俳句短歌2020-4〜2020-6

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<2021.3.28>
一日を 惜しや惜しやと 春蚊飛ぶ
茶を飲めば 影も茶を飲む 冬日かな
椅子にかけ いつの間にやら 夢うつつ だあれもいない 私の時間(道子)
あの鳥は とんびなるやと 問ふ妻に 否よと答ふ われもわからず
若菜茹で 手にしぼりゐる 妻われに 去年の畑の 土を語りぬ

<2021.3.21>
春の蚊を 手で振り拂ふ 土手の空
水仙や 素知らぬ顏の 盜み聞き
「おはよう」と 交わす笑顔の あたたかさ 今日の一日を つつむことだま(道子)
花柄の 割烹着のまま 妻の手が 聖書をめくる 聖日の午後
馬鈴薯の 種植ゑし日に 陌歳の 老女逝きしと 人の告げ來る

ミツマタ(日光)

<2021.3.14>
春雷を 抜けて本屋に 辞書を買ふ
貝よせや さりげなく置き さくら貝
手をふれば 応えるごとく グライダー 心通わす 春の利根川(道子)
利根の土手 手をふる妻にグ ライダア 高度を下げて 應へてくれき
菜の花の 土手を左に てふてふの 花追うごとく 妻と歩める

<2021.3.7>
春鳥の 來るや立つをや せわしなき
木の芽雨 掴めぬものか 子らせがむ
古たんす 軋む音にも なつかしき 母おもいだす 土間のある家(道子)
ふたりして 正常だよねと 言ひ交はす 輕く老ひゆく わが身愛ほし
オムレツの 半熟卵は うまく割れ 子どもであれば 聲上ぐところ

<2021.2.28>
菜畑に 妻の姿は 埋まりけり
霜圍ひ 解かるを待てる 屋根の陌舌鳥
久々に きく雨音の 心地よさ 外の面に 冴ゆる さざんかの花(道子)
長き夜を 手縫ひのマスク 爺と婆 ああだかうだと 今だにならず
一日を 一つの世とは 思ひけむ 明日には明日の 今ぞありける

<2021.2.21>
ものおぢを しない子だねと ハクセキレイ
菜花摘む 場所を 探せる 散歩かな
支えられ 支えていつしか 五十年 来し方見れば 池のおしどり(道子)
一時間 庭のフェンスの 細道に 佇みてをり 妻の受診日
珍しき 書を讀むわれに をはりまで 行けと內なる 聲ぞありける

<2021.2.14>
不意打ちを 喰らはしゆけり 春一番
春月の 庭に出づるか 暖とるか
ヒヤシンス 霜おく庭に 芽を出しぬ 季はしゅくしゅくと 色かさねおり(道子)
何の日か 覚へはなくも 祝日を 明日にひかへる 小草生月
珈琲の かほり立つ辺に 妻たちて 窓のあかりに 和歌を読みゐる

<2021.2.7>
恵風に なりすましたり 隣りの子
薺引く 手に縄文の 土ほこり
朝明けに 老いしからだの 声をきく 痛みもほけも 今日のわたくし(道子)
鉢植への 花にも少し 菜に少し 妻水くれ動く 冬の朝
静けさに 凭りつつ月の 青白き 光の中に 淡き黄の花

<2021.1.31>
枯蓮や 年経て黒し 去年の色
坂道の 庭にはみ出し 福寿草
名をきけば 「ひかちゃん」という 隣の子 三つになった 私の友だち(道子)
百舌鳥を待つ 忘れ路たどる 再びの なれ忘れしも われは忘れじ
冬日射す 書斎の床に 妻のもつ 茶の湯気ゆらり 影またゆらり

蘇州(中国)

<2021.1.24>
羽ばたきの 音残しけり 寒雀
曇り窓 手で拭ひをり 雪時雨
不器用に これまで生きて それ以外 生きえぬ我と なして老いゆく(道子)
朝からの 風をさまらず 君が来て 運ばれきしと われは思へり
俯きて 歩くがわれの 癖となり 朗らかなるを 人は知らずも

<2021.1.17>
背中だけ 生きてゐるよな 日向ぼこ
しもやけを われもと見せる 夫婦かな
顔なじみ 年ふるごとに とだえゆく 枯生のむこうに 夕陽をのぞむ(道子)
聞き覚へ ある幼子の 声聞きて 妻は云ふなり「あの子来れり」
野の原の 価値なき花の 静さよ 装はぬものに のぼる朝の日

ハインリヒ ・ ヘルツ塔,ハンブルク(ドイツ) 

<2021.1.10>
はじき合ふ ものなく静か 独り独楽
枯菊を 集めて人の 改まる
霜のふる 庭のしげみの 日だまりに 逝き人くれし ノースポール咲く(道子)
真夜中に 布団のずれを 直しくる われ醒めをるを 妻は知らずも
脱衣所の 籠の中には 今脱ぎし われといふもの 畳まれてをり

リューベック(独)

