聖書ノート「いのちの書」

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ルカ10:20

πλὴν ἐν τούτῳ μὴ χαίρετε ὅτι τὰ πνεύματα ὑμῖν ὑποτάσσεται, χαίρετε δὲ ὅτι τὰ ὀνόματα ὑμῶν ἐγγέγραπται ἐν τοῖς οὐρανοῖς.

口語訳聖書

「しかし、霊があなたがたに服従することを喜ぶな。むしろ、あなたがたの名が天にしるされていることを喜びなさい」。

関連聖句

ダニエル12:1  詩篇56:8  黙示3:5; 13:8  ルカ10:20  詩篇69:28  黙示2015

天に「いのちの書」があり、名を刻まれる者は大いなる祝福を受ける。しかし、「いのちの書」から名を消されることは、自らのいのち(存在)の根源を失う。このことは現代社会において、「自分とは何か?」という問いに答えを見いだせず、自己喪失だけでなく、未来に対する確かな方向を見失い、その代替えとして物質と権力の豊かさを自己の価値として追及する、いわば「いのちの書から名を消された者」としての人間の苦悩と深く関わるものである。では、聖書の「いのちの書」とは何か、それに名を刻まれるとはいかなることであろうか。

Ⅰ 旧約聖書における「いのちの書」

「その時あなたの民を守っている大いなる君ミカエルが立ちあがります。また国が始まってから、その時にいたるまで、かつてなかったほどの悩みの時があるでしょう。しかし、その時あなたの民は救われます。すなわちあの書に名をしるされた者は皆救われます。」 ダニエル12:1 口語訳聖書

大天使ミカエルが立ち上がるとき、人間は、かつて歴史になかったほどの「苦難の時」が始まる。しかし、「あの書に名をしるされた者は皆救われます」とダニエルは告げる。(ダニエル12:1) ダニエル書における、「あの書 ἐν τῷ βιβλίῳLXX」とは、「神の書(記録)」であり、天にあって、苦難とさすらいのことごとくを「数えあげ」、「書き記し」、流す涙を「涙の革袋」に神自らが蓄え、記憶される「いのちの書」のことである。(詩篇56:8)

ここで、「いのちの書」に記録されるのは、人間の苦悩である。神はそのことごとくを記憶し、流される涙の一粒をも「神の壺」に受けられる。それによって人間は「苦悩」が無意味で不毛な経験ではないと知るのである。「救い」とは苦悩が取り去られることではなく、苦悩のことごとくが神に記憶され、正しく取り扱われることを知って、苦悩を通して神の摂理に望みをもって生きることである。かくして、神自らが、われらの涙を拭われるのである。

Ⅱ 新約聖書における「いのちの書」

ルカ10:20

πλὴν ἐν τούτῳ μὴ χαίρετε ὅτι τὰ πνεύματα ὑμῖν ὑποτάσσεται, χαίρετε δὲ ὅτι τὰ ὀνόματα ὑμῶν ἐγγέγραπται ἐν τοῖς οὐρανοῖς.

口語訳聖書

「しかし、霊があなたがたに服従することを喜ぶな。むしろ、あなたがたの名が天にしるされていることを喜びなさい」。

新約聖書は「いのちの書」を「ほふられた子羊のいのちの書」(黙示13:8)であることを明らかにする。「いのちの書」とは十字架と復活の主イエス・キリストによる贖いの書であり、主イエス・キリストを信じる者の名がことごとく記録される。黙示録のサルデスの教会には「いのちの書に名を記された者が、「白い衣を着て、主とともに歩む」さまが記されている。(黙示3:4-5) 彼らは「勝利を得る者」であり、創造の神との生きた関わりの中に存在の意味を見出した者である。それによって、主とともに歩むにふさわしい者とされ、その名が「いのちの書から消されることは決してない。主イエスは「父と御使たちの前で、その名を言いあらわ(される)」(黙示3:5)からである。

それゆえに、主イエスはサタンや悪霊を天から引きずり下ろす霊的権威を喜ぶよりも、むしろ、「あなたがたの名が天にしるされていることを喜びなさい」。(ルカ10:20)と教えられるのである。

Ⅲ 「いのちの書」から名を消される者

黙示13:8

καὶ προσκυνήσουσιν αὐτὸν πάντες οἱ κατοικοῦντες ἐπὶ τῆς γῆς, οὖ οὐ γέγραπται τὸ ὄνομα αὐτοῦ ἐν τῶ βιβλίῳ τῆς ζωῆς τοῦ ἀρνίου τοῦ ἐσφαγμένου ἀπὸ καταβολῆς κόσμου.

口語訳聖書

地に住む者で、ほふられた小羊のいのちの書に、その名を世の初めからしるされていない者はみな、この獣を拝むであろう。

「ほふられた(神の)小羊」を退ける者は、「いのちの書」に名を記されない。彼らは「神の名を汚す獣」(黙示13:1~13 サタン)を神として崇め礼拝する者である。その名は「いのちの書」から消され(詩篇69:28)、「死とハデス」の火に投げ入れられる。(黙示20:15) その苦悩は存在の根源を喪失し、再び見出すことのできない苦しみである。

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