俳句短歌2019-1〜2019-3

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<2019.3.31>
春の雨 音静やかに 宵の口
しばらくは さくらさくらの 句会かな
利根川の つつみに菜花 つみゆけば 水面の空に グライダー浮く(道子)
ブロッコリー 収穫のあと 抜く前の 急ぎ花見る 淡き黄の色
いぬふぐり 地に青色の 空見せて ここに遊べと 手を振りてをり

<2019.3.24>
花なくも ヨセフの月の 蕾かな
告知祭 寿ぐ桜 咲にけり
覚えなき 紫一輪 日だまりに 春ともないし クロッカス見ゆ(道子)
野の花の 打たれしあとの 残り菜を 摘める媼の 声のひそけさ
グライダー 引くモーターの 音響く 利根の河原は 生きづきにけり

<2019.3.17>
一蹴りで 越冬飛蝗 失せにけり
北国に 雪はおろして 花曇
弥生雛 とどめておかん うつし絵に 亡き母・妹の 面影ありて(道子)
夕方に 舌が痛いと いふほどに 今日のあなたは 少し陽気で
終日を 雨にすごせる 暗部屋に 電子書籍とふ 本を開けり

<2019.3.10>
蕗の薹 畑仕事の 帰り際
石楠花の 花咲くまでの 日和かな
朝光に 洗えるごとき 毛づくろい 軒に寄り添う 二羽のむくどり(道子)
三歩五歩 雀跳ね飛ぶ その軽き 音の響ける 朝の清しき
あんちゃんの やうな医者ねと 物言ひを 真似て聞かせる 妻の通院

<2019.3.3>
去年の花 なほ名を知らず 咲きにけり
寒の雨 捨て大根の 泥洗ふ
朝霧に かすむ屋並みも 陽に吸われ うつつとなりて 時うごきだす(道子)
うろうろし 部屋を歩きて 歌を詠む われに黙して 妻は語らず
寝る前に こむら返りの 予感して 頓服を飲む 妻の喉口

Appia街道,イタリア ローマ

<2019.2.24>
シクラメン しみじみ聞くや 外は雨
朝霧の 景色を見たり 美しき
人もなき 社の白梅 咲きみちて 母逝きし日の 風香りくる(道子)
玄関で 女はすぐには 出られんと 妻は宣ふ 常待つわれに
梅を見て 腰を下ろして しばらくの 間を妻と ほんやりすごす

<2019.2.17>
折れ竹の 始末や地下に 茎のびる
かく望み かく退けたき 寒さかな
嫁ぎゆく 吾娘ことほぎて 縄文の 母つくりしや 耳かざり見ゆ(道子)
さほどには 頭に効くと 思へねど 妻持ちくれる チョコレート食む
焼畑の 絶へて久しき 黒土に 白き灰汁まく これぞとばかり

<2019.2.10>
曇天を ものともせずに シクラメン
地下草の 時をうかがう 土凍る
亀のごと 歩みし吾を おきざりに 音なく回る 銀の秒針(道子)
三月前 茶色の種で ありしもの 今ストーブの 鍋の大根
新婚の 朝は激しき 雪なるを 窓の雫を 拭ひつ二人

Mysoru Palace, インド

<2019.2.3>
会堂の 花とりかへて 声冴ゆる
湯気立ちて 窓に現る 景色かな
赤城山 遠くにみつつ 夫と行く 静かな野道 咲くほとけの座(道子)
この朝も わがサンダルを 履きたがる 妻の足には おおき過ぎるに
ブレイクは 熱いココアを 藍色の カップと決める 書斎の真奥

<2019.1.27>
聖日の 暖炉に集まる 家族かな
キンカンを まるごと砕く 歯の白し
蠟梅の ひともと咲きて 冬ざれの 庭すがやかに 香たちわたる(道子)
末成りの 年越しかぼちゃ 汁に入る 一つ残れる いのちありけり
頭によしと 聞きてピーナツ 食べはじめ 殻剥くわれを 妻眺めゐる

サンピエトロ大聖堂(東武ワールドスクェアにて)

<2019.1.20>
路地裏の ここにも咲くや 福寿草
急坂を こへゆく人ぞ 枯茨
どこまでも 続く家並みの このあたり 田を耕せし 父母愛し(道子)
小豆炊く 少少多めの 味見して まだまだかたいと 又味見する
金網に するめ焼くごと すとをぶに 手を炙りゐる 妻と並べる

<2019.1.13>
今日のパン ありつきたりや 寒雀
茎立菜 つまむ日のくる 朝ぼらけ
この年も 老いの燈心 かきたてて 君をよすがに 歌詠みつがん(道子)
去年の野を 占めて咲きたる 仏の座 行方を探す 妻の後行く
風強く 途中でかへす 散歩路の 風なき道を 探りつ帰る

<2019.1.6>
靴紐を 少しかために ミサ始め
凍土(いてつち)に 沈まぬ子らの 身の軽し
静かさを 味わいいとう 元日に 心かたむけ 夫と目をとづ(道子)
よく笑ふ 妻のこの夜に 特別な ことなきことの 幸ぞ賜る
この年の 手帳持ち来る 友ありて 埋むべきますの 白さ眩しき

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