごとき 秋霖
朝の日は 庇をくぐり 部屋の中 老いし二人を ことほぐがごと(道子)
洗濯の 閒に妻は 氣に入りの 椅子に座りて 歌を詠みをり
どの屋根に 姿隱して 鳴く鳥や われに向かひて もの云ひつのる

<2021.10.10>
炒り豆の 爆音近し 妻の顔
殘り蚊を いかにせむとや 牀の中
夕暮れは 日々に早まり 変わりゆく 常のことなれ 我はさみしき(道子)
王冠を 戴く花の 氣髙さを おかれ給ひし 神ぞ埜に出ず
日はすでに 隱れてのぼる 時を待ち われに現はる ものをそなへし

<2021.10.3>
秋淸むや マグニフィカトと 外の雨
芥子菜の 種蒔き終へて 雨嬉し
気がつけば 膝の痛みも 忘れおり 畑の中に 魂の安らう(道子)
柿の實の おすそ分けです 二つ三つ かたくはあれど 召されさぶらへ
幾らかの 糧を求めし 自轉車の 妻はそろそろ 歸りくる頃

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