俳句短歌2018-7〜2018-9

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<2018.9.30>
朝寒や 失せ物探す 思案顔
はずれ年 木守柿にも 手をのばし
季におくれ 鉄砲百合の 咲きにおう 雨の庭辺の ほのあかり(道子)
栗焼きて 堅き皮剥き 甘皮を 取り去るまでの 作業に声なし
本当は 仕事をしたく ないという 床屋の男 わが髪を切る

<2018.9.23>
妻の膝 やや近づけり 秋近し
短夜の 信仰談義は きりもなく
変わりなき 今日という名の 幸せに 気づけば庭は とりどりの秋(道子)
一回り 大きい鍋で ジャムつくる 日照りの夏の ブルーベリー
小走りで 道路掃除に 行く妻を 洗濯終えた チャイム呼びとむ

<2018.9.16>
日覆いに 近ずく犬の 目の優し
私なら ここにいるのに 夜半の秋
しわ多き 節くれた手に もろもろの 思いを重ね 虫の音を聞く(道子)
あなたとは ニンジンの芽に 差があると 妻は誇るも 我はよそ見る
ややつらき こと聞く午後の お茶受けに シュークリームを 選びて帰る

<2018.9.9>
片陰の 芝にさしかう 涼少し
部屋よりも 日よけの 裏のお接待
文絶えて おぼろなり ゆく友いかに 庭にのぼれる 上弦の月 (道子)
トマト棚 取り去る跡の 狭き地に 抜くを忘れし 細き草這う

San Francisco

<2018.9.2>
浴衣着て姿涼しく夏の月
何告げる ことはなくても 夜の秋
夏の夜を それぞれすごす 食卓の あちらとこちら あなたとわたし(道子)
枝揺する 風吹きたれば 転がれる 地にいくたりか 青き柿の実
年ごとに わずかに縮む 身の丈を 止めんと気張る 身体測定

San Francisco

<2018.8.26>
樹の陰を 探して歩く 炎暑かな
手のしわの 話題でもたす 夏の夜
明け暮れの 生き歌に 詠み足るを 知る老いととのえる 今日の一日(道子)
良い時に 来たねと妻と ラジオ聞く モーツアルトの ファゴットと チェロ
小骨刺す 喉の痛みに 驚きて 芋呑み込める 朝の珍事

Pleasanton(米国)

<2018.8.19>
窓に入る 風一揺れの 暑さかな
残り火の キャンプ ファイヤー 友照らす
遠雷を きくもおしめり なき日暮れ 夕星いずる 畑に草引く(道子)
秋茜 群れ飛ぶ畑の 帰り道 指さす妻と 足止め眺む
灼熱の 土焼け渇く 白畑に われ再びの 種を蒔きたり

<2018.8.12>
教会に つられて来しや 糸とんぼ
手を触れば 何を隠そう 含羞草
追想の ネジ巻きもどす オルゴール ひたに生きたる 時を奏でて(道子)
雨來ると きつめに摘まむ モロヘイヤ かがめる妻と 遠雷を聞く
尺取りの 急ぎ歩きに 見ほれては 少し歩幅を 延ばしみるかも

<2018.8.5>
寝返りの 床また熱し 熱帯夜
炎天の 教会の クルス光る
歌によむ 大和ことばの 意味たずね 夫と選びし 古語辞典引く(道子)
みことばに 身を整えて 朝浄めすが しき思い われに先立つ
瓜売りの 声懐かしく 友来たる 朝切りとりし 黄の明るさは

<2018.7.29>
杖になる 前の藜の 美味さかな
竹藪に 蝉鳴きはじむ 畑帰り
新しき よしず求めし その朝音 なく涼し 通り雨くる(道子)
吸う水の 少なき畑の にが水を 身にたくわえて 胡瓜花咲く
むきになり 言葉重ねど 妻の目に 眠気宿れる そこが潮時

<2018.7.22>
雑草の 芽を塞ぎけり 芋の蔓
席ごとに 団扇を配る 牧師かな
くも膜下 病を押して コンサート 老いの入り舞い 七十路や君(道子)
芋の葉の 枯れはじむれば 真白にも 渇ける土に 露降りませよ
一日を 取り損ねれば 白瓜の 如き胡瓜を 畑に捨て置く

<2018.7.15>
牧師とて あらぬ姿に 夏来たる
気を入れて のどに水雲の 酢を落とす
生垣の 刈り込み終えて あかね雲 ほっと一息 はや暮れそめぬ(道子)
豪快に 餡餅つくる 母の手の 仕草を真似る 妻は嬉しげ
暗がりに 自動停止の タイマーを 妻さぐりおり 扇風機動く

<2018.7.8>
五月雨や 音静やかに 堂の屋根
喜雨の 畑おくらの 花の色深し
わが立てる この地に遠世の 人の声 土器手にとりて 物語せん(道子)
鳥よけの 網をくぐりて 妻のとる トマトは赤し 笊に受けとる
足の爪 整いくれし 妻ありて 明日蒔く種の ことなど語る

<2018.7.1>
分冊の ヨハネを読めり 通学路
芋ほりの 盥の水に 月涼し
庭すみに 気づけば熟れし ブルーベリー 鳥も下りて 夏ならんとす(道子)
説教と 薪ストーブの 爆ぜ音の 響くチャペルの 伝道集会
閉じこもり 聖書調べる 仕事場に 妻運び來る 初トマト赤し

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