俳句短歌2020-7〜2020-9

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<2020.9.27>
秋の夜や 月見ず月を 話しけり
異国の 人のつくれる 案山子立つ
あげはちょう 野花の光り 渡りゆき いずこの原に 草泊りせん(道子)
妻ともに 足を洗へる 縁台の 南の空に 星あるを見ゆ
夕餉前 さみしからむと 幾粒の 豆をもちくる 妻の足音

<2020.9.20>
ゆく夏の 起伏をこへて 草しげる
芥子菜を 蒔き終へ道に 灯りつく
言いたきを 伏せたるままの 夏過ぎて そっと近づく 秋のけはいは(道子)
崩れ落ち 崩れ落ちして 洞門の 若狭の海に 道開けをく
瓜の香の 書斎に入りて 夏の日の 夕餉の音に 刻改まる

夫婦亀岩,福井県若狭湾国定公園

<2020.9.13>
芋蔓の のびゆく先や 人の畑
やうやうに 季節に入りて 柿落ちる
こおろぎの 頻りに鳴ける 窓ぎわに そっと近づく 夫の肩ごし(道子)
こほろぎの 鳴きつづけるを 妻と聞く 風呂場の外の 草叢の中
夜をかけて 鳴き続けたる こほろぎの 明けて姿の なきは寂しき

<2020.9.6>
ふれもなく いきなり来たぞ 夏の雨
秋茜 垣根と化して もの思う
わが老いを 見つむるごとく 玄関に 手づくりしたる 埴輪おかるる(道子)
思はずも 安く買へしと わが衣 妻はひろげて 値札を見せにき
穴あきて 畑に捨ておく 唐茄子は 割れては 美味く 熟しゐるかも

<2020.8.30>
打ち寄せる 波のごとくや 百舌鳥の空
麦笛の 音出るまでを 立ち止まり
「さても」と言う ことばを使い たく思う さても貧しき わがうた心(道子)
今日中に 歌詠みますと 昼下がり 視線のむこふに 妻は座れる
いづこかで つくりしあざを 夜話に 語れる妻は わりと真顔で

<2020.8.23>
あらためて もの見直せる 端居かな
炎天に 息絶へ絶へや 枝蛙
自生えなる 大きなゴーヤ いただきて 並べ置き見る イーゼルの前(道子)
子を育て ゐしときこそが 楽しかり 妻の問ひに 母応へしとふ
看護師の 注射打つ手に 緊張の 思ひを隠せぬ 妻でありたる

<2020.8.16>
見ていろと 草矢打つ わが力みかな
蝶蝶が 花なく飛ぶや 隅の畑
白ユリは 庭の青葉を ぬきんでて 炎昼高く 咲きて香し(道子)
草いきの こもれる庭に 風はこぶ 皐月中頃 薄雲の空
柵かこふ 畑の真中に しはぶきの 一つ聞こへて 人はゐるらし

<2020.8.9>
一雨の 道に捨てらる 紙マスク
暑き日に 熱き珈琲 無風の破
夏空を こがれて耐えて 庭の木に ジジッと鳴きて 蝉しずまれり(道子)
来年の 苺の苗を 掘りあげる 夏の日射しの 中に妻見ゆ
わが庭の 雨はあがりて あかときに 妻の移せし ガーベラ三つ

<2020.8.2>
隣家より トトロの太鼓 送り梅雨
初蝉の 一声鳴ける 坪の庭
畑仕事 腰なだめつつ 夫とわれ 今日の分だけ 恵みいただく(道子)
おだやかを 水の畔に 飛ぶ蝶の 遊ぶがごとく 妻と歩ける
噴水の ふちに座りて 持ち来る 甘き水飲む 妻の休日

<2020.7.26>
茅花引く 菫もともに 垣の下
身を伏せる ネギを立てをり 夏に入る
わが父は 牛一頭を 引きつれて まだ見ぬ母と めおとになれり(道子)
あやにくに 雨降りはじむ 玄関を 傘ひろぐ 妻窓に見送る
今晩は カレーでよいかと 尋ねくる 異存はないと 妻は知りつも

<2020.7.19>
紫陽花や 海の滴を ためにけり
亡き母の 塩の加減や 小豆たく
「なにしてるの」 交わすことばは 垣越しの 幼とわれの 不思議な時間(道子)
やや強き 風吹きけるに 剪定の 鋏を持ちて 友は来ませり
足弱き 人曳くらしき 老ひの音 消へゆくまでを 窓に立ちゐる

<2020.7.12>
なつかしや 田一枚の 泥加減
足濡れて 飛び立つ雀 梅雨の空
さりげなく 予後告ぐ義妹の 声かなし 窓打つ雨を 一人ながめつ(道子)
薬湯に せむと増やせし どくだみを やっかひものと 今は根を断つ
FMの ラジオを消して こんなにも 静かだったと 気づく午後四時

<2020.7.5>
満天を 想ふて閉じる 二階窓
胡瓜もむ 音も香りも 二人分
夫の引く 雨戸の音に 光さし わたしの空が あいさつをする(道子)
夕立に 急ぎて戻る 道半ば 傘もち来たる 妻のありたり
隣家の 去年のトマトの 種らしき 芽出にけり わが庭の中

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