<2020.6.28>
初茄子や 油の爆ぜる 音一つ
今日からは 日脚短く わが身かな
通り雨 打たれるままに 草を引く 気づけば 広がる 空のまぶしさ(道子)
われよりも 早く寝入れる この頃の 妻の寝息を 数へつ眠る
朝すでに 勤務時間を 過ぎており 外人労務者 一人歩ける

<2020.6.21>
白蝶が 飛び去る空の 高さかな
目薬を さす耳元に 夏の雨
病えて 足ひく友が 鍬を打つ はかり知れない 思いを畑に(道子)
茄子苗に 糸張りめぐらせて ここまでは 来てはならぬよ 鴉わが友
週末に 孫呼び寄せる 隣家に 来たねと妻と 居間に聞くわれ

<2020.6.14>
雷鳴に 驚きもせず 百合の花
あめんぼう 水辺の月に 入りにけり
川風に 心そよめく 夏のはじめ 利根の渡しに ひと日をあそぶ(道子)
薄き虹 川面に映へる 大利根の 空を飛ぶ鳥 妻は指さす
深き川 流れる音も 波もなく 妻とわれとの 思ひを運ぶ

<2020.6.7>
くらべれば わが玉葱の 可愛げな
茗荷の 子探りにゆける 夕餉まえ
群れもせず ハクセキレイは さびしげも 見せず近づく われの足もと(道子)
飲み残す コーヒーカップに 湯を注ぎ 珈琲色の コーヒーを飲む
あまりにも 心うばはる 月なれば 妻を呼ばふか ひとりで見るか

<2020.5.31>
根切り虫 仇かへさず におかぬ仲
めずらしく 妻と寄り添ふ 昼寝かな
通るたび 空き家の庭に なごり花 たたずみ思う 里山の友(道子)
コンビニの 移転の跡に 椅子据へて 讃美歌の 聞こへる南米教会
静まれる 皐月の畑に 妻とゐて 得難き時の しずやかな風

<2020.5.24>
土用芽を 落とせる虫や 口惜しき
菜の花や 咲くならとどけ 土手の空
ささやかな 老いの暮らしを いとおしむ 若葉の光 つばくらめ鳴く(道子)
馬鈴薯の 葉の盛んなる 地の中に 小さく白き 芋は生まれし
隣室の 呼び出し音に 近寄れば すでに受話器に 妻語りをり

<2020.5.17>
かげらふの 音聞きそむる 草の陰
雁引いて 今海上の 羽音かな
のど元を 過ぎてしまえば 健やかに あっけらかんと 老いの日はすぐ(道子)
晴れるなら 人なき土手の 花を見に 誘へる妻に 行かむと答ふ
蕪漬けの そりゃあわかるさ 二日目と 三日目と古いのと

<2020.5.10>
幾時を 数へつ咲くや 野の菫
艶やかに ひこばえしたる 黄楊の株
誰もみな 心かくして 番をまつ 待合室の 外は夕立(道子)
納豆の 醤油は二個を 一つにし 味噌は薄めの 朝の食卓
さやの実の 色添ふ飯の 染皿に 手をさしのべつ 春雷を聞く

<2020.5.3>
珈琲の 味を確かめ 露の朝
小雀が 群れ遊びをり ドックラン
雨もよう 物干竿に 百舌鳥の来て 鳴き交わしおり 束の間のこと(道子)
たんぽぽの 綿毛の玉を 一息に 半分飛ばし 妻は笑いつ
手をひろげ 危ふげに 来る子のやうに 遊びてみたし 休日の午後

<2020.4.26>
人影に 老いの姿や 春日和
ほととぎす 川向うまで とどけとや
パッヘンベル カノンの調べ 憂き心 とき放ちゆく この世のしじま(道子)
床磨く 手はそのままに 妻の聞く 蜘蛛の糸のCD われは立ち聞く
一日を 出でず過ごせる この部屋に 四季にも似たる 色はありけり

<2020.4.19>
さみしさを 野に遊ぶなり 距離とりて
ぶらんこを 引き上げられて 風通る
病院に 行きし夫まつ この日暮れ 用なき庭に 幾たびか立つ(道子)
往来で立ち話する妻を道に残して帰宅する 空蒼し
一つでも 習ひてみたき 海波の 失せては戻る 詩の心は

<2020.4.12>
あらためて 妻を呼びたり 春の月
お前には お前の貌あり 柴櫻
内こもり 定めなき日の 一日を 声なつかしく 義妹と語らう(道子)
夫婦には ほどよきかさの さや獲りて 帰りく妻の 朝の明るさ
胸さわぐ 夢に目ざめて このままに 寝てよきかと 枕を変へる

<2020.4.5>
雨あがり あっけらかんと 土筆かな
畑打つや 一鍬ごとの 石の音
美しき 山並みのごと むら雲の 変わりゆく空 あくこともなし(道子)
芋蔓を 放ち置かるる 冬畑を 色吐き染めて 霜の降れ居る
ブロッコリー 茹でて洗へば 青虫の 一つ出でくる 水桶の中

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